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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科2巻6号

1974年06月発行

雑誌目次

広い視野で

著者: 森安信雄

ページ範囲:P.433 - P.434

 教室の藤井寅夫博士が南ベトナム,サイゴンのチョーライ病院に赴任し,脳神経外科の診療に従事してからすでに8年を経過した.これは,わが国のコロンボ計画に基づく東南アジア医療援助の一環として発足したものであるが,博士の活動を通じ,わたくしはいろいろなことを教えられた.
 博士の赴任当時,ベトナムには脳神経外科の専門医は1人もいなかった.米軍病院には本国から派遣された専門医がいたが,もちろん米軍人の治療のみで,ベトナム人の診療には関与しない.戦火に捲きこまれた不幸なベトナム人に,専門医として暖かい手を差しのべたのは藤井博士をもって嚆矢とする.

総説

脳循環

著者: 山本八十一 ,  

ページ範囲:P.435 - P.449

 最近の局所性および微小脳循環に関する研究は20世紀を特色づける原子力とcomputerの知識および技術を利用し画期的な発展をなしつつある.
 この20年間の脳循環研究の動向に関しては1959年にLassen96)およびSokkoloff149)による脳循環全野におよぶ総説,また1972年にBetz14)による脳循環の最近の発達に関する総説,および1964年より1973年の間に開かれた6回の国際脳循環シンポジウム(1-6)の内容が出版されている.しかしこの10年問の短期間に多数の新しい方法および説が紹介されただけに,多少の混乱を起こした傾向があるのでこの論文の主旨は脳循環の歴史回顧とともに最近の局所性脳循環測定法および説の批判,また我々の特に興味をもっている微小脳循環の研究法と,最後に脳循環のregulationに関する我々の考えについて述べたい.

手術手技

小脳・第4脳室腫瘍

著者: 喜多村孝一

ページ範囲:P.451 - P.456

 小脳・第4脳室の腫瘍は,多いものからあげると,髄芽腫medulloblastoma,星細胞腫astrocytoma,血管芽腫hemangioblastoma,脳室上衣腫ependymoma,脈絡叢乳頭腫plexus papilloma,その他の順になる(Fig.1).手術はいずれも後頭下開頭術によるので大綱は同じような術式になるが,悪性で浸潤性の腫瘍と限局性の良性腫瘍とでは手術方針がおのずと違ってくる.髄芽腫は悪性腫瘍の代表的なものであり,血管芽腫,乳頭腫は良性腫瘍の代表であり,小脳の星細胞腫も良性腫瘍に属するものである.本文ではこれらに対する手術を一括して述べる.
 さて,後頭蓋窩の腫瘍の手術の場合は大脳表層の腫瘍に立ち向うときのような気安さは許されない.なぜならば脳幹が直接・間接の影響をこうむりvital signの急変をおこしやすいからである.もちろん粗暴な手技はもっての他であるが,脳へら(spatula)の使い方一つにしてもテント上手術の場合と違った慎重さが要求される.また手術操作による脳幹の機能障害をそのごく初期に発見するために,術中は自発呼吸にしておく.当然補助呼吸によって十分な呼吸量を確保しなければならないが調節呼吸にしてはならない.自発呼吸の停止こそもっとも初期のalarmとなるからである.

境界領域

神経耳科学—診断学における役割りと位置づけ

著者: 鈴木淳一

ページ範囲:P.457 - P.462

1.はじめに
 いささか我田引水のきらいがあるが,神経耳科学は,外国におけるよりも,わが国においてより盛んにおこなわれており,業績も多い.神経耳科学は,これを臨床に導入したのは,Baranyの検査などで有名なR.Barany(1914年ノーベル賞受賞)であるが,その流れをくむ北欧に開花したあとは,研究者の数についても質についても,少なくとも臨床面においては,わが国にその本拠を移した感が深い.
 神経耳科学は,文字通り耳科学の一分野であるはずであるが,むしろ神経科学の一領域としての意義を唱えるものも多い.今日のところ,しかし,少なくともわが国においては,耳鼻咽喉科学のレパートリーと考えられている.比較的新しいこの分野の診療上の意義は,しかしむしろ今後に確立されるものと期待している.

研究

脳動脈瘤破綻急性期患者重症度の分類法—著者らの12度分類

著者: 宮崎雄二 ,   末松克美

ページ範囲:P.463 - P.468

緒言
 脳動脈瘤破綻間歇期における頭蓋内直達手術が安全となった現今においては,脳動脈瘤破綻後間もない急性期症例に対して再破綻来襲を防ぐ目的から頭蓋内直達手術を行なうべく諸家によって努力が払われている.一方,脳動脈瘤破綻急性期手術の予後を左右するものは複雑な頭蓋内状態であり,それらは脳動脈攣縮,脳浮腫,急性水頭症などの綜合である.このため複雑な因子によって形成される患者頭蓋内状態を何らかの方法によって端的に表現しうるならば極めて好都合である.この様な理由から諸家によって脳動脈瘤患者の重症度として種々の分類法や表現法が試みられてきている.しかし,いずれも実地応用にあたって個々の分類にあてはまらない症例が少くないなど多くの不便がある.
 著者らは脳動脈瘤自家経験250例の術前状態ならびにそれらに対する頭蓋内直達手術後の経過を詳細に検討したところ,実地臨床上に好都合な患者重症度区分法を作製しえたので報告する.

脳内巨細胞肉腫のin vivo及びin vitroにおける電子顕微鏡的観察

著者: 久保長生 ,   沖野光彦 ,   上条裕朗 ,   浜田博文 ,   氷室博 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.469 - P.475

Ⅰ.はじめに
 脳内巨細胞肉腫は1917年Schminkeによってganglioglioneuromaという名称で報告されて以来,ganglioglioblastoma,Watjen(1930);spongioblastoma multiforme ganglioides,Foerster & Gagel(1931);glioblastoma gigantocellulare ganglioides,Tönnis & Zülch(1939);malignant ganglioneuroma,Allegra & Serra(1950);monstrocellular sarcoma,Zülch(1956);giantcelled glioblastoma,Russell & Rubinstein(1959);giant cell sarcoma,Kernohan(1959):monstrocellular astrocytoma,Lynn(1968);などといろいろの名称でよばれ,その組織由来についても多くの議論がなされて来た.現在,この腫瘍の組織由来については,2つの考え方がなされている.その一つはRussell and Rubinstein1)らのグリア系腫瘍であるというものと,もう一方はZülch2,3),Brucher4),Kernohan5)らのごとく肉腫であるという説である.

Twist drill techniqueによる脳室穿刺について

著者: 渋谷倢 ,   福光太郎 ,   吉田康成 ,   渡辺徹 ,   五十嵐正至 ,   天羽正志

ページ範囲:P.477 - P.479

Ⅰ.はじめに
 1940年代すでにConeらによりtwist drill techniqueが開発,施行されていたが,危険性が多いことの理由で公表されなかった.1966年Rand5)らは熟達したneurosurgeonであることを条件に,その迅速性,簡便性を強調し,脳室造影,脳室ドレナージ,頭蓋内血腫の診断および治療などに有用性を持つことを発表した.その後本法が諸施設で行われて来ているが,頭蓋内操作がblindであるため,安全に対する危惧感から,緊急時以外施行されぬ場合が多い.
 我々は1968年以来,約200例に本法を施行し,特にconray ventriculographyに応用しているが3),考えられる危険性に遭遇していない.我々の方法を紹介し,その経験から2,3の考察を述べてみたい.

症例

Alveolar soft-part sarcomaの頭蓋骨および脳転移の1剖検例

著者: 岡田慶一 ,   武田文和 ,   川淵純一 ,   鈴木豊

ページ範囲:P.481 - P.486

Ⅰ.はじめに
 Alveolar soft-part sarcomaは主として四肢の筋組織内に原発する非上皮性悪性腫瘍で,組織学的にきわめて特異な像を呈しその組織発生は未だ不明である.1952年Christophersonら3)が形態学的特徴から本腫瘍をalveolar soft-part sarcomaと命名して以来この名称が一般的となっている.本腫瘍は現在までに文献上120例あまりの報告があるにすぎず,ことに頭蓋内転移例の報告は比較的まれである.われわれは右大腿部に発生したalveolar soft-part sarcomaが,頭蓋骨及び脳内に転移を生じた1例を経験し,かつ剖検する機会を得たので報告し,あわせて文献的考察を行う.

硬膜下血腫を伴った破裂脳動脈瘤—2症例とその機序に関する考察

著者: 上笹皓 ,   早川大府 ,   稲葉穣

ページ範囲:P.487 - P.492

Ⅰ.はじめに
 脳動脈瘤の破裂に起因する硬膜下血腫の存在は古くから知られ19),その頻度は臨床的には破裂脳動脈瘤症例の0.5-4.9%,剖検例では5-20%とされている3,14,18)
 近年本邦でも報告例が散見されるが9-12),われわれも髄液所見および手術所見から,クモ膜下出血を伴わず硬膜下血腫を合併した破裂脳動脈瘤の2症例を経験した.

先天性上矢状静脈洞閉塞症の1症例

著者: 岸川秀実 ,   小林清史 ,   六川二郎

ページ範囲:P.493 - P.497

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内静脈洞閉塞症は,1856年Lebert11)の報告以来,そのほとんどは剖検で確認された症例であったが,最近は脳血管写の普及により臨床的に本症と診断することが可能となってきた.しかし,現在まで脳血管写によって静脈洞の閉塞を確認した本邦での臨床報告はまれであり,加川ら6)の5例,西田ら14)の1例,景山ら7)の1例および今井ら3)の1例にすぎない.
 われわれは最近,Lennox症候群を主症状とした2歳6カ月の女児で,頸動脈写により上矢状静脈洞の広汎な閉塞と思われる像を認めた症例を経験したので報告する.

Encephaloceleを伴った後頭部奇形腫の1例

著者: 赤木功人 ,   堀部邦夫 ,   金井信博 ,   池田卓也 ,   御供政紀

ページ範囲:P.499 - P.503

Ⅰ.はじめに
 小児科学,小児脳神経外科学の発達とともに,以前には生下時まもなく死亡し,剖検によって明らかにされたような新生児の奇形性疾患も脳神経外科的治療の対象となる機会が益々増加の傾向をたどりつつある.
 私共は後頭部に一見encephaloceleを思わせる巨大な腫瘤をもって誕生した男児で,encephaloceleと共に奇形腫の存在することを診断し,手術を行ない,その後元気に発育している症例を経験したので報告し,併せて文献的考察を試みる.

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日本脳神経外科学会事務局ニュース

ページ範囲:P.456 - P.456

第2回機関誌編集委員会報告
日 時:昭和49年5月15日
場 所:横浜市ホテルニューグランド

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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