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医学教育に王道なし
著者: 石井鐐二1
所属機関: 1川崎医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.101 - P.102
文献購入ページに移動この背景には,以下のような面が見逃せない.基礎医学が爆発的に進歩したために,その基礎医学の先端的な知識を平均的な医師が吸収することは至難の技であり,余程の努力が必要である.臨床医学にも同じことが言える.そしてその情報量もその急速な進歩と共に増えている.今は最も新しい知識とされることも,数年後には古いものとなるであろうから,この現象は今後とも一層激しいものになると思われる.当然のことながら,このような医学・医療の情報量の激増は医学教育にも影響が及ぶ.教えることが益々厖大なものとなり医学生は四昔八苦しているにちがいない.学生に無理やり詰め込んでも憶えているのはその時だけで,試験が終われば全て吐き出してしまうであろう.樹木が秋になると一斉にその葉を落とすように.しかし,一番大切なのは,樹木の根,幹,太い枝なのである.それらを育てることが大切なのである.各専門領域のあまり細かな知識を教えるのではなく,全ての学生が習得すべき基本的な事項を精選して教え,先端的,高度な内容については学生の理解力を考えて取り上げるという配慮が必要であろう.多すぎる情報量を減らし負担を少なくするよう講義時間を減らすことも一法である.受け身に学ぶことよりも,問題を深くとらえ探求心を持って追求する態度を養成するために,実習時間を増やすことのほうが数倍も有効であろう.
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