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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科22巻4号

1994年04月発行

文献概要

研究

培養株化神経細胞の膜電位と興奮性インパルスに及ぼすカルシウム拮抗剤(Nilvadipine)の影響

著者: 山崎俊樹1 秋山恭彦1 川原理子1 長尾聖一1 森竹浩三1 榎本浩一2 前野巍2

所属機関: 1島根医科大学脳神経外科 2島根医科大学第2生理学教室

ページ範囲:P.327 - P.331

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I.はじめに
 中枢神経系組織の中で種々の情報を伝達して生体機能の統合をはかるという神経系本来の働きは,ニューロンとその相互連絡により形成される回路網をめぐる神経インパルスの作用により営まれている.近年,神経系の興奮波を電気現象として記録できる実験システムの技術的進歩によりニューロンの働きは興奮の伝導あるいは伝達であることが電気生理学的に明らかにされてきた6).とくに,単一の神経細胞に刺入できる微小電極の開発により細胞膜電位の計測が可能となったため,神経インパルスの伝導に際しみられる一連の電気活動がより正確に観察されるようになった4).ニューロンにおける電気活動のメカニズムに関する報告をみると,神経細胞がインパルスを伝導する際,神経細胞膜のイオンチャンネルを介して極めて短時間(数ミリ秒)にNa,K,Ca2+などのカチオンの動きとして細胞膜電位の変化が生じることが示されている6)
 神経細胞における主要な機能活動である細胞膜の興奮と伝達物質の放出はいずれも細胞内カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)と密接な関連を有して調節を受けている.従って,神経細胞における細胞膜電流,膜電位あるいは[Ca2+]iの動態を知ることはその機能や役割を解明するうえで重要な課題である.しかし,生体内の神経細胞の性質は均一性に乏しく,しかもそれらが互いに他の神経細胞と連絡(シナプス結合)し合った状態で神経系は複雑な回路網を形成して機能している.そのため,個々の神経細胞について電気的な活動を解析することは不可能に近い.一方,株化細胞は単一の細胞を起源として遺伝的に均一な細胞集団である.従って,均一性に富む株化神経細胞を用いることによりその膜電位,膜電流および[Ca2+]iなどの測定が可能となり,神経細胞の電気現象を詳細に検討できると考えられる.
 カルシウム拮抗剤は細胞膜に存在する膜電位依存性カルシウムチャンネル(slow calcium channel)を介するカルシウム電流(slow inward current)を選択的に,かつ用量依存的に抑制する薬剤である−また,受容体活性化膜電位非依存性カルシウムチャンネルに対しても部分的に抑制作用を有する一方で,受動的な細胞内へのカルシウムイオンの流入(Ca2+influx)に対しては抑制効果を示さないことが報告されている1).カルシウム拮抗剤は基本化学構造の相異と作用機序により細分類され,臨床的にもその作用機序に基づいて降圧剤として用いられている.
 今回,われわれはdihydropyridine系カルシウム拮抗剤に分類されるnimvad童pineが神経細胞の膜電位と興奮性電気活動に如何なる影響を及ぼすかを株化神経細胞を用いて検討し,新たな知見を得たので報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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