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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科22巻7号

1994年07月発行

雑誌目次

握手をするということ

著者: 河本圭司

ページ範囲:P.607 - P.608

 握手をするということは,出会い,ビジネス,別れなどの時に用いられる挨拶の1つである.特に欧米では握手は日常的な挨拶であるが,日本でも初対面では少ないが,よくみられるようになってきた.
 他人の手を握るということは,潔癖感の強い日本人にはなんとなく異和感があると思われるが,慣れてくるとさして苦痛でもなくなる.むしろ外国で日本人たちが何度も頭をペコペコ下げているのをみると,少し滑稽に見えてくる.

総説

急性脳腫脹,脳浮腫と脳幹機能

著者: 長尾省吾

ページ範囲:P.609 - P.616

I.はじめに
 脳浮腫あるいは脳腫脹は脳神経外科領域の疾患に合併し,患者の転帰を左右する重要な病態であることから,その発現機序の解明および治療について多くの研究がなされてきた.脳浮腫あるいは脳腫脹で頭蓋内圧が亢進すると,二次的に天幕切痕ヘルニアが発生し,脳幹機能が障害されることはよく知られているが,逆にこの脳幹機能障害がこれらの病態にどのような影響を及ぼすかあまり注意は向けられていない.
 急性脳腫脹は臨床上用いられる言葉で,典型的には,急性硬膜下血腫術中などにみられる分秒単位の脳の腫脹,膨隆であって,脳血管緊張の低下を基礎とした脳血管床の増大がその本態とされている.脳血管緊張の低下については,1960年代より頭蓋内圧亢進による脳虚血,ハイポキシアによる脳CO2貯留,乳酸アシドーシスが主因とする代謝性因子説と視床下部を始めとする間脳脳幹に存在する脳血管緊張調節中枢の破綻が原因とする神経性因子説が論じられてきた.

研究

手根管症候群61例の検討

著者: 山上達人 ,   東健一郎 ,   半田肇 ,   蓑内孝一郎 ,   藤井本晴 ,   西原毅 ,   梶龍児

ページ範囲:P.617 - P.620

I.はじめに
 手根管症候群carpal tunnel syndrome(以下CTS)は,絞扼性神経障害entrapment neuropathyのなかで最も頻繁に遭遇する疾患で,適切な診断と手術により良好な治療成績が得られるので,ここに報告する.

髄膜腫のStereotactic Radiosurgery

著者: 木田義久 ,   小林達也 ,   田中孝幸 ,   雄山博文 ,   岩越孝恭

ページ範囲:P.621 - P.626

I.はじめに
 髄膜腫は頭蓋内良性腫瘍の代表で,もっとも頻度の高いものである.その主体となる治療法は手術的摘出にある.しかしながら,しばしば手術的に到達が困難な部位に発育し,あるいは脳幹などのeloquent areaと隣接することもまれではない.また手術後なお残存する腫瘍がみられたり,再発も生ずることも多く,こうした症例の治療法についてはなお論議の多いところである.一般に髄膜腫は放射線治療に対する感受性が低いといわれているが,いくつかの臨床報告では,放射線治療が髄膜腫の再発を防止する効果があると述べている2,3,13,15)
 Stereotactic radiosurgeryは,当初脳動静脈奇形の治療で大きな成果をおさめたが,良性の脳腫瘍,特に聴神経腫瘍に対する有効性が多く報告されている9),髄膜腫に対しても,本治療法が試みられつつあるが6,7,10),その治療成績はいまだ確立されていない.私達は1991年5月にガンマナイフを導入し,各種頭蓋内病変600例以上の治療を完了したが,今回は髄膜腫40例について,その治療結果を報告する.

脳神経外科における術前貯血式自己血輸血

著者: 横山俊一 ,   川原隆 ,   森山一洋 ,   門田紘輝 ,   朝倉哲彦 ,   新名主宏一

ページ範囲:P.627 - P.630

I.はじめに
 外科手術において輸血は欠かせないものであるが,従来行われてきた同種血輸血には一定の確率で副作用の危険が必ず伴う.このような副作用を防止する手段として自己血輸血が行われる傾向にあるが,脳神経外科領域における自己血輸血に関する報告はまだ少ない。この理由として,脳神経外科手術は緊急手術が多く術前貯血式自己血輸血の導入が困難なことや自己血輸血に対する意識の問題などがあげられよう.われわれは1992年6月から貯血式自己血輸血を導入しており,今回その結果の検討を行った.さらにMSBOS(maximum surgical blood order schedule:最大手術血液準備量)設定のため当科における手術例の術中出血量,輸血量の検討も行い,術前貯血量の設定についても検討したので併せて報告する.

症例

術後Cisplatin-etoposide併用療法が有効であった大脳基底核部Embryonal Carcinomaの1例

著者: 笹岡保典 ,   鎌田喜太郎 ,   中上由美子 ,   藤本京利 ,   別所啓伸 ,   角田茂 ,   榊寿右

ページ範囲:P.631 - P.636

I.はじめに
 頭蓋内原発のgerm cell tumorは,そのほとんどが松果体部や鞍上部に発生し,組織型はgerminomaが多いとされている2,3).今回われわれは,大脳基底核部に発生し,血中および髄液中ともにHCG(human chorionic gonadotropin)とAFP(alpha-fetoprotein)の高値を認め,組織学的にもembryonal carcinomaと診断し,術後cisplatinとetoposideの併用化学療法(PE療法)にて良好な経過が得られた症例を経験した.大脳基底核部に発生したembryonal carcinomaの報告はきわめて少なく1,8,13,15,16),また術後のPE療法についても文献的考察を加え報告する.

Neurofibromatosisに伴った多発性頭蓋外椎骨動脈瘤の1例

著者: 大方直樹 ,   伊古田俊夫 ,   田代隆 ,   岡本賢三

ページ範囲:P.637 - P.641

I.はじめに
 Neurofibromatosisに合併する頭蓋外椎骨動脈瘤は稀な疾患であるが2,3,5-11),われわれはその多発例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

上矢状洞近傍の大脳半球円蓋部に発生した硬膜動静脈奇形の1例

著者: 小林英一 ,   若松慶太 ,   富永紳介

ページ範囲:P.643 - P.648

I.はじめに
 硬膜動静脈奇形(DAVM)は横,S状静脈洞部に多発し過半数を占める20,21)とされ,大脳,小脳半球を覆う硬膜にDAVMが発生することは極めて稀で,そのほとんどは後頭蓋窩ないしは頭蓋底部に発生するといわれている.上矢状洞近傍の大脳半球円蓋部に発生した特発生DAVMの報告は文献上散見されるのみで,その部位的特異性は未だ明らかでなく,今回われわれの経験した1例を含め文献的考察を加えたのでここに結告する.

Persistent Primitive Trigeminal ArteryとMetopismを合併した破裂脳動脈瘤の1例

著者: 中山正基 ,   新納正毅 ,   平原一穂 ,   川崎卓郎 ,   門田紘輝 ,   朝倉哲彦

ページ範囲:P.651 - P.655

I.はじめに
 胎生期遺残動脈の一つであるpersistent primitive tri—geminal artery(以下PTAと略す)は脳血管撮影上,0.1—0.3%に見出だされるとされ12),またその約14%に脳動脈瘤を合併すると言われている2,6).また成人にmetopic sutureが遺残した状態は,metopismと呼ばれているが,比較的稀である3,5).今回私達は,中大脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血で発症し,PTAとmetopismを合併していた非常に稀な1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

上位頸椎Discitisの1例

著者: 伊東山洋一 ,   北野郁夫 ,   生塩之敬

ページ範囲:P.657 - P.660

I.はじめに
 脊椎感染症は腰椎,胸椎などの下部脊椎に多く見られ,上部頸椎に発症することは稀である.以前われわれは四肢麻痺にて発症した上部頸椎感染症の1例を報告したが,MRIが早期診断に有用であった硬膜外膿瘍を伴うdiscitisの1例を新たに経験した.文献的考察を加え報告を行う.

Bromocriptineにて治療中,脳室内出血を生じた下垂体腺腫の1例

著者: 遠藤賢 ,   若井晋 ,   伊能睿 ,   永井政勝

ページ範囲:P.661 - P.664

I.はじめに
 下垂体卒中では,出血が腫瘍外へ及んだ場合クモ膜下出血の型をとるものが多く6,18),脳室内へ穿破するものは極めて稀とされている4,7,9,11,13).われわれは,Bro—mocriptine内服治療中のプロラクチン産生腫瘍からの出血が第三脳室へ穿破した1症例を経験したので,下垂体卒中発症前後のMRIより,下垂体卒中の発症機序と脳室内へ穿破した要因を文献的考察を加えて報告する.

Venous Angiomaと他の脳血管奇形との合併症例

著者: 田中柳水 ,   宮坂佳男 ,   矢田賢三 ,   柳下三郎

ページ範囲:P.665 - P.669

I.はじめに
 脳血管奇形(cerebrovascular malformation:CVM)は,組織学的に,arteriovenous malformation(AVM),cavernous angioma, venous angiomaおよびcapillary telangiectasiaの4型に分類されてきた10).しかし,これらの4型のいずれに分.類すべきか困難であったり,同一症例で2つ以上のCVMが隣接して認められたとする報告が散見される1,6-8,11,13).われわれはいわゆるve—nous angiomaと他のCVMの存在が確認された3症例を報告し,同一症例において,venous angiomaと他のCVMが併存する意義および,このような症例の治療法について考察する.

軽微な頸部外傷による椎骨動脈損傷の2例

著者: 村瀬悟 ,   大江直行 ,   野倉宏晃 ,   三輪嘉明 ,   大熊晟夫

ページ範囲:P.671 - P.676

I.はじめに
 外傷性頸部主幹動脈損傷において,頸動脈損傷が穿通性外傷に起因するものが多いのに対し,椎骨脳底動脈損傷は鈍的外傷に起因するものが多い8).また椎骨動脈損傷は非常に軽微な外傷や生理的範囲内での頸部の運動によっても起こり得ることが報告されており注意を要する.今回われわれは,外傷1週間後に発症した右椎骨動脈完全閉塞の1例および頸部のself-manipulationが原因と思われる両側椎骨動脈狭窄の1例を経験したので報告する.

術前診断が困難であった完全血栓性末梢性中大脳動脈瘤の1例

著者: 岡秀宏 ,   倉田彰 ,   宮坂佳男 ,   小林郁夫 ,   大桃丈知 ,   矢田賢三 ,   森井誠二 ,   菅信一

ページ範囲:P.677 - P.680

I.はじめに
 今回,われわれは画像所見において血管腫との鑑別が困難であった完全に血栓化した末梢性中大脳動脈瘤を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

Brachytherapyが有用であった松果体部Germinomaの1例

著者: 東久登 ,   松本健五 ,   芦立久 ,   富田享 ,   古田知久 ,   大本堯史

ページ範囲:P.683 - P.687

I.はじめに
 一般にgerminomaは放射線感受性が高いことから,全脳あるいは局所照射に加えて症例により全脊髄照射が施行され,この放射線療法のみでも高い奏効率が報告されている20).しかし長期生存例の増加とともに,放射線照射による晩期障害が問題となっており2,19,21,24),その診断と治療については特に患者のuseful lifeの向上という観点から,種々の検討が行われつつある.今回われわれはMRI誘導定位脳手術装置を用い,生検術による組織診断確定の後に放射線組織内照射(brachytherapy)を施行し,良好な結果を得たgerminomaの1例を経験したので,その診断,治療を中心に若干の文献的考察を加え報告する.

脳室穿破を来した脳膿瘍の1治験例—抗生物質による脳室灌流療法の有用性について

著者: 佐藤光夫 ,   及川友好 ,   佐々木達也 ,   児玉南海雄

ページ範囲:P.689 - P.693

I.はじめに
 脳膿瘍は抗生物質の普及によりその発生率が下がり,最近ではCT scanの導人により早期に診断が可能となり,その治療成績は飛躍的に向上している1,9).しかし,脳室穿破を来した脳膿瘍の予後は依然不良であり,治癒例の報告は散見されるに過ぎない3,4)
 今回,われわれは左側頭葉の脳膿瘍が左側脳室に穿破し重症脳室炎を呈した症例に対し,抗生物質による脳室灌流療法を試み,良好な結果を得たので文献的考察を加え報告する.

読者からの手紙

フルナリジン療法の特長とその向上策

著者: 藤田稠清

ページ範囲:P.694 - P.694

 本誌掲載論文「くも膜下出血後の症候性脳血管攣縮に対する大量ステロイドの使用経験」(脳外22:17-22,1994)の考察に,baseに使用されたフルナリジン療法が“血腫除去に消極的であったためか,43.8%に症状の出現をみた”と書かれているので,この点などについて述べたい.ここに言うようなVS期における神経症状の悪化,特に意識の低下はフルナリジン療法では重症例では程度の差はあれ必ず見られるものであり,それが2,3週で徐々に回復することを報告1)してある.フルナリジンの主作用は脳細胞の保護であるため,このような現象が起こると私は解釈している.Table 2の21例中Spasm+Ⅲの5例でみると,それらにステロイドは効果が少なかったにもかかわらず,outcome P(poor)は1例(Dは再破裂)で他はG2例,F1例であったことはフルナリジンが大きな効果を発揮したためと考える.
 この効果を更に向上させるには,低分子デキストランではなくアルブミンによるHV療法を加えること,脳槽凝血除去を積極的に行い除去しきれぬ場合は脳槽ドレナージをすること,経鼻胃チューブで入れたフルナリジンが腸へ行かぬ内に体外へ排出されないようにする2)にと,脱水にならぬよう最大の注意を払う(私は水の出納に加え,体重測定を日に1回行う3))こと,フルナリジンの腸吸収が良くなるようウルソ(胆汁酸)その他を使うこと3),フルナリジンのみでなくFET療法4,5)を行うことである.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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