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総説
慢性硬膜下血腫の成因
著者: 渡辺学1 石井昌三1
所属機関: 1順天堂大学脳神経外科
ページ範囲:P.275 - P.281
文献購入ページに移動慢性硬膜下血腫は脳神経外科医が日常しばしば遭遇する疾患であり,本疾患の認識が高まると同時に超音波検査・脳血管写が広く行なわれるようになった今日,その診断もさして難しくはない.その治療法も,小児例あるいは脳萎縮の強い特殊な症例を除けば,頭蓋骨穿孔を行ないここから内容を排除し血腫内腔を洗滌することによって比較的簡単に治癒させることができ,臨床的には扱い易い疾患と言える.
しかるに,この疾患の成因に関しては,多くの研究者によって数多くの学説が出され一世紀にも亘って議論がつくされて来たにもかかわらず,意見の一致をみない.この疾患に関する興味は単に慢性の経過をたどった硬膜下血腫として片付けることのできない臨床的・病理学的に多くの特異な問題を持っていることにある.また,本病態の究明の難点はこの疾患を実験動物に作成することができなかったことにあるとも言える.
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