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高齢者破裂脳動脈瘤に対する手術—脳ベラを使用しない直達手術の評価
著者: 堀本長治1 辻村雅樹1
所属機関: 1北九州市立八幡病院脳神経外科
ページ範囲:P.553 - P.557
文献購入ページに移動脳動脈瘤の手術手技や術前・術中・術後管理の進歩により,高齢者破裂脳動脈瘤に対しても比較的安全に直達手術が行われるようになってきたが,高齢者では脳の可塑性や脳循環予備能の低下があり,手術侵襲などが加わると,容易に不可逆性の脳障害をきたし予後不良となる症例が経験される.特に脳ベラによる脳の圧排は,脳実質の機械的損傷や脳循環障害などをきたすことが考えられる.
われわれは高齢者破裂脳動脈瘤の手術に際し,このような脳圧排による手術侵襲を軽減するために,脳ベラを使用することなく脳動脈瘤への直達手術を行い良好な結果を得たので報告する.例えばLAK細胞のキラー活性のトリガー分子であるCD3およびCD16に対する単クローン抗体(mAb)と抗腫瘍細胞mAbとを化学的に架橋したキメラ抗体を併用する方法,また種々のサイトカイン(IL-4,IL-6, γ-IFN)を用いたBRM(Biological ResponseModifier)療法等である6,19,20).一方,悪性腫瘍の病理学的特徴として認められる腫瘍浸潤リンパ球の治療応用が挙げられる.TILは,腫瘍内及び周囲で,持続的抗原感作をうけMHC拘束性で自己腫瘍細胞に対し高い殺細胞性を有するとともに,in vivoでLAK細胞と比較して著明な腫瘍集積性を示すからである13,14,23).TILの生物活性,特異性,作用機構を分析することは細胞,分子レベルブのリンパ球-腫瘍細胞相互作用を知り,抗腫瘍活性の解明,さらに効率のよい養子免疫療法の開発に役立つものである.特に血液-脳関門の存在よりT細胞の分布,抗原提示細胞,抗体産生機序を異にする脳内に於ては,更に重要と考えられる.現在までに,このTILの表面形質(CI)3+,8+,TCR α β+),キラー活性の機能解析は主に抗原性の強いメラノーマで行われてきた3,13,14).しかし,悪性グリオーマTILに於ては,機能解析,特にMHC,抗原特異性に関する研究は十分でなく,表而形質の分析が若干進んでいるのみにすぎない4,9,11).また,TILの腫瘍抗原認識に於けるT糸田胞レセプター(TCR)α,β鎖の同定,抗原に対するMHCとの関連にいたっては令く検討されていない.今回,われわれは眼窩メラノーマTILのTCRα鎖V領域(Variable region;Vα)に,restricted,predo-minant usageがあることが明らかとなり,同様の手技を用いて悪性グリオーマTILのTCRαおよびβ鎖レパートリーを検討した21).
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