文明国の人間,特に自然の乏しい大都会の人々が憧れるのは,南海の楽園での,野性的でフリーな生活であろう.青い空,エメラルドの海につつまれた美しい珊瑚礁でのロマンチックな野外生活はまた格別である.以前米国の新聞社で「今,貴方は何をしたいか?」というアンケート調査を行ったが「南海の孤島の浜辺でヤシの木陰にハンモックをつるして読書と昼寝をする.」との答が一番多かったと聞く.
さて日本ミクロネシア協会は日本の小,中学生に日本では到底味わえない南大平洋での生活体験をさせ,現地の人々との交流を目的に大平洋フリースクールを開催してきた.
雑誌目次
Neurological Surgery 脳神経外科21巻3号
1993年03月発行
雑誌目次
扉
文明と医療
著者: 松本清
ページ範囲:P.191 - P.193
連載 脳循環代謝・3
Stable Xenon-Enhanced CTを用いた脳循環測定法
著者: 鈴木龍太 , 成相直 , 平川公義
ページ範囲:P.197 - P.203
I.はじめに
本稿では臨床的に脳循環を測定する方法のうちXenon-enhanced CT(Xe/CT CBF,日本語ではキセノンCTとする)の概説を行う.周知のごとく非放射性キセノンガス(ゼノピュアー,テイサン株式会社,東京)が平成3年10月に世界に先駆けて医薬品承認され,また平成4年4月からは本法が“非放射性キセノン脳血流動態検査”として診療報酬掲載された.このことから本法は日常的な臨床検査として現在急速に普及しつつある.一方,習熟していないことからくる混乱も伝えられる.われわれは本法の標準化の努力をしているがこの場を借りて方法論と問題点,特長を理解して頂き,本法の発展に寄与できることを願っている.
研究
頭部外傷患者におけるMannitol持続少量総頸動脈投与療法
著者: 横田裕行 , 中林基明 , 布施明 , 益子邦洋 , 山本保博 , 辺見弘 , 大塚敏文 , 粟屋栄 , 小林士郎 , 中沢省三
ページ範囲:P.205 - P.211
I.はじめに
高浸透圧利尿剤である20%mannitolは各種頭蓋内圧亢進状態に使用され,その効果も広く知られている.しかしその反面,反跳現象や長期使用による電解質異常あるいは種々の要因によりmannitolを使用しがたい病態も存在する.われわれはこのような患者に対してman—nitol持続少量総頸動脈投与療法(以下mannitol動注療法と略す)を試み,良好な結果を得たので報告する.
髄膜癌腫症の臨床的考察—頭蓋内圧分析を中心とした検討から
著者: 武田泰明 , 鬼塚俊朗 , 原岡襄 , 古場群巳 , 伊東洋 , 三輪哲郎
ページ範囲:P.213 - P.220
I.はじめに
髄膜癌腫症Meningeal Carcinomatosis(以下MC)は,1870年のEberthの報告3)に始まり,最近の脳腫瘍全国統計では転移性脳腫瘍の5.5%を占めるとされている24).一般に多彩な臨床症状や高度の頭蓋内圧亢進等を呈し,急速に進行,予後不良な重篤な疾患群として知られている.これまで多くの臨床病理学的報告10,12,13,22)があるが,最近は早期診断や治療法の工により生存期間の延長も報告されている11,17,18,21).しかしながら本病態の頭蓋内圧分析による報告はきわめて少なく,経過中に出現する頭蓋内圧亢進の様相は単に漠然と理解されているにすぎない.今回われわれは,MCの頭蓋内環境を解明する一助として持続頭蓋内圧測定を行い,その圧分析の検討を中心に臨床的考察を行ったので報告する.
破裂脳動脈瘤早期手術後の血管攣縮と6カ月転帰—Glasgow Coma Scaleによる術前重症度との関連
著者: 後藤修 , 田村晃 , 仁瓶博史 , 間中信也 , 桐野高明 , 佐野圭司
ページ範囲:P.221 - P.226
I.はじめに
破裂脳動脈瘤の手術時期は手術手技の発達した今日においても猶議論の的であるが,最近の全世界的な傾向として,従来より日本を中心として主張されてきた早期手術の意義を見直す気運にある2,10,11,16,17,22).その背景には,早期手術により再出血が防止できるだけでなく,脳血管攣縮に対する積極的な治療が容易になり手術成績が向上するとの考えがある2,10,11).しかし1980年代前半に行われた国際共同研究の結果では,早期手術においても血管攣縮が依然として手術成績を左右する重大な要因であることが示されている13).
血管攣縮の発生を出血の急性期に予知して早期手術の適応を決める手段として,現在まで臨床重症度とCT所見が主として検討されてきた.このうちHuntらの分類に代表される臨床重症度は早期手術後の攣縮発生や予後との関連が少なく,この点ではむしろCT所見の方が有用であるとの報告が多い1,5-7).しかし従来の臨床重症度分類の根本的な問題点として,重症度の中核をなす意識障害の表現が不明確で,検者による評価の不一致が大きいことが指摘されている14,15).この検者間の不一致を少なくしてより客観的に重症度を評価する目的で,国際脳神経外科学会連合(WFNS)の委員会では,数値による意識障害評価法であるGlasgow Coma Scale9)(GCS)に基づいた分類法を提唱している23).本研究では最近9年間の早期手術例において,術後の血管攣縮発生とその転帰を解析し,これらがGCSに基づく術前臨床重症度とどのような関連を有するかについて検討した.
Single Photon Emission CTによる脳腫瘍血流量の検討
著者: 荒木有三 , 今尾幸則 , 安藤隆 , 坂井昇 , 山田弘
ページ範囲:P.227 - P.233
I.はじめに
Single photon emission CT(SPECT)で計測される脳腫瘍血流量(TBF, tumor blood flow)は,133Xe吸入法SPECT(Xe-SPECT)においては,腫瘍組織の組織血液分配係数(λ)が不明で固定値を用いるため,計測されたTBF値が真の値を反映していないことが予想される.また,N-isopropyl-p—[123I]iodo amphetamine(IMP)静注法によるSPECT(IMP-SPECT)においては,IMPが腫瘍組織中は,chemical microsphereとして働かず,早期に洗い流されてしまうために,通常の早期画像では正しいTBFを示すとはいい難い.本研究では,脳腫瘍症例83例にSPECTを行い,TBF値と組織型,腫瘍血管数,術中出血程度などとの関連性を検討するとともに,Xe-SPECTやIMP-SPECTで計測されるTBF値の臨床的有用度について考察する.
聴神経鞘腫摘出術において顔面神経をいかにして温存するか—“Micro-neurostimulator”の開発
著者: 関谷徹治 , 岩淵隆 , 清村孝一郎
ページ範囲:P.235 - P.238
I.はじめに
最近では電気生理学的術中モニタリングのための刺激,分析,及び記録機器の性能が飛躍的に向上して,手術場における生体電気現象の記録は比較的容易になってきた2).しかしこれらの機器本体に接続して使用する周辺機器の開発はまだ充分とは言えない.
聴神経鞘腫摘出術においては,頭蓋内電気刺激によって顔面筋誘発筋電図を記録し,これによって顔面神経の走行部位を同定する方法が広く普及している1).このための頭蓋内電気刺激電極としては,通常のマイクロサージェリー用のバイポーラー鑷子などが転用されていることが多い.しかしこれらは頭蓋内電気刺激竃極としては必ずしも最適であるとは言えない場合がある.
われわれは,手術用顕微鏡下での微細な操作に適し有効な電気刺激を加えることのできる刺激電極“Micro—neurostimulator”を試作し,その臨床有用性を確認しているので報告する.
急性脊髄損傷に対する実験的研究—脊髄組織血流の経時的変化について
著者: 川田和弘 , 森本哲也 , 大橋孝男 , 辻本正三郎 , 星田徹 , 角田茂 , 榊寿右
ページ範囲:P.239 - P.245
I.はじめに
脊髄損傷後に神経症状の範囲が広がることが経験され,その原因として外傷後に発生する脊髄の虚血5,27,28,33)や種々の生化学的変化11,13,18,23)等,受傷後の二次的変化が考えられているが,その機序はなお明らかとはなっていない.脊髄外傷後の二次的損傷の受傷近傍部位への影響を解明することは,脊髄損傷患者の治療法を考える上で重要である.特に急性期局所血流の低下が二次的に脊髄損傷を増大させる主因と考えられるようになってきた31.従って脊髄損傷近傍部での組織血流を検討することは重要と考える.laser Doppler flowmetry(LDF)は神経組織に対して非侵襲的にSpinal cord blood flow(SCBF)を連続測定することができるとされている6).われわれはこの方法を用いてラットの硬膜外クリップ圧迫モデルでの受傷部位から頭側,尾側における組織血流を経時的に測定した.そして,受傷近傍部位ではかなりの微小循環障害が生じていることが判明,特に頭側での低下が強く,二次的損傷の大きな因子となっていると考えられたのでここに報告し,その機序について考察する.
症例
Turcot症候群(Glioma Polyposis)の1症例
著者: 江口議八郎 , 重森稔 , 杉田保雄 , 倉本進賢 , 上恒正己
ページ範囲:P.247 - P.250
I.はじめに
大腸polyposisと脳腫瘍を合併する疾患は1959年Turcotら14)により報告されて以来,Turcot症候群またはGlioma-polyposis症候群2)として知られている.本邦では今まで10例5-9,13,14)が報告されているのみで,稀な疾患と考えられる.われわれは18歳時に大腸の多発性carcinoma and polyposisで発症し,その1年後に脳腫瘍を併発した1症例を経験したので,症例を提示し,多少の文献的考察を加えて報告する.
内頸動脈狭窄症例に対する急性期Percutaneous Transluminal Angioplasty(PTA)の1例
著者: 山村明範 , 柴田和則 , 奥山徹 , 平井宏樹
ページ範囲:P.251 - P.256
I.はじめに
PTA(percutaneous transluminal angioplasty)は,1964年にDotterら4)により始められた方法で,1974年にGruntzigら5)がポリ塩化ビニル製のballoon catheterを開発し,以後脳神経外科疾患にも応用されるようになってきた.現在,脳神経外科領域のPTAは主に鎖骨下動脈領域以外に椎骨動脈,頸動脈の動脈硬化性狭窄の慢性期や高安病,fibromuscular dysplasiaの狭窄病変に対して行われるようになった.また最近はクモ膜下出血後のvasospasmに対しても試みられるようになってきている.今回われわれは,急性期内頸動脈狭窄症例に対してPTA治療を行い,良好な結果を得ることができたので文献的考察を加えて報告する.
頸部皮下腫瘤として触知し得たDumbbell型頸髄神経鞘腫の2例
著者: 朝日稔 , 花北順哉 , 諏訪英行 , 福田稔 , 名村尚武 , 水野正喜 , 大塚俊之
ページ範囲:P.257 - P.262
I.はじめに
脊髄神経鞘腫は脊髄神経根より発生し,椎間孔を通して脊柱管内外に連なった形で進展するため,dumbbell型を呈することが多い1,13,14,21).特に頸椎レベルに発生した場合,椎体前側方に大きく進展した腫瘍の脊柱管外部分が皮下腫瘤として触知し得ることがある27).今回われわれは,頸部皮下腫瘤として触知し得た頸髄dumb—bell型神経鞘腫の2例を経験し,側方進入と後方進入の2stage operationにて全摘出を行い良好な治療成績を得た,その診断・治療について若干の知見を得たので文献的考察を加えて報告する.
巨大なOlfactory Groove Meningiomaに対するExtensive Transfrontal Approach
著者: 中瀬裕之 , 大西英之 , 東保肇 , 宮本享 , 森迫敏貴 , 渡部安晴 , 伊東民雄 , 山田圭介 , 芝元啓治 , 唐澤淳
ページ範囲:P.263 - P.267
I.はじめに
近年,頭蓋底外科の発展に伴い,充分な視野が確保されかつ脳の圧排を最小限におさえる手術法が工夫されている.
olfactory groove meningioma(以下OGM)は,全髄膜腫の約3.8%を占め5),嗅覚低下が唯一の症状であるため患者が異常に気づくのが遅れ,かなり大きくなってから発見されることが多く,前頭葉の部分切除が行われることもある4,10).今回われわれは,巨大なOGMに対し,Extensive transfrontal approachを行い良好な結果が得られたので,手術術式を中心に報告する.
聴力障害にて発症した両側被殻出血の1例—いわゆるcortical deafnessについて
著者: 西岡宏 , 武田泰明 , 古場群己 , 矢野純 , 大岩泰之 , 原岡襄 , 伊東洋
ページ範囲:P.269 - P.272
I.はじめに
聴覚中枢の損傷で生ずる聴力障害はcortical deafness(皮質聾)と呼ばれ,一般に両側の側頭葉の障害によると考えられている.しかしこれまでこのような報告例は少なく,その病態あるいは責任病巣を含め不明な点が多い.今回著者らは7年前に右側被殻出血に対する皮質経山の血腫除去術の既往歴を有し,その後突然の聴力障害にて発症した左側被殻出血の1例を経験した.本病態を生じた責任病巣およびこれらcortical deafnessの概念とその臨床的問題点に対し若干の文献的考察を加えたので報告する.
報告記
The 3rd International Workshop on Cerebrovascular Surgery
著者: 端和夫
ページ範囲:P.274 - P.275
The 3rd International Workshop on CerebrovascularSurgery(IWCVS)は高倉公朋会長のもとに,1992年10月17日から19日までの3日間,東京笹川ホールで行われた.
この国際会議は1988年に東京で第1回,1990年に名古屋で第2回が行われたが,会議でとりあげられた話題の変遷を追ってゆくと,この間の脳血管障害の外科の流行り廃れが現れていて感慨深い.
日中伊脳神経外科友好シンポジウム
著者: 近藤達也
ページ範囲:P.276 - P.277
周知の通り,1992年は日中間の国交が回復して20周年にあたり,これを記念する行事が,夏の終わり頃から中国国内で各方面で多彩に行われ,天皇,皇后両陛下の訪中は記憶に新しい.医学の分野でもこれを期に,中華医学会と日本医学会とが共催し,「日中医学大会1992」として,10月末から11月始めにかけて北京で行われた.そして実に32の分野でそれぞれ分科会が開かれ,1000名を越す日本の医学関係者が北京に集まった.北京は,既に真冬に近く万里の長城等は雪にみまわれ思わぬ素晴らしい景色も堪能できた.吐息は白くその熱気は,今回の大会の盛り上がりを象徴した.脳神経外科の分野では50名弱の日本からの参加者をみた.今回の脳神経外科のシンポジウムは,日中及び中伊のそれぞれ異なる友好シンポジウムが合体して行われたものであり,これは,王忠誠会長の主催によって為されたものである.これには,日本側は,高倉公朋教授,イタリア側は,Albino Bricolo教授(ベローナ)が共催された.場所は,北京飯店に併設して新たに出来た貴賓楼の中国風の雰囲気のある会場であった.演題数は,日本40篇,中国46篇,イタリア20篇であった.公用語として英語が用いられた.従って,本大会に出席した中国の神経外科医は,それなりに限定されたものである.日本からは,基本的に中国に関心をお持ちの先生方が参加され,それぞれが先進的なお仕事を報告された.これらが,アクティブな中国の同輩にとって刺激的であった事は言うまでも無い.
中国からの演題は,脳腫瘍が30篇,血管系は12篇(そのうち,AVMに関するものが8篇)と偏りが目立つ.動脈瘤については,1篇の報告にすぎず,この国では,蜘蛛膜下出血そのものが,これからの課題と思われる.これは,かつて,我が国でもそうであったように,この疾患は,内科的に処理されている事が多い為であるようである.脳腫瘍の演題からみてみると,疾患の総論に関するものでは,小児脳腫瘍の2000例の分析と症例数の多さに先ず圧倒される.協和病院から,116例のクッシングを含む下垂体腫瘍のマイクロサージャリーの優れた報告が目立つ.また,頭蓋底手術への関心も高まりつつあり,海綿静脈洞の腫瘍や,cliVUSの髄膜腫に対するマイクロサージャリーといった報告があった.マイクロウェーブを髄膜腫内にアンテナを挿入し2450Mzの波でハイパーサーミアを施してIEIfl[効果を高め外科的に摘出を容易にするという工夫,グリオーマに温熱化学療法の臨床応用といったすでに単純な外科の領域を越し,外科自体もマイクロが当然の様に導入され,さらに独自の工夫を行う余裕が出て来た事が伺える.また,CTを用いてステレオでアイソトープを腫瘍内に投与するBrachytherapy(198Au,32P,90Y,)200例という報告もある.化学療法は,先に日本より導入されたACNUを用いた報告もあるが,中国国内で製造しているBCNUが基本となっている.中国の古典的な薬Berberineを用いた実験的研究なども今後の結果が楽しみである.基礎的な研究報告もみられ,多剤耐性のヒトグリオーマに対するmolecular hybridizationを用いた研究など先鋭的なものもあり,条件が整うと将来が期待される状態である.血管系は前述の様にAVMに関するものが主体であり,症例の多さを除いて特筆するものはないが,en−dovascular surgeryも流行になりつつあり,絹や麻の糸が用いられている.興味深いものでは北京神経外科研究所のTransvenous retroperfusionの実験があった.猿で可逆的な中大脳動脈閉塞モデルを作成し,麻酔下でfemoral arteryから体外循環させ,頸部より両側のSig・moid sinusに特注の3層構造のバルーン付のカテーテルを挿入し,ischemic brainに対して,逆行性に静脈洞より循環を試みたものであるが,MRI,SPECT,TEMをモニターに用いた本格的なものである。結果としては,4時間以内のstrokeには有効ということである.
基本情報

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