文献詳細
文献概要
境界領域
中枢神経の微細構造
著者: 山田英智1
所属機関: 1東京大学解剖学
ページ範囲:P.289 - P.296
文献購入ページに移動脳と脊髄をつくる組織は,いうまでもなく,神経組織を主とするもので,これに血管と,結合組織性の被覆が加わって構成される.この神経組織は外胚葉由来の神経管から発達するもので,元来,神経管の内腔を囲む上皮組織と考えることもできるので,完成された状態でも,種々の点で上皮組織と共通の特徴を示すのである.たとえば,中枢神経組織は細胞性組織であって,有形および無定形をふくめて,細胞間質は極めて乏しい,また,分布する血管のうち,豊富な毛細血管は,その内皮細胞基底部に基定膜をもつのみで,直接まわりの神経組織に接しており,線維性結合組織を伴うことがない.上皮組織で血管分布をもつものは稀であるが,内耳の蝸牛管血管条の上皮はその1例で,ここでは内皮細胞と上皮組織との関係は中枢神経のそれによく似ているのである.
中枢神経組織の細胞性成分としては,ニューロンと神経膠細胞に大別される.前者は広義の神経細胞であって,核周部perikaryon(狭義の神経細胞)と突起とからなる.ニューロンは,いうまでもなく各種の刺激に反応して興奮し,情報を伝導し,それらを統合し,保存する(記憶)機能をもつように分化した細胞であって,その形態学的特徴がこれらの機能と関連をもつことは当然であろう.神経膠細胞は,機能的単位であるニューロンの間を埋める支持細胞ないし間質細胞であって,脳室系表面を覆う上衣細胞を含めて4種類を区別することも,よく知られている.
掲載誌情報