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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科20巻7号

1992年07月発行

文献概要

解剖を中心とした脳神経手術手技

顔面神経麻痺に対する形成手術

著者: 上田和毅1 波利井清紀1

所属機関: 1東京大学形成外科

ページ範囲:P.731 - P.739

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はじめに
 脳神経外科領域で生じる顔面神経麻痺の多くは,脳腫瘍,脳血管障害,頭蓋骨骨折などに伴う中枢性の麻癖であり,通常の場合,顔面神経の縫合による損傷部の単純な修復が不可能である.すなわち,非回復性の麻痺が多く,そのため治療としては形成外科的手技が重要な位置を占めるものと考えられる.一般に,顔面神経麻痺の治療における形成外科的手術とは,障害を受けた顔面神経自体の連続性を回復させて治療を行うのではなく,それ以外の手段によって麻癖により生じた形態的,機能的異常を矯正する手術をさすことが多い.また,一口に形成外科的手技といっても多種多様な術式を含んでいるが,これは顔面神経麻痺の症状が多岐にわたっており,単一の術式では麻痺によって生じた変形を十分矯正できないことによる.すなわち,眼瞼部においては兎眼,限瞼外反,眉毛部・上眼瞼の下垂などの変形が見られ,これらの変形に伴って眼痛,流涙,視野障害などの症状が生じる.頬部・口唇部においては,表情筋の収縮が見られないだけではなく,安静時にも口角の下垂,鼻唇溝の消失,頬部の陥凹,流涎など,麻癖による組織の弛緩に起因する症状が見られる.また,年齢によっても症状の程度に差があり,術式の選択は複雑である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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