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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科20巻5号

1992年05月発行

雑誌目次

4直3交代と2乗平均

著者: 岩渕隆

ページ範囲:P.523 - P.523

 現代の病院は休日,日夜を問わず何時でも全力を出せるのが本来の姿であろうと思う.特に救急,重症患者を扱う部門ではそうであろう.看護婦さん達は大抵3交代という事になっているが,今普通に行なわれているのは,面倒な言い方をすれば3直3交代であろう.日直,準夜,深夜と人数が少なくなるので,変則3直3交代という事になろうか.
 其を4直3交代にしたらどうなるであろうか.要するに集団を4つ作って8時間ずつ交代に勤務する訳である.8時間働いて24時間休める事になる.3直では16時間しか休めなかったのと比べて利害得失は何であろうか.一つには遠距離通勤が可能になる事である.交通不便な地方で,通勤が出来ないばっかりに理れている有資格者を発掘活用出来る事になる.欠点の一つは定員を少し増やさなければならないことであろう1長所の方が上回れば,行なう価値もあるというものである.更に定員を増やす理由として使えれば尚よいはずである.此は残念ながら著者の考案ではなくて,何十年も前からある産業界で使っている方法である.今迄も何回か喋ってみた事があるが,何故かあまり賛成者が得られない.一つには内容の把握が即座には難しい事にもあろうかと思って,述べてみた次第である.

脳腫瘍の組織診断アトラス

(21)Glioblastoma

著者: 中里洋一

ページ範囲:P.526 - P.531

I.はじめに
 成人に発生する神経外胚葉性腫瘍の代表的存在である膠芽腫ghoblastomaは,発生頻度と生物学的悪性度が高く,病理学的ならびに臨床的に最も重要な脳腫瘍である.肉眼的にも組織学的にも多彩な形態像を示すので.多形膠芽腫ghoblastoma multiformeとも呼ばれる.本稿では,組織学的所見を中心にghoblastomaの特徴について述べることとする.

総説

神経心理テスト

著者: 武田克彦

ページ範囲:P.533 - P.539

I.はじめに
1.神経心理テストとは
 この総説では紙面の都合があり,すべての神経心理テストを網羅的に取り上げることはできない.いくつかのテストにしぼって説明することにする.今回取り上げることができなかった他の神経心理テストについて詳しくお知りになりたい方は,Lezak15)の本を参照していただければさいわいである.
 ここで取り上げたテストは,それぞれのテストの信頼性と妥当性が高いと考えられている.テストの信頼性とは,そのテストを時期や状況を変えて実施したときに,どの程度の誤差が生じるかということを示す指標と言える26).妥当性とは目標としている精神現象の一側面をそのテストの内容が適切に代表しているかということである.神経心理のテストの場合は,一般にテストが目標としている能力がきわめて明確であるわけではないので,神経心理テストの点数などに過大な評価を与えることはできないことをあらかじめのべておきたい.いままでの議論から,例えばただ一つのテストで器質的な障害と機能的な障害をわけることができないことや,あるテストさえすれば神経心理学的な症候群をすべて網羅的にチェックすることができないことがおわかりになるであろう.

研究

Transcranial Doppler Arteriographyによる脳動脈瘤の血行動態

著者: 辻本正三郎 ,   竹嶋俊一 ,   榊寿右 ,   横山和弘 ,   奥村嘉也 ,   永田清 ,   澤井冬樹

ページ範囲:P.541 - P.546

I.はじめに
 破裂脳動脈瘤の頻度は人口10万人当り年間16-17人といわれ71,また剖検での未破裂脳動脈瘤の頻度は2—5%8)であり,その頻度はかなり高いものである.また一旦発症するとその50-65%が死亡する3)ためscreeningtestが非常に重要である.しかし,脳血し管撮影やDigit—al Subtraction Angiography(DSA)などの検査は侵襲的であることから,非侵襲的な補助検査法が求められている.
 1988年以来われわれは,脳血管撮影で確認された脳動脈瘤内の血流に対しTranscranial Doppler Arterio—graphy(TCDA)による検出を試みてきた.今回,脳動脈瘤の血行動態と検出率を検討した.

悪性グリオーマに対するインターフェロン遺伝子療法の開発

著者: 水野正明 ,   吉田純 ,   杉田虔一郎 ,   林豊 ,   八木國夫

ページ範囲:P.547 - P.551

I.はじめに
 ヒトβ型インターフェロン(HulFN—β)は分子量20,000,166個のアミノ酸よりなるタンパク質14)で,抗ウイルス作用のほか,抗腫瘍作用3),免疫賦活作用3,12)を始めとする多面的生理活性を示すことが報告されており,主として線維芽細胞より産生されるサイトカインである.このHulFN—βはヒトグリオーマ細胞に対し,100-1000IU/ml濃度でcytostaticあるいはcytocidalに働くことが確認されており19),臨床的にも悪性グリオーマ患者に対し抗腫瘍剤として用いられている.通常100−300×104IUのHuIFN—βを連日点滴静注する方法が行われており,その有効性が確認されている.しかしながら,その有効率は10-30%と必ずしも満足できるものではない17,18)一方HuIFN—βはヒトグリオーマ細胞内で産生され,自らの増殖を抑制している司1能性が示唆されている8).そこでわれわれはHuIFN-β遺伝子を特殊な脂質組成を持つリボソームに包埋し,ヒトグリオーマ細胞に遺伝了.導人し内因性HuIFN-βをヒトグリオーマ細胞自身より大量に産生させ死滅させるというインターフェロン遺伝子療法の基礎的研究を行い,その結果をすでに報告している11).そこで今回はさらに効率よく遺伝子導入を行うために,遺伝子導人の際の担体となるリポソームの脂質組成を変化させ,ヒトグリオーマ細胞に好する遺伝子導人効率やリボソームの細胞障害性の違いについて検討した.

高齢者破裂脳動脈瘤に対する手術—脳ベラを使用しない直達手術の評価

著者: 堀本長治 ,   辻村雅樹

ページ範囲:P.553 - P.557

I.はじめに
 脳動脈瘤の手術手技や術前・術中・術後管理の進歩により,高齢者破裂脳動脈瘤に対しても比較的安全に直達手術が行われるようになってきたが,高齢者では脳の可塑性や脳循環予備能の低下があり,手術侵襲などが加わると,容易に不可逆性の脳障害をきたし予後不良となる症例が経験される.特に脳ベラによる脳の圧排は,脳実質の機械的損傷や脳循環障害などをきたすことが考えられる.
 われわれは高齢者破裂脳動脈瘤の手術に際し,このような脳圧排による手術侵襲を軽減するために,脳ベラを使用することなく脳動脈瘤への直達手術を行い良好な結果を得たので報告する.例えばLAK細胞のキラー活性のトリガー分子であるCD3およびCD16に対する単クローン抗体(mAb)と抗腫瘍細胞mAbとを化学的に架橋したキメラ抗体を併用する方法,また種々のサイトカイン(IL-4,IL-6, γ-IFN)を用いたBRM(Biological ResponseModifier)療法等である6,19,20).一方,悪性腫瘍の病理学的特徴として認められる腫瘍浸潤リンパ球の治療応用が挙げられる.TILは,腫瘍内及び周囲で,持続的抗原感作をうけMHC拘束性で自己腫瘍細胞に対し高い殺細胞性を有するとともに,in vivoでLAK細胞と比較して著明な腫瘍集積性を示すからである13,14,23).TILの生物活性,特異性,作用機構を分析することは細胞,分子レベルブのリンパ球-腫瘍細胞相互作用を知り,抗腫瘍活性の解明,さらに効率のよい養子免疫療法の開発に役立つものである.特に血液-脳関門の存在よりT細胞の分布,抗原提示細胞,抗体産生機序を異にする脳内に於ては,更に重要と考えられる.現在までに,このTILの表面形質(CI)3+,8+,TCR α β+),キラー活性の機能解析は主に抗原性の強いメラノーマで行われてきた3,13,14).しかし,悪性グリオーマTILに於ては,機能解析,特にMHC,抗原特異性に関する研究は十分でなく,表而形質の分析が若干進んでいるのみにすぎない4,9,11).また,TILの腫瘍抗原認識に於けるT糸田胞レセプター(TCR)α,β鎖の同定,抗原に対するMHCとの関連にいたっては令く検討されていない.今回,われわれは眼窩メラノーマTILのTCRα鎖V領域(Variable region;Vα)に,restricted,predo-minant usageがあることが明らかとなり,同様の手技を用いて悪性グリオーマTILのTCRαおよびβ鎖レパートリーを検討した21)

悪性脳腫瘍浸潤リンパ球に於けるT細胞レセプターレパートリー

著者: 新田泰三 ,   江波戸通昌 ,   ,   ,   佐藤潔

ページ範囲:P.559 - P.566

I.はじめに
 組み換え型インターロイキン2(rlL-2)で活性化した腫瘍浸潤リンパ球(Tumor In filtrating Lymphocytes;TIL)を担癌患者に投与する養子免疫療法(Adoptive Immunotherapy)は従来の担癌患者末梢血リンパ球をrlL-2を用いて活性化したLAK(Lymphokine Activated Killer)細胞療法より一歩進んだ免疫療法として注目されている25).その理由としてLAK細胞が主要組織適合性抗原(Major Histocompatibility Complex;MHC)の拘束を受けず幅広い癌細胞傷害活性を示す反面,標的腫瘍細胞に対する特異性に乏しく且つ細胞一個当たりのキラー活性が,治療上十分とは言えないからである24).これらLAK療法の欠点を補うべく種々の試みがなされてきた.

脳血管の三次元表示—パーソナルコンピュータによる正・側脳血管像からの立体画像作成法について

著者: 舩橋利理 ,   桑田俊和 ,   中大輔 ,   小倉光博 ,   龍神幸明 ,   辻直樹 ,   駒井則彦

ページ範囲:P.567 - P.573

I.はじめに
 コンピュータを用いた立体画像化が進むなかで,脳血管の三次元表示が最近開発され,臨床的に応用されつつある1-5).しかし,使用されている機種は大型のコンピュータであり,設置するうえで経済的な問題があり,さらに三次元表示に要する時間がかかりすぎるという欠点があって臨床での利用価値が少ないのが現状である.これらの欠陥を補うべく,今回われわれは現在普及しているパーソナルコンピュータと市販のソフトプログラムを用いて,低価格でしかも迅速に脳血管の三次元画像を作成する方法を考案した.

クモ膜下出血後のDelayed Ischemic Neurological Deficit(DIND)と脳静脈還流障害との関連性

著者: 宮城潤 ,   重森稔 ,   山本文人 ,   倉本進賢

ページ範囲:P.575 - P.581

I.はじめに
 脳神経外科の弄術に際し脳静脈を温存することの重要性は度々強調されてきた1,2,8,11).しかしその多くは深部病変へ到達する場合,アプローチの近傍にある静脈の保存に関するものである.
 一方,クモ膜下出血に続発するdelayed ischemicneurological deficit(DIND)は,本質的には脳主幹動脈のnarrowingを基盤とするとはいえ,髄液中の血管作動性物質や水頭症などmultifactorialな要素が関与していると考えられている5,16).しかし,クモ膜下出血例のDIND発現に及ぼす脳静脈還流障害の影響について検討した報告は見られない.
 今回,著者らは破裂中大脳動脈瘤によるクモ膜下出血の急性期手術例を対象として,アプローチ側の表在静脈系(特にsulperficial sylvian vein)の還流状態とDIND発現との関連性について検討を行い,興味ある知見を得たので報告する.

新しい原理,装置によるLinear Acceleratorを用いたRadiosurgery—その原理・装置と臨床経験

著者: 寺尾榮夫 ,   西川秀人 ,   大石仁志 ,   遠藤剛 ,   金子稜威雄 ,   木暮喬

ページ範囲:P.583 - P.592

I.はじめに
 細い放射線東を脳定位的手技を用いて脳内の病巣部に集中させ,開頭手術をすることなしに病巣を破壊・治療する方法はmdiosurgeryと名付けられ,脳神経外科領域での新しい治療法として脚光を浴びている.radiosur—geryの開発・発展と普及はKarolinska InstittiteのLek—sellおよびその一門の大きな貢献によるものである.Leksellらは1950年代初めよりLinear acceleratorよりのphoton,cyciotronよりのproton beamなどを用いてradiosurgeryの開発を試み,最終的には半球面上に配置した179個または201個の60CO線源よりのγ線束を頭蓋内の病巣部に集中させる装置:gamma unitda—破壊部と非破壊部の境界がナイフで切ったような鋭さをもっているのでgamma knifeともよばれる—を完成させた.この装置は極めて高価であるにもかかわらず,現在田1界で10カ所以上の施設に設置され,一定の条件のAVMや各種腫瘍にradiosurgery治療が行われ,成果をあげている.わが国でも第1号機が東大病院に導入され,1990年6月より臨床的試用が開始されていることは周知の通りである.

脳原発悪性リンパ腫の治療成績—Nucleolar Organizer Regionとの関連

著者: 中洲敏 ,   中澤拓也 ,   斉藤晃 ,   松田昌之 ,   半田譲二

ページ範囲:P.593 - P.598

I.はじめに
 中枢神経原発の悪性リンパ腫は日本脳腫瘍統計によると脳腫瘍全体の1.1%を占める比較的稀な腫瘍であるが19),近年臓器移植等における免疫抑制剤の使用やAIDSの出現によるのみならず,免疫抑制のない患者でも増加していると言われている10).しかしその治療成績は必ずしも満足出来るものでなく,手術による紬織診断に引き続き放射線治療,あるいはそれに加えて化学療法が行われているにもかかわらず,5年以上の長期生存者は少ない17).悪性リンパ腫は生存:率に関係する様々な要因が報告され,予後の面から見て均一な腫瘍でないと孝えられているが8,27),様々な病理学的な分類が使われているため,中枢神経系においてはその組織学的な所見と予後との比較は十分に為されていない.今回われわれは,腫瘍の細胞の活動性に関連すると言われているnucleolarorganizer regions(NORs)をone-step silver stzlining法にて染色し11,2)核内の銀染色顆粒数(AgNOR値)と生存率との比較を行った

症例

髄内発育を示した頸髄神経線維腫の1例

著者: 岡秀宏 ,   橘滋国 ,   矢田賢三 ,   諏訪知也 ,   飯田秀夫 ,   三井公彦

ページ範囲:P.599 - P.603

I.はじめに
 脊髄の神経鞘腫・神経線維腫は発生頻度の高い腫瘍であるが,脊髄神経線維腫が髄内に発育することは極めて稀である.われわれは,頸髄髄内に発育した神経線維腫の1例を経験したので,その発生機序,画像診断について文献的考察を加え報告する.

冠動脈狭窄と頸部内頸動脈狭窄を合併した1症例

著者: 坂口一朗 ,   森脇恵太 ,   保田晃宏 ,   黒岩敏彦 ,   志熊道夫 ,   太田富雄 ,   下村裕章 ,   河村慧四郎 ,   竹内栄一即 ,   多根一之 ,   西田進一 ,   杉岡靖

ページ範囲:P.605 - P.610

I.はじめに
 高齢化の進むわが国において,虚血性脳血管障害は年年増加する傾向にある。その主な原因である動脈硬化症は,単に脳血管だけでなく,冠動脈や四肢の動脈など全身の血管性病変である。今回われわれは,虚血性心疾患を伴った頸部内頸動脈狭窄症に対し,先ず経皮的冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angio—piasty;以下PTCAと略す)施行後,頸部内頸動脈血栓内膜剥離術(carotid endarterectomy;以下CEAと略す)を行い,良好な経過をとった症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

頭蓋内外に多発性動脈瘤を合併したFMD(Fibromuscular Dysplasia)の1例

著者: 萬代眞哉 ,   西野繁樹 ,   伊藤輝一 ,   元木基嗣 ,   則兼博 ,   守屋芳夫 ,   松本祐蔵

ページ範囲:P.611 - P.615

I.はじめに
 Fibromuscular dysplasia(FMD)は,動脈壁の線維性肥厚及び平滑筋の不規則な増生,変性を主徴とする非動脈硬化性血管疾患であり,腎血管性高血圧をひきおこすばかりでなく頭頸部にも好発して,TIA,脳梗塞,クモ膜下出血などの原因となることが知られている.今回われわれは,頭蓋内外に極めて稀な動脈瘤を介併した広範なFMDの1例を経験したので文献的考察を加え報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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