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脳腫瘍の硼素中性子捕捉療法—本邦における5年間の歩みと将来
著者: 畠中坦1 天野数義1 佐野圭司2 最上平太郎3 早川徹3 生塩之敬3 半田肇4 山下純宏4 渡辺哲敏5 宮川正6 美濃部嶢7 三島豊8 宮本正光9 柄川順10 三浦健11 小林博12
所属機関: 1帝京大学脳神経外科 2東大脳外 3阪大脳外 4京大脳外 5東大医科研放射線科 6埼玉医大放射線科 7中央鉄道病院麻酔科 8和歌山医大皮膚科 9東大皮膚科 10帝京大放射線科 11東大二外 12東大産婦人科
ページ範囲:P.7 - P.16
文献購入ページに移動従来の放射線療法では,たとえいかなる方法で狙いを定めて照射しても,元来,悪性腫瘍は,浸潤性で,腫瘍と正常組織の移行部が,直視下手術の時でさえよく判らないほどであるので,腫瘍のみに治療的線量を与えることは全く不可能であった.ことに,他臓器と異り,脳腫瘍の場合は,周辺の正常組織を損傷することは,これ迄でも「なるべく」避けたいとされたし,今後は,「絶対に」避けたいとされつつあるので,腫瘍の浸潤範囲が全く判っていない悪性腫瘍の場合,従来の外科的,放射線学的治療法では,選択的治療は全く不可能であった.結局,腫瘍の真の選択的治療は,何らかの生化学的,免疫化学的な,化学的方法に頼らざるを得ない.
脳腫瘍には幸い,いわゆる「血液脳関門」現象がなく,各種の物質を,周辺の脳組織よりも遙かに多量にとり込む利点がある.この利点のために,脳腫瘍では,他臓器の癌より先に硼素中性子捕捉療法が始められた.
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