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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科20巻2号

1992年02月発行

雑誌目次

もっと光を?

著者: 堀重昭

ページ範囲:P.107 - P.108

 長い時間顕微鏡を覗いて手術したあと,なんとなく周囲が薄暗く見える.オヤ?と眼をこすっているうちに元通り明るくなる.近ごろ,そんなことが度々あった.俺も年か,などと考えているうちに,ふと,「顕微鏡が明るすぎるのでは?」という疑問が湧いてきた.
 実際,手術顕微鏡は各社がしのぎを削っているおかげでどんどん明るくなってきた.私たちは,2年ほど前からキセノン光源つきのZeiss OPMI MD型をおもに使うようになったが,これに300mmの対物レンズをつけた場合,照射野の明るさは最大385,000ルックスに達する.セールスマンは,「従来の5倍も明るく,世界一です.」と,胸を張る.

脳腫瘍の組織診断アトラス

(20)血管腫Vascular Hamartomas

著者: 小林槇雄 ,   柴田亮行

ページ範囲:P.109 - P.113

I.はじめに
 神経系の血管腫瘍は,von Hippel Lindau病に合併する小脳の血管芽細胞腫hemangioblastomaを除いて真の腫瘍性病変ではなく,その本態は血管組織から構成される組織奇形vascular malformationあるいは過誤腫hamartomaと見做されている.頭蓋内では,脳,髄膜に生じ,全ての脳腫瘍に占める発生頻度は0.1-4%(Zulch21),1986),本邦では2.5%(石田,1990)で,剖検時に偶然観察される機会も多い.血管奇形の命名は研究者により異なるが,Bergstrand2)により提唱された分類では,1)海綿状血管腫cavernous angioma,2)蔓状血管腫racemose angioma,3)血管芽細胞腫angioblas-tomaの3群とし,2群をさらに1)血管拡張症telan-giectasia,2)Sturge-Weber病,3)動脈性蔓状血管腫arterial racemose angioma,4)静脈性蔓状血管腫ve-nous racemose angioma,5)動静脈性血管瘤arteriove-nous aneurysmaに区別するものであった.その後,Russel16)らは,組織形態の特徴から1)拡張性毛細管腫capillary telangiectases,2)海綿状血管腫cavernous an-gioma,3)動静脈奇形arteriovenous malformation,4)静脈性奇形venous malformationに分類している.本稿では,Russelの分類に従い病理所見を述べてみたい.

研究

脳実質内転移性腫瘍の摘出例における検討—主に予後を左右する因子について:Median Survival Timeの面より

著者: 中川秀光 ,   木村恵春 ,   中島義和 ,   泉本修一 ,   早川徹

ページ範囲:P.115 - P.121

I.はじめに
 今日まで転移性脳腫瘍に対して外科的摘出が良いか放射線治療2,7)に代表される他の保存的治療がよいか結論は川ていない.一般的には単発性の脳転移巣に対して摘出後放射線治療を行うことが多く1,15),長期生存例はやはり脳転移巣の摘出を受けた例に多いとする報告が見られる5,19).当施設においては転移性脳腫瘍に対して比較的積極的な治療方針を取っており,その外科的手術適応は,原発巣を含めてその他の脳以外の系統臓器における転移巣の状態が比較的安定しており,煙期にそれにて臥床を余儀なくされず,かなりのquality of lifeを維持できると判断される場合(原則的には少なくとも2-3カ月以上)が基本であり,多発性であっても転移性脳腫瘍の摘出にて神経症状の改善のみならず,生存日数の延長が得られ,一定以上の大きさ(一般に1cm以上)があれば,できるだけ一期的に,金摘出するようにしている.勿論病態,患者の希望などにより適応を十分考慮することにしている.これらの転移性脳腫瘍症例の予後を左右する因子についても種々の報告がみられるが,必ずしも絶対的なものでない印象をうける.今回自験例を分析してこれら一般的予後因子について検討を加えるとともに,転移性脳腫瘍摘出例における死亡原因ならびに術前・術後におけるperformance statusなどの面より手術的治療の意義についても考察した.

重症高血圧性小脳出血に対する緊急穿頭血腫吸引術の有用性

著者: 中島裕典 ,   重森稔 ,   菊池泰輔 ,   落合智 ,   徳永孝行 ,   倉本進賢 ,   加来信雄

ページ範囲:P.123 - P.129

I.はじめに
 高血圧性小脳出血はCT scan(CT)の導入によって診断が容易になり,CTによる治療方法を検討した報告も多数見られる6,7,12-14,16,20,21).さらに,CT定位脳手術装置の普及に伴い,天幕上の高血圧性脳内出血だけではなく,小脳出血に対する血腫溶解排除術の報告も散見される1,3,5,8,10,17,19).小脳出血は脳幹部に隣接し,解剖学的位置関係より急速かつ重篤な経過をとる症例が多い.当救命救急センターは三次救急医療施設で,高度の意識障害を伴った状態で搬入される症例が多い.今回,高度意識障害を伴った重症高血圧性小脳出血に対し,manualによる緊急穿頭血腫吸引術を行い,その有用性につき後頭下開頭による血腫除去術と対比し検討したので,若干の文献的考察を加え報告する.

慢性硬膜下血腫の発生機序の一考察—膜との関係において

著者: 下地武義 ,   佐藤潔 ,   石井昌三

ページ範囲:P.131 - P.137

I.はじめに
 慢性硬膜下血腫(以後CSH)の発生機序に関し,1972年,Watanabeら19)の実験により,硬膜下腔に於けるclotの存在が重要であると証明したことにより,一応の解決を見たかに思われた.しかし,CT時代に入り,外傷後のsubdural effusionから,典型的なCSHへ発展する症例の報告が相次ぎ5,6,9,13,15,20),発生機序として硬膜下のclotが全例に必要かどうかに疑問が生じてきたわれわれも成人で外傷後のsubdural fluid collectionから血腫に発展する症例を多数経験し,CSHの発生機序に内膜が関与しているのではないかと考え,過去数年間,CSHの内膜に焦点を合わせて,手術時にその観察を続けて来た.発生機序の考察および,治療指針に対し重要と思われる一所見を得たので報告する.

聴神経腫瘍根治術における脳神経の保存とその機能的予後

著者: 黒川泰任 ,   上出廷治 ,   端和夫

ページ範囲:P.139 - P.145

I.はじめに
 聴神経腫瘍の手術成績は高分解能computed tomo—graphy(CT)や磁気共鳴画像(MRI)による画像診断法の進歩と顕微鏡手術の普及によって著しく改善され,手術による死亡は姿を消し,高い頻度での顔面神経の保存2,8,13),また小型の腫瘍では聴力の保存が得られると報告されるようになってきている10,12).しかしこれら保存を試みられた神経機能の長期的観察結果についての詳細な記載は見当らない.
 本報告では最近6年間の手術例について顔面神経,聴神経機能が実際にどの程度の機能の保存が可能であったかという点について検討した.

髄内病変による中枢性疼痛に対する脊髄硬膜外刺激

著者: 太田穣 ,   秋野実 ,   岩崎喜信 ,   阿部弘

ページ範囲:P.147 - P.152

I.はじめに
 Deafferentation painとは末梢の侵害受容器の関与による痛みではなく,痛覚求心系の障害の結果出現する痛みを言う.求心路の末梢で遮断される場合(末梢神経の障害)と中枢で遮断(二次ニューロン,三次ニューロンの障害)される場合に大別される.その明確な発生機序は未だに不明である7)
 しかし,臨床的には,deafferentation painに対し慢性的電気刺激療法が,一部の患者で有効であることが知られている.この中で,脊髄硬膜外刺激(DCS;dorsalcolumn stimulation)は,1970年Shealy22)らが,臨床応用として,慢性疼痛の患者に行って,良好な結果を得て以来,様々な種類の慢性疼痛を有する患者に行われてきている.DCSは,一般的に中枢性のdeafferentationpainには効果が乏しいといわれているが,この中には効果が得られたという報告も散見される8,18,21,26,28)
 今回,われわれは脊髄髄内に病変を有する頑痛症例に対し脊髄硬膜外電気刺激治療を行った.ここでは,その治療効果を原因疾患,痛みの発生部位,電極設置部位,刺激条件,痛みの性質,有痛期間,試験刺激時のpares-thesia(electrical paresthesia),刺激時および刺激を切った後の効果,初期効果(刺激電極設置後1週間の効果;initial pain relief),初期効果にわけて検討し,DCSの除痛効果を左右する因fを考察し,あわせて,これまでの文献上の報告例と比較検討した.また,deafferenta-tion painの発生機序や,脊髄硬膜外刺激による除痛機序についても,若干の考察を加えた.

慢性硬膜下血腫症例における頭指数(Cephalic Index)の意義

著者: 佐藤正純 ,   桑名信匡 ,   小嶋康弘 ,   田中信正

ページ範囲:P.153 - P.155

I.はじめに
 慢性硬膜下血肺症例の中に頭指数が小さい,すなわち長頭(dolichocephaly)のものがしばしばみられることに気付き,慢性硬膜下血腫の発生と頭指数の関係について検討した.

症例

高齢者で発症した頭蓋底脳髄膜瘤の1例—症例報告とMRIの有用性

著者: 松本賢芳 ,   赤地光司 ,   橋本卓雄 ,   中村紀夫

ページ範囲:P.157 - P.159

I.はじめに
 頭蓋底脳髄膜瘤は35,000-40,000の出産毎に1例程度と言われる位稀な疾患である3,5,9,15)
 最近では,CTやMRIの登場により診断は容易になってきている.われわれはMRIにより診断された高齢者の頭蓋底脳髄膜瘤の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

外傷性遅発性脳血管攣縮の1例—症例報告と発生機序に関する考察

著者: 高橋功 ,   野村三起夫 ,   鐙谷武雄 ,   今村博幸 ,   宝金清博 ,   斎藤久寿 ,   阿部弘

ページ範囲:P.161 - P.164

I.はじめに
 頭部外傷後の脳血管攣縮の発生頻度は5-47.7%とされ11),報告によって大きな差がある.しかし,外傷性脳血管攣縮で臨床症状を呈することは比較的少なく,そのメカニズムの究明もまだ十分なされていない.また,症候性脳血管攣縮は予後に影響する因子であることから,その発生を予期し,早期に対処することが必要とおもわれる.今回,われわれは頭部外傷後に前大脳動脈と中大脳動脈に脳血管攣縮を来した症例を経験したので若十の文献的考察を加えて報告する.

外傷性内頸動脈海綿静脈洞瘻に対するプラチナ製マイクロコイル塞栓術の1例

著者: 松尾孝之 ,   福嶋政昭 ,   西村修平 ,   陣内敬文 ,   森宣

ページ範囲:P.165 - P.170

I.はじめに
 内頸動脈海綿静脈洞瘻(carotid-cavernous fistula,CCFと略す)はその発生機転により外傷性CCFと特発性CCFに区別する,Daniei L Barrowらの分類1)では外傷性CCFは内頸動脈本幹と海綿静脈洞とが直接の交通を持つType Aである事が多い.このTypeはhighflowであるがゆえに重篤な眼症状を呈することが多く自然閉塞の多い特発性CCF15,17,21)と異なり多くの場合直接的治療が必要となる.その治療法についてはDe—tachable balloonを用いた瘻孔閉塞が効を奏し,確立された治療法となりつつある3-5,7,8,18,22,25,26,30)
 われわれは塞栓物質としてプラチナコイルを用いて瘻孔の完全閉塞を得ることが出来たので若干の考察を加えて報告する.

Vein Graftを使用した閉塞性前大脳動脈に対する血行再建術の2例

著者: 田中公人 ,   米川泰弘 ,   河野寛幸 ,   片桐邦彦 ,   佐藤耕造

ページ範囲:P.171 - P.176

I.はじめに
 主幹脳動脈の閉塞性疾患に対する浅側頭動脈(STA)—中大脳動脈(MCA)吻合術は臨床上,一般的な血行再建術の一つである.しかしながら,本邦における前大脳動脈(ACA)に対する再建術は文献上,散見されるに過ぎず確立された術式はない.今回,われわれはvein graftを用いたSTA-ACA吻合術を2症例に行い良好な結果を得たので,閉塞性ACA病変の血流再建術におけるvein graftの有用性および問題点につき文献的考察を加えて報告する.

モヤモヤ様血管を伴った特発性中大脳動脈閉塞症に反対側の中大脳動脈瘤を合併した1例

著者: 影治照喜 ,   村山佳久 ,   松本圭蔵

ページ範囲:P.177 - P.181

I.はじめに
 モヤモヤ血管はウイルス動脈輪閉塞症(モヤモヤ病)をはじめ,脳動脈硬化症,脳腫瘍など種々の疾患に合併して認められることがある.しかし,一側中大脳動脈起始部の原因不明の閉塞部周囲にモヤモヤ様面管を伴う症例は,過去には意外に報告例が少ない.この所見は,いわゆる厚生省の定めるウイルス動脈輪閉塞症の診断基準を満たさないことから,モヤモヤ病とは本質的に異なった疾患であろうと考えられている1).最近われわれは,左中大脳動脈瘤破裂において,その反対側の右中大脳動脈の起始部が閉塞し,その周囲にモヤモヤ様血管を認めた症例を経験したので,若干の文献的検討を加えて報告する.

小脳テントに転移して発症したAFP産生胃癌

著者: 合田和生 ,   角田茂 ,   榊寿右 ,   森本哲也 ,   橋本宏之 ,   吉村佳子 ,   堀川典子 ,   中川裕之 ,   岩崎聖

ページ範囲:P.183 - P.185

I.はじめに
 癌症例における単発性硬膜転移は,比較的まれであるが,乳癌や肺癌の剖検において時々発見されるようである.今回われわれは,小脳テントというきわめてまれな部位に転移して発症した,AFP産生胃癌を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

脳内転移をきたした末梢神経由来悪性神経鞘腫の1例

著者: 松原俊二 ,   戎谷大蔵 ,   大島勉 ,   松本圭蔵 ,   広瀬隆則 ,   檜澤一夫

ページ範囲:P.187 - P.190

I.はじめに
 悪性神経鞘腫(malignant schwannoma)は,末梢神経に生じ,von Recklinghausen病に伴い易い比較的稀な腫瘍である.脳内転移を来すことはきわめて稀であり,渉猟し得た範囲では数例が報告されているのみである.今回脳内転移をきたした末梢神経由来の悪性神経鞘腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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