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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科19巻4号

1991年04月発行

文献概要

解剖を中心とした脳神経手術手技

Orbito-zygomatic Approach—手術手技と臨床応用

著者: 藤津和彦1

所属機関: 1横浜市立大学脳神経外科

ページ範囲:P.301 - P.308

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I.はじめに—approachの歴史と名称など
 眼窩内腫瘍の手術に際して開頭術に眼窩上外縁・上外壁の除去を追加する方法はすでに20世紀の半ばから行われていた1,3).桑原ら4)は眼窩内腫瘍に対するこの方法を完成させてfronto-zygomatic approachと呼んでいる.この名称はfrontal craniotomyを行うという意味と,眼窩の上外縁に丁度frontal boneとzygomaticboneの接合部(fronto-zygomatic suture)があるという意味とを含んでいる.頭蓋内病変に対して眼窩の上縁及び上壁の除去を行えば脳の圧排を少くできると示唆したのはJane5)らで彼らはsupraorbital approachと呼んでいる.これらの方法はいずれも古典的なfrontal cranio—tomyを基本にして行われている.著者ら6)はmicrosur—geryの基本的開頭法であるpterional approachにおいて眼窩上外縁,上外壁を除去し,上眼窩裂を開放し,眼球を内下方に圧排すれば脳の圧排を極めて少くしてbasal approachが行えると主張し,本法をorbito—(cra—nio)—basal approachと呼んだ.一方,頬骨切除の有効性に関しても著者らはzygomatic approach7)を発表し,本法が脚間槽に位置するhigh-placedのbasilar tipaneurysmやcraniopharyngiomaに対して有用であることを示した.
 眼窩を解放し,同時に頬骨弓を除去し,広い操作空間で,且つ脳の圧排を出来るだけ少くして頭蓋底腫瘍を手術する方法は一般にorbito-zygomatic approachと略して呼ばれている.本法は眼窩解放・頬骨骨切りの後にsubfrontal, transsylvian, anterior temporal, subtempo-ral,あるいは側頭下窩へのinfratemporal approachを行うのである.従ってこれらの骨切りの後にどのrouteを通ってどの方向へapproachしたかを正確に表現するにはtrans-orbito-zygomatic anterior temporal approachなどと呼ぶべきであろう.しかし頭蓋底腫瘍の手術においては本法の骨切りの後に様々なrouteを通って多角的にapproachすることが多い.従って骨切り法だけを示してapproachの名称とせざるを得ないことも多いのである.
 orbito−zygomatic osteotomyとほぼ同じ意味でorbito−malar osteotomy10)の名称が用いられることもある.ma-1arとは頬cheekを意味する言葉であり,頬骨弓よりも頬骨体部,上顎の突出部のことを意味する度合いが強いようである.
 orbito.zygomatic osteotomyによって得られる利点は以下の3点に集約される.1.通常のpterional appro−achよりもずっと低く,脳底部を覗き込むようにappro.achするので脳の圧排を大いに軽減できる。2.広い進入口が得られるのでsubfrontal,transsylvian,anteriortemporal,subtemporalなど多角的なrouteでapproachでき操作空間も広い.3:頭蓋外のinfratemporal fossaやpterigoid fossaへ進展した腫瘍に対して顔面皮切を用いずapproachできる.眼窩・頬骨の骨切り法には全体を出来るだけ一塊として骨切りする方法といくつかの骨片として行う方法とがある.又,頬骨弓の切除法には側頭筋とともに下方に転位する方法と遊離骨片として除去する方法とがある.本稿では骨切りはいくつかの骨片にして行う方法を示し,頬骨弓の切除は筋肉とともに下方に転位する方法を示すが,実際の手術にあたっては必要に応じた範囲の骨切りを目的に応じた方法で行えばよい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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