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コメと医療と規制緩和
著者: 矢田賢三1
所属機関: 1北里大学脳神経外科
ページ範囲:P.401 - P.402
文献購入ページに移動 天明の大飢饉以来のコメの大凶作によって,コメ屋の店頭からコメ,特に国産米の姿が消えたということで,日本中がパニックに陥っている.1940年頃に作られた食糧管理法という法律のもと,コメの生産と消費は完全な統制経済のもとに置かれて50年の歴史を歩んできた.当初は不足する主食が国民全てに平等にかつ適正な価格で配分されるようにとの思想に基づいたものであり,それなりの必要性と効用があったことは確かである.食糧が絶対的に不足していた時代には,味は悪くとも,多収穫で冷害に強い米が奨励され,味の良い悪いに関係無く一定の価格で売買されていた.当然の帰結として,生産者は品質よりも収穫量に重点を置いて,多量のコメを生産した.まずいコメを食べさせられた国民の間には,食生活の変化とコメ離れを招いてしまい,コメの生産量の増加と相俟って,余剰米を生むようになった.いわゆる逆鞘と管理経費の増大に悩んだ政府は,統制価格をランクづけすることなどによる良質米の生産奨励と,減反政策でこれに対応してきた.その結果が今回のコメ騒動である.コメ騒動が起こってからも,やれインディカ米その他の輸入米をブレンドして販売せよの,国産米の価格の上限がどうのと,いわばすでに“死に体”となった食糧管理法を振りかざすという醜態を演じている.私にしてみれば,食糧が絶対的に不足しているわけでもない今日,個人個人の価値観に従って,自分の可処分所得のどのくらいの割合をどのランクの米に使うかを決めれば良いことで,食べる種類や値段を“お上”に指示されなければならない時代ではないと思うのだが.
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