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連載 脳循環代謝・8
MRSと脳循環代謝
著者: 宝金清博1 鎌田恭輔1 阿部弘1
所属機関: 1北海道大学脳神経外科
ページ範囲:P.669 - P.675
文献購入ページに移動核磁気共鳴法(ここではMRと略す)は,現在広く臨床応用が進んでいるが,一般に,画像法(MRIやMRA)と磁気共鳴spectroscopy(MRS)に大別されている.広い意味でMRIを用いた脳循環測定には,非常に多くの魅力的な可能性がある.ただ,われわれも報告してきたような造影剤を用いてT1ないしはT2によるコントラストを利用する方法以外は,いまのところ実用性に乏しい11).しかし,最近,話題のfunctional brain im—agingは,これまでPETにより得られた脳循環の情報が,非常に高い時間,空間分解能で得られるという画期的な可能性を秘めている.
しかし,本稿では,脳循環を観察する方法としてのMRIに関しては省略し,脳の代謝をとらえる方法としてのMRSに限って述べたい.特に,本稿では,すでにMRSを専門としておられる研究者ではなく,基礎的知識のない臨床の医師を対象として,概説を加える.測定原理や測定方法は,MRS理解(特に,その限界や問題点の理解)にとって重要なことであるが,本稿の主たる目的ではないので,簡単に紹介するにとどめたい.また,臨床のMRSの測定対象となる核種としては,リン31と水素がある.しかし,リン31のMRSの脳への臨床応用は,水素のMRSに比べると,現在,ルーチンの検企という意味では実用化の段階には達していない7).従って,一般の脳神経外科医を対象とする本稿では水素のMRSに関して述べ,リン31のMRSについては他の総説を参考にされたい.
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