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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科2巻11号

1974年12月発行

文献概要

研究

脳腫瘍に対する体液性自己抗体の検出

著者: 清水隆1 鬼頭健一1 窪田惺1 喜多村孝一1 高倉公朋2

所属機関: 1東京女子医科大学脳神経センター脳神経外科 2国立がんセンター脳神経外科

ページ範囲:P.747 - P.756

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Ⅰ.緒言
 化学発癌剤やウイルスによって発生した純系動物の腫瘍細胞には,腫瘍特異抗原が存在することが証明され,これを突破口として,ヒトの自然発生癌のいくつかについても,腫瘍特異抗原が確認されてきている1).また,それを裏づけるヒトの悪性腫瘍の自然治癒の報告5)もみられる.
 脳腫瘍の場合,頭蓋外転移は非常にまれであり7,25),脳腫瘍の中でももっとも悪性なglioblastoma multiforme, medulloblastomaでさえも髄腔内に播種性転移をおこすだけである.また,最近は脳腫瘍の補助診断法として,髄液浮遊細胞の細胞培養が広く応用され,臨床的診断に貢献している15).また,脳腫瘍が転移しにくいことより,経験的に脳腫瘍患者の二次的水頭症に対して,転移という観点からみると,他の臓器の癌においては考えられない脳室心房短絡術,脳室腹腔短絡術などがなされている,このように,積極的に脳腫瘍細胞を全身に播種しても,他臓器への転移は極めてまれである13).脳腫瘍がなぜ頭蓋外に転移しないかの理由として,古くより,①中枢神経系にリンパ路を欠くこと.②blood-brain-bar-rierの存在.③脳血管の構築上の特徴.④正常脳組織,細胞の臓器特異性,⑤脳腫瘍細胞に対する腫瘍特異抗体の存在.などが考えられてきた,最近のヒト腫瘍に対する免疫学的知見,および上述した短絡術などの事実より,我々は脳腫瘍の腫瘍特異抗原の存在を推定した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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