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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科2巻3号

1974年03月発行

雑誌目次

動物実験の良し悪し

著者: 佐藤文明

ページ範囲:P.187 - P.188

 良い動物実験,悪い動物実験といってもここでは実験手技の巧拙や,方法論的正確さを問題にしているのではない.
 入局後間もない頃,僕が清水健太郎先生から命ぜられた仕事は,犬を開頭して中大脳動脈に小さなフックをかけ,一寸引っ張ってみるという事であった.いわゆる"戦後"の時代で,人間の生活がやっとだったから,実験動物の生活環境は不潔,不健康そのものであったとしても止むをえなかったろうと思う.

総説

頸部外傷

著者: 都留美都雄

ページ範囲:P.189 - P.199

 頸部外傷はその発生機転から次の様に大別することができる.

手術手技

天膜及び天膜下脳膜腫

著者: 鈴木二郎 ,   桜井芳明

ページ範囲:P.201 - P.206

Ⅰ.まえがき
 天膜及び天膜下の脳膜腫の手術手技について記述せよという御下命である.何とかものにしようと考えたが,発生部位がいろいろとあり,それらについて一つ一つ述べたならば,紙面は勿論不足するであろうし,又面白くもなくなる.外科系雑誌にはよく何々の手術手技という論文がみられるが,それらの論文は,著者自身の現在最も良いと考えている方法を記述して他の手術手技と比べているものが大部分であり,それはそれなりに参考になり貴重な事は勿論である.しかしただこの方法しかないということになると私はそうは思わない.安全に目的を達成する手技であればどんな事をしてもかまわないのであり,長い経験と知識から夫々,著者自身の手技が実行されるべきものと考えている.そこで手術手技とはどうあるべきかという事を考え直してみた.
 まず第1にその患者が10年,20年後にその手術によって受けた侵襲により何の後遺症もなく社会生活を営なんでいける事を想定したものでなければならず,これが最も大切な事である.例えばその代表的なものとしては,手術後遅発するてんかん発作がある.

境界領域

メラトニン

著者: 平田扶桑生

ページ範囲:P.207 - P.212

 松果体は灰白色の10mmたらずの松の実の形に似た重さ120-200mgの器官で,柄を有し,第3脳室後壁に付着している.松果体は形態学的に網膜細胞に類似する実質細胞を有し,電顕を用いて精査すると内分泌器官特に下垂体に類似する微細構造を有する.思春期を過ぎると松果体には石灰化が始まり,その頻度は70%を超える.脳外科領域ではX線による脳腫瘍その他の発見に松果体の石灰像の位置が役立っ事がある.松果体の石灰沈着は病的であると言えないが,しばしば経験される疾患として嚢腫,腫瘍等がある.この場合,松果体切除を成人で行っても,生命,妊娠,分娩等に悪影響を及ぼす事はない.従って,松果体は胸腺と同様長い間その機能は不明であった.最近,生体防禦の面で胸腺の機能が明らかとされてきたが,松果体については未だ不明の点が多い.現在明らかにされている松果体の機能について記述すると共に,松果体ホルモンと目されるメラトニンについて簡単に紹介したい.

研究

放射線壊死の病理学的研究—剖検例に基づく脳腫瘍の完全壊死像の解析

著者: 中村仁志夫 ,   小川宏 ,   熊西敏郎 ,   生田房弘 ,   植木幸明

ページ範囲:P.213 - P.220

はじめに
 すでに1920年代から,脳腫瘍なかでもgliomaに対する放射線治療は行なわれてきた31).それに伴う腫瘍および脳組織のいわゆるradiation necrosisの剖検例に基づく報告はO'Connell(1937)4例29),Wachowski(1945)2例37),Pennybecker & Russell(1948)2例32),Zeman(1949)4例38),Eicke(1952)1例10),Lampert(1964)1例22)などがある.また,頭部皮膚疾患や顔面頭蓋の悪性腫瘍あるいは下乖体疾患などに対する放射線治療に伴う「脳組織」のradiation necrosisについても,諸外国では古くから報告がある4,6,8,9,11,19,22,24,25,27,32)
 他方,放射線治療は本邦でも脳腫瘍の非手術的療法の一環として広く行なわれてきているにも拘らず,頭蓋内組織におけるradiation necrosisの報告は少なく15,34-36),とくにgliomaの剖検例に基づく報告を見出し得ない.

Craniopharyngiomaの内分泌および水分・電解質代謝異常について

著者: 中沢省三 ,   植木幸明

ページ範囲:P.221 - P.228

はじめに
 Craniopharyngiomaは良性の先天性腫瘍であるが,その発生部位が脳底深部であり,視床下部,下垂体,第Ⅲ脳室底等と密接な関係を有するため,極めて多彩な臨床症状を呈することが知られている,また,これらの臨床症状の基盤となる広範な内分泌障害は,部位による腫瘍全剔術の困難さと相俟って,本腫瘍患者の予後を甚だ不良なものにしている.
 新大脳神経外科教室においても,1941年より1970年末までの30年間に66例の本腫瘍を経験したのでこれをとりまとめ,特に内分泌,および水分・電解質代謝障害を中心に考察を加え報告する.

脊髄動静脈奇形の診断と形態学的分類および外科的治療に関する検討

著者: 中多靖彦 ,   大島英雄 ,   岡本学 ,   京井喜久男 ,   内海庄三郎 ,   堀浩

ページ範囲:P.229 - P.237

Ⅰ.はじめに
 近年動静脈奇形,とくに脳動静脈奇形の報告は多い.しかし脊髄動静脈奇形に関しては1885年Heboldが報告して以来12),欧米では数多くの症例報告がなされている.本邦では症例数も少なく,手術例に関しての報告は極めて少数である.その第1の理由として,臨床的特徴が知覚障害,根刺激症状,局所に限局する疹痛,運動障害などが主で臨床的に腰痛症,椎間板ヘルニア,変形性脊椎症などと類似していること.第2に補助的診断技術が進歩していなかったこと,とくにspinal angiographyなど4,5,10)の形態学的診断技術がいまだ確立されるにいたらなかったこと.第3に外科的治療,とくにその技術的困難さが解決されていなかったことなどが挙げられる.
 我々は昭和42年以来4例の脊髄動静脈奇形(以下spinal AVMと賂す)を経験した.ここに症例を提示しSpinal AVMの診断基準,手術適応,ならびに手術方法に若干の考察を加えるとともに,予後の判定についても論じたいとおもう.

慢性硬膜下血腫における血腫被膜からの出血の意義

著者: 山本信二郎 ,   伊藤治英 ,   水腰英隆 ,   吉田早苗

ページ範囲:P.239 - P.242

 慢性硬膜下血腫は軽微な外傷後に数週,あるいは数カ月の無症状の期間を経て発症し,また,折々症状の消長がみられる.その病態生理に関しては未だ充分な解決が得られていない.血腫の増大に関し,Gardner1) ZollingerとGross8)らは滲透圧の面から説明しようとした.
 しかし,血腫被膜が完成され,それが半透膜として作用したとしても,内外の滲透圧は比較的短時間に平衡値に達し,それのみでは血腫の増大を説明しえない.われわれは慢性硬膜下血腫症例について,血腫被膜,ならびに血腫内容を検索し,血腫の本態を究明した.

症例

ゴナドトロピン異常高値を示した女児の鞍上部悪性奇形腫—Pubertas praecox,ことに性差についての考察

著者: 森和夫 ,   岩上馨 ,   藤田雄三

ページ範囲:P.243 - P.248

Ⅰ.はじめに
 筆者らは最近,8歳女児のトルコ鞍上部悪性奇形腫例を経験した.腫瘍にはcytotrophoblastと思われる細胞が,更にこの部の電顕的検索で分泌穎粒かとも思われる小顆粒の混在が認められ,尿及び血中のgonadotropinも異常高値を示していたが青春早発症(pubertas praecox,以下PPと略す)は伴っていなかった.剖検所見を含め症例を簡単に報告すると共に,この部腫瘍に伴うPPの発現機序,ことに性差について他の2症例と対比し若干の内分泌学的検討を試みる.

10年を経過した外傷性浅側頭動静脈瘻の1治験例

著者: 木村道生 ,   古森正興 ,   河野淳二 ,   吉永繁彦 ,   西野康 ,   豊原弘

ページ範囲:P.249 - P.252

Ⅰ.いとぐち
 外傷性動静脈瘻は体表面に近く動静脈が平行して走行する部位に好発する.浅側頭動静脈はその好発部位の一つと考えられる.しかし,外力の強度によっては血管は断裂,動脈瘤形成または動静脈瘻形成など種々の病態をとり,外傷性浅側頭動脈瘤に関しては可成り多くの報告がみられるが,外傷性浅側頭動静脈瘻の報告は少く,Schechter and Gutstein(1970)5)の報告をもとにして文献2),3)を追加すれば25例となり,本邦では倉本ら(1969)4)の第1例日の報告につぎ菅根ら(1971)6)の第2例目の報告があるのみである.
 われわれは外傷後3日目に発生した浅側頭動静脈瘻が10年間放置されていた症例の根治例を経験したので報告する.本例は本邦では第3例目,文献上では28例目の症例と考えられる.

両側下水平性半盲を呈したectopic pinealomaの1例

著者: 鬼頭健一 ,   清水隆 ,   別府俊男 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.253 - P.258

Ⅰ.はじめに
 一般に,両側水平性半盲は稀な症候であるが,とくに脳腫瘍を原因とするものは稀である.われわれは最近第3脳室前半部を占めるectopic pinealomaで両側下永平性半盲を呈した症例を経験したので報告する.

硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula)—自験例と62症例の検討

著者: 児玉安紀 ,   石川進 ,   日比野弘道 ,   桑原倖利 ,   梶川博

ページ範囲:P.259 - P.264

Ⅰ.はじめに
 硬膜に分布する諸動脈と硬膜静脈路(静脈洞,硬膜静脈,venous lake)との間に生ずる動静脈瘻は稀なものであるが,頭蓋内血管性障害の1つとして重要なものであり,その発生原因,診断,治療をめぐって種々興味深い問題がある.我々の経験した症例を紹介すると共に,硬膜動静脈瘻について考察を加えたい.

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日本脳神経外科学会事務局ニュース

ページ範囲:P.266 - P.267

第33回日本脳神経外科学会 第2次会告
 本年10月23日より25日までの3日間,仙台市において行なわれる学術集会での,①シンポジウム,パネルディスカッションの座長及び主演者,②早朝セミナーの司会及び講師,③招待講演者及び演題が決定しましたのでお知らせ致します.
 ここに各位の御協力を感謝申し上げますとともに,それぞれ有意義なものとなりますよう重ねてお願い申し上げます.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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