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研究
グリオーマにおけるp53蛋白過剰発現について—ELISAによる検討
著者: 菊池哲郎12
所属機関: 1 2東京慈恵会医科大学脳神経外科 3
ページ範囲:P.125 - P.129
文献購入ページに移動悪性グリオーマの染色体レベルにおける異常として9番,10番,17番,22番などの欠損が知られており3,13,14),特に17番短腕には腫瘍抑制遺伝子のひとつであるp53が乗っている17).野生型p53は腫瘍増殖に対し抑制効果を持つが,変異をおこすとその作用を失い,腫瘍の増殖が増すことが知られている.このようなp53遺伝子の異常,特に点突然変異は各種悪性腫瘍において認められており23),脳腫瘍もその例外ではなく,悪性星細胞腫においてはその30から40%においてp53の点突然変異が見つかっている8,10,18).この変異型p53の腫瘍発育における意義の全貌は明らかではないが,グリオーマに関しては,良性から悪性に変化していく過程,すなわちnalignant transformationにおいて重要な役割を担ってのるのではないかと考えられている26).
野生型p53蛋白の半減期は約20分と極めて短い11,24)が,viral proteinとの結合やp53遺伝子自体の点突然変異,部分欠失などによりp53蛋白は安定化されることが知られている12,22).このため,一般に抗p53抗体を用いた免疫染色では純粋な野生型p53蛋白は陰性となるが,変異型p53蛋白または他の蛋自と結合し安定化された野生型p53蛋白,すなわち,過剰発現しているp53蛋白は同定することができる.レベルにおける変異との相関関係はすでに報告2,4,6,7,19,25)されているが,免疫染色ではしばしばその特異性ならびこ染色性が問題となり,陽性陰性の判断の困難な場合が少なくない.
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