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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科22巻11号

1994年11月発行

雑誌目次

新入医学生は本を読むか

著者: 和賀志郎

ページ範囲:P.997 - P.998

 新入学の医学部学生に対する「医学概論」の講義が行われるようになってから,もう10年以上になるだろう.約20回あるコースの1コマ(来年から90分,今年まで100分)を受け持つだけではあるが,いろいろ工夫はしてきたつもりである.果たしてどんな効果があったのだろう?いろいろな工夫のなかには,LjunggrenのThe Case ofGeorge Gershwinでてんかんと脳腫瘍,Clowardの真珠湾攻撃の際のQueen's Hos—pitalの忙しさ,KahhのJournal of A Neurosurgeonにおける一般外科,脳神経外科の卒後教育,などを用いて,医学に親しみ,少しは神経科学の香りを嗅いで,あわよくば医学英語に少しは慣れることを期待したこともあった.少し新入生には難しすぎたのではないか,学生の自主性を無視したのではとは思っていた.なにせ第一,ガーシュインWho?の世代である.2年程前から新人生に対する外来,病棟における初期体験実習が始まっているので,今年は新しい試みを行ってみた.
 医学概論の与えられた課題は「脳死とその現況」であったので,講義は日本における脳死判定の歴史を極く簡単に述べるにとどめ,推薦図書を指定して400-800字の感想文を書かせることにした.6月に出題して9月提出であるから期間は十分である.推薦図書は1.「脳の話」(時実利彦氏,岩波新書) 2.「ドキュメント臓器移植」(マークダウイ氏,平凡社) 3.「生きている心臓」(加賀乙彦氏,講談社)の3冊であり,どれを選ぼうが学生の自由とした.

連載 脳腫瘍の遺伝子療法:基礎研究の現状と展望・3

DNA/リポソームを用いるサイトカイン遺伝子治療

著者: 岡田秀穂 ,   岡本奨 ,   吉田純

ページ範囲:P.999 - P.1004

I.はじめに
 現在,米国をはじめとする各国で開発されているがんに対する遺伝子治療のアプローチは,まずその生物学的側面から3つに分類できると考えられる.まずは免疫遺伝子療法として,腫瘍細胞やリンパ球にIFN, TNFをはじめとするサイトカインや同種抗原のHLA-B7の遺伝子を導入することにより,宿主の免疫能を強化あるいは惹起する方法である.二番目は,腫瘍細胞に直接がん抑制性あるいは殺細胞性の遺伝子を導入する方法で,ρ53遺伝子,K-rasやinsulin-like growth factor Iに対するアンチセンス遺伝子または,単純ヘルペスチミジンキナーゼ(herpes-simplex-thymidine kinase=HS-tk)遺伝子を導入するプロトコールが認可されている.三番目には,造血細胞に多剤耐性遺伝子を組み込んで骨髄抑制を軽減し,大量の化学療法を可能にしようというものである.
 また,いかにして遺伝子を安全に効率よく細胞に導入し安定して発現させるかは,技術的に根本的な問題であるが,遺伝子を運ぶベクターに何を選ぶかは,大きくウイルスに頼る方法と,それ以外の方法に分けられる(Table1).一般にウイルスを用いた方法は,本来ウイルスが持っている遺伝子導入活性を利用するので,導入,発現効率は非常によいが,標的細胞の種類,導入できる遺伝子の大きさや発現の安定性などは,ウイルス自体の性質に依存せざるを得ない.また,ウイルス自体の免疫性が反復投与を困難にする場合もあり,ベクターの品質管理の面でも野性型の混入を完全に防げるかどうかなど問題はある.ウイルスを川いた方法についての詳細は他の執筆者にゆずるとして,一方でウイルスを用いない方法には,脂質とDNAの複合体によるもの(リポソーム法やリポフェクチン法),カルシウム塩とDNAの複合体によるもの(リン酸カルシウム法),電気穿孔法,マイクロインジェクション法や,最近では蛋白質とDNAの複合体を用い,その特異的受容体を介して遺伝子導入する方法1)や,直接DNAを注射する方法16)も発表されている.これらの方法は,ウイルスを用いた方法に比較すると一般に導入効率は低く,またex vivo法ではともかく,リン酸カルシウム法,電気穿孔法,マイクロインジェクション法はin vivo法へ発展させるのはまず不,可能である.しかし,これらウイルスに頼らない方法の場合はDNAを純粋な化学物質として扱えるので,大量生産や,品質管理に都合がよいと思われる,こういった様々なベクターの持つ長所と短所を考慮した上で,理想的なベクター,とくに脳腫瘍の局所治療にとって理想的なベクターの条件について考えてみると,①正常脳組織に対する毒性が低く,標的である腫瘍細胞にのみ効率良く導入,発現される,またはそのための加工が行える,②大量生産や品質管理が行いやすい,という点が最も重要である.

解剖を中心とした脳神経手術手技

血管内手術

著者: 後藤勝彌

ページ範囲:P.1005 - P.1013

I.海綿静脈洞の流出路と硬膜動静脈瘻(dural arterio—venous fistula:DAVF),直接型の頸動脈海綿静脈洞瘻(direct carotid-cavernous sinus fistula:CCF)の塞栓術
 DAVFやCCFの自然経過中や,塞栓術に伴って眼窩内および頭蓋内の重篤な合併症を生じることが稀ならず存在する.合併症予防のためには,流出静脈系の解剖と血行動態の把握がことに重要である.
 海綿静脈洞は前方は上下の眼静脈と,後方へは上下の錘体静脈洞と,頭蓋内潅流静脈群は浅シルビウス静脈,脳底静脈,anterior pontomesencephalic veinと,下方へはpterygoid plexusとつながる(Fig.1).それぞれの静脈還流路の発達の程度には個人差があり,また,海綿静脈洞の硬膜動静脈瘻の経過中に,そのうちのいくつかが自然に,また,治療によって閉塞することがある.後方還流路が閉塞すると眼症状の増悪をみることが多い.前方ならびに,後方静脈群が閉塞すると頭蓋内の静脈への逆流が生じ,静脈性高血圧が著しくなると,静脈性の脳梗塞や,頭蓋内出血を生じる恐れがある1).進行性の視力障害が出現するか,血管造影で,頭蓋内還流静脈群への著明な逆流をみたら,出来るだけ早急に塞栓術を行わねばならない.

研究

フィブリン糊スプレーによる髄液漏に対するSealing効果の検討

著者: 寺坂俊介 ,   沢村豊 ,   阿部弘

ページ範囲:P.1015 - P.1019

I.はじめに
 脳神経外科の手術におけるフィブリン糊の使用頻度は年々増加傾向にあり,その使用目的は主として髄液漏防止である.実際,硬膜の修復が困難で,術後髄液漏が問題となる経蝶形骨洞手術や後頭蓋窩手術に多用され,その有効性については数多くの報告が認められる1,4,5,7,8,11).しかしながらフィブリン糊が実際どの程度まで,硬膜・くも膜欠損部あるいは縫合部からの髄液漏防止に有用であるかを,詳細に検討した実験報告は未だ認められていない.また,近年,従来の塗布方法である重曹法・二液混合法に加えてスプレー法が開発され,今後その応用範囲はさらに拡大するものと予想される.
 われわれは,加圧シリンジとマノメーターを用いた実験系を作製し,(1)フィブリン糊の塗布方法とsealing効果,(2)不全硬膜縫合に対するsealing効果,(3)硬膜欠損部位に対するsealing効果の基礎実験を行ったので報告する.

右被殻出血におけるDiaschisis—血腫進展度・血腫量との相関

著者: 小笠原邦昭 ,   沼上佳寛 ,   北原正和

ページ範囲:P.1021 - P.1027

I.はじめに
 神経線維が破壊されると,その神経線維と結合している遠隔部の神経細胞の活動が低下する現象があり,これはtransneuronal depressionあるいはdiaschisisなどという表現で知られている2,4,8,17,21,25).このdiaschisisにおいては,神経細胞のdeactivationによる代謝の低下とcouplingして局所脳循環も低下することが知られている2,16,17)
 一方,脳内出血は基本的には脳実質の破壊が局所に止まっており,原病巣の障害度と遠隔部に出現するdi—aschisisとの関係を知るのには有用な病態と考えられる.そこで今回われわれは,右被殻出血症例のみを対象にそのdiaschisisの程度を亜急性期に施行したN-iso—propyl-p—〔123I〕iodo-amphetamine(IMP) SPECTによる脳循環の測定から知り,血腫進展度・血腫量と比較検討したので報告する.

培養グリオーマ細胞株に対するCarboplatinと温熱の相乗効果

著者: 篠原千恵 ,   松本健五 ,   前田八州彦 ,   多田英二 ,   栗山充夫 ,   芦立久 ,   小野恭裕 ,   東久登 ,   古田知久 ,   大本堯史

ページ範囲:P.1029 - P.1033

I.はじめに
 固形癌に対する強力な抗腫瘍効果で知られているシスプラチン(cis-diamminedichloroplatinum(II):cisplatin(CDDP)1)は多くの臨床試験で脳腫瘍に対しても効果があると報告されてきた13)が,そのdose limiting factor(DLF)である腎毒性,消化管毒性の他,聴力障害に代表される神経毒性のために使用が制限されることも少なくない.これに対し,cis-diarnmine(1,1—cyclobutane—dicarboxylato)Platinum(II):carboplatin(CBDCA)は第二世代のプラチナ誘導体で,CDDPと同等の抗腫瘍効果があり,腎,消化管,神経毒性が大幅に軽減されるため2,3),最近悪性脳腫瘍に対する臨床試験で頻用されている薬剤である4,7).われわれは1991年より悪性グリオーマに対し,CBDCAを含む多剤併用療法を施行中で,良好な成績を得ている15)が,化学療法のみでは悪性神経膠腫を完全寛解に至らしめるのは困難で,何らかの併用療法を必要とすることも事実である.
 一方,われわれは以前より温熱療法が悪性神経膠腫に対し有力なadjuvant therapyのひとつとなり得ること,化学療法との併用によりその殺細胞効果の増強が期待できることを報告してきた9).他臓器癌においてはCBDCAが温熱療法との併用により殺細胞効果の増強を示すとの報告はあるが1),悪性グリオーマ細胞に関しての報告は少ない14).今回,悪性グリオーマのCBDCA感受性に対する温熱の増強効果を検討する目的で,培養グリオーマ細胞株を用い,温熱感受性の評価に応用t'f能で17),簡便な抗癌剤の感受性テストである3-(4,5-dimethylthiazol-1-2-yl)-2,5 diphenyltetrazolium bromide(MTT)assayにより両者の併用効.果を検討した.

症例

第4脳室内に発生した後下小脳動脈末梢部動脈瘤の1例

著者: 浦西龍之介 ,   落合慈之 ,   手島俊彦 ,   永井政勝

ページ範囲:P.1035 - P.1038

I.はじめに
 後下小脳動脈末梢部動脈瘤は、全脳動脈瘤中のおよそ0.5-1.0%を占める比較的まれな動脈瘤である4).最近はその報告例も散見されるが6,8,13,17),第4脳室内に発生したという報告は少ない.今回われわれは,脳室内出血にて発症した,後下小脳動脈の脈絡叢動脈に生じた動脈瘤の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.

Extramedullaryに進展した頭蓋内Gliomaの1例

著者: 篠田純 ,   宮原保之 ,   小山英樹

ページ範囲:P.1039 - P.1044

I.はじめに
 Gliomaをはじめとする神経上皮性腫瘍は,一般に脳脊髄実質内を浸潤性に進展するが,頭蓋内においてgliomaが髄外に進展し腫瘤を形成することは,極めて稀とされている11).今回われわれは,髄外に進展して硬膜下に腫瘤を形成し,硬膜内髄外腫瘍に類似した神経放射線学的所見を示した39歳女性の頭蓋内gliomaの1例を経験したので,報告する.

くも膜下出血で発症した上部頸髄硬膜動静脈瘻(spinal dural AVF)

著者: 池田宏也 ,   藤本康裕 ,   小山隆 ,   藤本康倫

ページ範囲:P.1045 - P.1048

I.はじめに
 最近国内脳神経外科領域において脊髄動静脈奇形(AVM)に遭遇する機会が増加して来た.これに伴い国内外のこの疾患に対する臨床的研究報告の数も増して来た.従来DiChiroら3,4)の分類したsingle coil vesselAVMは実はdural AVMが大半で,唐澤ら7,8)や宮本ら9)の分類ではradiculomeningeal AVM(AV Fistel)に分けられている.
 脊髄のdural AVMはarteriovenous fistula(AVF)とも呼ばれ呼称に統一はない.一般にspinal dural AVFはcongestive venous hypertensionによるmyelopathyが症状発現に関与すると考えられる.最近私共はくも膜下出血(SAH)にて来院,その原因がhigh cervical spin—al AVMと診断された症例に対し外科的手術を施行した.手術の結果dural typeのAVFであり,出血源は硬膜内varix部のblebであった.

左前頭葉腫瘍で生じた超皮質性感覚失語

著者: 田中賢 ,   前島伸一郎 ,   中井三量 ,   尾崎文教 ,   板倉徹 ,   駒井則彦 ,   栗山剛

ページ範囲:P.1049 - P.1052

I.はじめに
 一般に,左前頭葉損傷では,運動性失語に代表される非流暢型の失語症が出現する6,10,11).すなわち,発話量に乏しく,構音の歪みや韻律の障害,失文法,喚語障害,発話時の努力を特徴とするBroca失語や,有用な自発話が減少しているが,復唱は保たれている超皮質性運動失語などがその代表的なタイプである.一方,左前頭葉損傷で流暢型の失語症を認めたという報告も稀にみられるが4,9),詳細は明らかではない.今回,われわれは左前頭葉の転移性脳腫瘍によって超皮質性感覚失語を呈した1例を報告し,若干の考察を加える.

髄膜腫に多発性海綿状血管腫が合併した1症例

著者: 宮本貴史 ,   入江富美子 ,   浮田透 ,   三宅裕治 ,   黒岩敏彦 ,   長澤史朗 ,   太田富雄

ページ範囲:P.1053 - P.1056

I.はじめに
 海綿状血管腫は中枢神経系血管奇形の5-13%を占め,このうち2.5-13%が多発性とされている11).今回われわれは,髄膜腫の術後にMRIにて多発性海綿状血管腫を認め,経過観察中に多発性に出血した症例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.

血管奇形を伴った小脳橋角部脂肪腫の1例

著者: 古賀壽男 ,   阿部雅光 ,   田渕和雄

ページ範囲:P.1057 - P.1061

I.はじめに
 小脳橋角部の脂肪腫は比較的稀であるが,われわれは最近,隣接動脈の奇形を伴った小脳橋角部脂肪腫の1例を経験した.本症例では脂肪腫内を走行する脳神経や血管がMRI上描出されるなど画像上も興味ある所見を得たので若干の文献的考察を加えて報告する.

第一肋骨奇形による胸郭出口症候群の1例—症例報告と文献的考察

著者: 橋本浩 ,   二階堂雄次 ,   黒川紳一郎 ,   宮本和典 ,   榊寿右

ページ範囲:P.1063 - P.1066

I.はじめに
 胸郭出口症候群Thoracic outlet syndrome(以下TOS)の原因としては頸肋,前斜角筋によるものが一般的であり,第一肋骨の異常によるものは十分に知られていない3,5,8,11).最近われわれは,特異な第一肋骨奇形が原因でTOSを呈した症例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

くも膜下出血の7年後に延髄圧迫症状を呈した椎骨解離性巨大動脈瘤の1例

著者: 土肥謙二 ,   久保田勝 ,   浜田秀雄 ,   桑原健次 ,   西島洋司 ,   櫛橋民生 ,   松本清

ページ範囲:P.1067 - P.1070

I.はじめに
 頭蓋内解離性脳動脈瘤は約83%が椎骨脳底動脈系に発生し13),臨床像では内頸動脈系と比較してクモ膜下出血(SAH)で発症する症例が虚血病変例より多いとされている.また,再出血については嚢状動脈瘤より発症早期に起こりやすく,さらに再出血後の予後も不良であり外科的治療が必要と考えられている.しかし,直達手術(Trapping, Proximal Occlusionなど)3,7,12,14)や血管内手術川など治療法の選択も術後の合併症の問題もあり,未だ確立されていない3,6,12)
 今回われわれは初回出血から7年後,巨大動脈瘤に発展し延髄外側部の圧迫症状を呈した極めて稀な症例を経験した.本症例のように再出血を免れ長期にわたり自然経過を観察した報告は少なく,その臨床経過について若干の文献的考察を加え報告する.

先天性脳動脈瘤との鑑別が困難であった外傷性前大脳動脈瘤の1例

著者: 徳野達也 ,   伴貞彦 ,   新宮正 ,   山本豊城

ページ範囲:P.1073 - P.1076

I.はじめに
 外傷に起因する外傷性脳動脈瘤は全脳動脈瘤の0.5—2%と2,3,15),比較的まれではあるが,一度破裂すると非常に予後不良であり2,3),早期に発見し適切なる処置を施すことが心要である4,12).しかし,その診断はしばしば困難で,外傷後一定期間を経てから動脈瘤の破裂によりはじめて発見されることが多く,破裂前に診断されることは少ない.今回,われわれは受傷直後より脳内に大きな血腫を形成し,先天性動脈瘤との鑑別が困難であった前大脳動脈末梢部の外傷性動脈瘤の症例を経験したのでその診断および病因を中心に文献的考察を加えて報告する.

頭蓋外椎骨動脈解離の1例

著者: 石川朗宏 ,   金沢泰久 ,   日笠親績 ,   藤田勝三 ,   玉木紀彦

ページ範囲:P.1077 - P.1080

I.はじめに
 脳血管撮影技術の進歩とともに動脈解離が正確に診断されるようになり,本疾患は若年者の脳血管障害の原因として注目されるようになった.しかし,その自然歴については不明な点が多く,治療法も一定していない.われわれは後頭蓋窩の虚血発作を繰り返し,脳血管撮影で自然寛解を示した頭蓋外椎骨動脈解離の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

術中圧縮綿から飛散した綿繊維により発生した異物性肉芽腫の1例

著者: 中山貴裕 ,   嶋崎勝典 ,   小野純一 ,   大里克信 ,   山浦晶

ページ範囲:P.1081 - P.1084

I.はじめに
 術後残存した手術材料の圧縮綿が原因で形成された肉芽腫はこれまでいくつか報告されている.しかしそれらの報告はすべて圧縮綿をsheetのまま術野に残してきたものばかりである.われわれは手術中に術野からの出血に対応するため圧縮綿が急に多量に必要になった.そして圧縮綿を水中で充分洗浄せずに使用し,また,圧縮綿の縁でcoagulatorを使用した.それらが原因で術野に残存したと思われる細かい綿繊維がもとになり肉芽腫が形成された稀な1例を経験したので報告する.

視床血管芽腫の1例

著者: 谷口栄治 ,   児玉安紀 ,   堀田卓宏 ,   勇木清 ,   飯田幸治 ,   橋詰顕 ,   片山正一 ,   魚住徹

ページ範囲:P.1085 - P.1089

I.はじめに
 頭蓋内に見られる血管芽腫はそのほとんどが小脳に発生し,時に延髄や脊髄にも見られる.しかしテント上に発生する血管芽腫の報告は比較的稀で,文献上渉猟し得た限りでは現在まで80例の報告があるのみである,またその中で視床に発生したものは80例中1例と特に少ない.今回われわれは視床に発生したテント上血管芽腫の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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