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症例
TSH産生下垂体腺腫の2症例—内分泌学的検索および診断,治療方針に関する考察
著者: 樋口真秀1 森信太郎1 有田憲生2 大西丘倫2 早川徹2 宮井潔3 森浩志4 小豆沢瑞夫5 前田義章6
所属機関: 1摂南総合病院脳神経外科 2大阪大学医学部脳神経外科 3大阪大学医学部中央臨床検査診断学 4大阪医科大学第二病理 5大阪府立病院内科 6西宮市立中央病院内科
ページ範囲:P.883 - P.889
文献購入ページに移動甲状腺機能亢進症の治療後,煙期間で発見され,かつT3抑制試験に有意な反応を示したTSH産生下垂体腺腫を2例経験した.うち1例(症例1)は共著者が既に報告しているが1),今回は術後の長期経過観察の結果を加え,改めて報告する.新たに経験した1例(症例2)では,甲状腺機能亢進状態にある初診時のCTでは認められなかった腺腫が,血中T3,T4濃度の正常化後にmacroadenomaとして発見され,初診時から術後に至るまで,詳細な内分泌学的検索を行い得た.
TSH産生下垂体腺腫は現在まで約100例が報告されているが,T3,抑制試験に有意に反応した例は極めて稀である.しかも甲状腺機能亢進症の治療後,短期間に発見された点とを考慮して,両症例は血中T3・T4濃度が腺腫の成長及びTSH分泌に影響を与えた事が示唆された,貴重な例であると思われる.TSH産生下垂体腺腫の診断・治療方針に関する考察を加えて報告する.
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