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研究
慢性硬膜下血腫の成立機序に関する研究(第1報)—慢性硬膜下血腫(Cystic Hematoma)の臨床病理学的研究
著者: 伊藤梅男1 藤本司1 稲葉穰1
所属機関: 1東京医科歯科大学脳神経外科
ページ範囲:P.47 - P.61
文献購入ページに移動本論文でいう慢性硬膜下血腫とは,内外二膜で被包されたCystic Hematomaに限る.
急性硬膜下出血による凝血は,その慢性期に内外二葉の新生膜によって被包される.これらの膜は半透膜として作用するので,高滲透圧の血腫内容は脳脊髄液や新生膜内の毛細血管を流れる血液から水分を吸収して血腫内容は次第に膨張し,これがある大きさに達すると血腫として臨床的に発症すると考えたGardner(1532)5)やZollinger and Gross(1934)24)らの仮説は,本症の特徴である受傷から発症までのlatent intervalをよく説明し得るので,近年に到るまで多くの学者により受け入れられて来た.しかし最近Weir(1971)22)による血腫内容,脳脊髄液,ならびに血液の滲透圧測定結果から,三者間に滲透圧差が存在しないことが証明されて以来,滲透圧説は疑問視されつつある.そこでもう一度Gardner以前に立ち戻り,血腫の構造と臨床経過とを対比させて血腫の成立機序を検討した.
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