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脳腫瘍の組織診断アトラス
(22)Arachnoid Cyst and Rathke's Cleft Cyst
著者: 岩崎康夫1
所属機関: 1日本赤十字社医療センター脳神経外科
ページ範囲:P.625 - P.634
文献購入ページに移動1.臨床的特徴
クモ膜に覆われた,髄液を内に含む良性非腫瘍性嚢胞である.クモ膜下槽に好発し,中頭蓋窩(Sylvius裂),大槽部,大脳円蓋部,鞍上部,小脳橋角,四丘体槽などに多く見られるが,脳室内などクモ膜が存在しない部位にも報告がある14,20).
臨床症候を呈する例では,頭痛,痙攣,頭蓋変形などが多く見られるが,無症状のものも多い.本症を最初に報告したのはBright(1831)2,15)といわれるが,最近の画像診断の進歩につれて,無症状のものが発見される頻度が増しており,人口の1%程度にCT上クモ膜嚢胞が見出されるという25).症候を呈するものは小児に多く,無症状のクモ膜嚢胞の発見率も年齢が低いほど高いことから,多くのクモ膜嚢胞は加齢に連れて自然消失すると考えられ,実際に経過観察中の自然消失例も報告されている1,7,26).しかし,急速に増大を認めた例10)や,増大・縮小の見られた報告21)もあり,本症のnatural historyは未だに不明な点が多い.
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