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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科22巻8号

1994年08月発行

雑誌目次

プレゼンテーションの技術

著者: 角家暁

ページ範囲:P.703 - P.704

 このところ様々な会合などで東京へ赴く頻度が多くなったが,時に予定していたスケジュールが早く終わり時間に余裕が出来ることがある.このような場合読者はどのように過ごされているのだろうか.私の周囲に大学時代から映画評論が趣味でローカルラジオのトーク番組にも時折出演している友人がいるが,彼は必ず映画館へ直行すると言っている.もっとも彼は映画は旅先でしか見ない,いや地元では時間が無くて見れないそうである.筆者はこれまで金沢では観賞できない美術展やコンサートを探し出して東京での一刻を過ごすようにしていたが,最近は日程がたて込み,限られた時間の余裕しか無いことが多く,ワンパターンの行動で情けないと思いながらも自然に足が秋葉原に向いている.ところでここを時折訪れている人は気が付かれていると思うが,一昔前はオーディオ,家電製品に集まっていた人の群が,最近はコンピューターに移り,Laoxのショッピングバッグをぶら下げた男性が街頭でよく目につくようになった.Laoxとはここ二,三年来秋葉原に急激に増えたパソコンショップを代表する大型店で,コンピューター関係の品物なら解説書から,本体,付属品まですべて揃っており,私も秋葉原ではまず覗いてみる店である.
 最近学会,研究会に出席して気がつくことは,CT,MRI,XPなどの画像に組織像,時には手術写真も取り入れ,趣向を凝らしたカラフルなスライドが多く見られるようになって来たことである.これはパソコンが普及し,使い易いソフトが市場に出回って来たことによる.それを裏付けるように,私どものところでも教室員の机の上にはまず例外無くパソコンがあり,大学の出版局からパソコンについての多くの情報が流され,使い方の講習会が開かれている.

解剖を中心とした脳神経手術手技

椎骨,脳底動脈正中部動脈瘤に対するTranscondylar ApproachとRetroauricular Transpetrosal Transtentorial Approach

著者: 山本茂 ,   白馬明

ページ範囲:P.705 - P.713

I.はじめに
 椎骨脳底動脈合流部や脳底動脈下半の動脈瘤など後頭蓋窩正中部の動脈瘤は最も到達が難しいもののひとつで,これまでsubtemporal transtentorial approach,late—ral suboccipita approachあるいはtransoral transclival approachでの成功例の報告が散見される.しかし,通常のlateral suboccipital approachでは術野が深く,一般に脳幹部の過度の圧排なしに必要な術野を得ることは困難である.また,transoral transclival approachには術後の髄液瘻や髄膜炎の問題があり,さらに術野は最大でも約15mmの幅で,ことに両側方の視野が得にくくpremature ruptureの際に対処が難しい.subtemporaltranstentorial approachもpremature ruptureなどの際のproximal contorolが難しいと思われる.われわれは,脳幹部の圧排なしに充分な術野を確保し,また親血管の中枢側を確保するため,この部の動脈瘤のうち頸静脈結節jugular tubercleより上位のものにはretroauricu-lar transpetrosal transtentorial approach(Fig.1 A)で,またjugular tubercleより下位のものではtranscondylar approach(Fig.1 B)を用い良好な成績を得ている.
 retroauricular transpetrosal transtentorial approachは,頭蓋底腫瘍,特に斜台髄膜腫の手術のため開発された術式であるが3),従来の方法では到達し難かった脳底動脈本幹basilar trunkや椎骨脳底動脈合流部vertebro-basilar unionの動脈瘤の手術にもきわめて有用である8).本法では,まず錐体骨の切除,すなわち乳様突起を切除しTrautmannの三角を開放する.次に上錐体洞superior petrosal sinusを切断した上で,小脳テントをその遊離縁まで切開する.最後に小脳外側部およびS状洞sigmoid sinusを軽く後方に牽引し,その前方より側方から後頭蓋窩正中領域に侵入するのであるが,以上の操作により,最小限の脳圧排にて広い術野が得られ,併せて多方向からのapproachが可能となる.
 一方,transcondylar approachの概念はSeegerによる記載(dorsolateral approach with resection of theCondylus occipitalis and Tuberculum jugulare)が最初と思われ13),その後も同様のアプローチの報告が続き,その有用性が指摘されている1,7,10,12,15−17)すなわち通常の一側後頭下開頭により脳幹部の前面に到達しようとすると,大後頭孔外側部の骨,後頭穎occipitan condyleの後内側部分,そしてjugular tubercleが術野を遮ることになる.そこで,これらを切除した上で,より外側下方よりアプローチすると脳幹部の最小限の圧排にて大後頭孔前部から斜台下半にかけての広い術野を得ることが出来る.そして本法では対側の椎骨動脈の確保も可能であり,上方では椎骨脳底動脈合流部を越えるレベルまでの広い術野が得られる.

研究

Pineal Cyst—その画像診断と治療方針について

著者: 関谷徹治 ,   鈴木重晴 ,   岩淵隆

ページ範囲:P.715 - P.721

I.はじめに
 松果体内の嚢胞性変化であるpineal cyst(以下,PCと略す)は,剖検例においては25-40%程度の高頻度に認められるが4,7,27),CTによってPCが診断されることは稀であった14,26,33).しかし,MRIの出現によって,明瞭な矢状断面像が得られるようになってから,PCが偶然発見される機会が増えた3,5,13,14,23,29)
 ほとんどのPCは治療を要しないものであるが,時に松果体部に発生する他の病変との鑑別が問題になることがある.たとえば,松果体部には,放射線照射が有効な腫瘍が好発するが,PCを腫瘍性変化と誤認して放射線照射を行ったという報告もある11).またPCは,頭痛に対するスクリーニングの結果,偶然発見されることが多い6,26).このような時,その頭痛の原因がPCにあるかどうかを見極めることは,無用な手術侵襲を避ける意味から重要なことである.

びまん性脳損傷後遺症の臨床的検討—いわゆる狭義の頭部外傷後遺症とのつながり

著者: 益澤秀明 ,   徳山豊 ,   久保俊朗 ,   金澤至 ,   神谷博 ,   佐藤仁一

ページ範囲:P.723 - P.730

I.はじめに
 重症頭部外傷ことにびまん性脳損傷を受けた患者を長期間観察し,家族や介護者の訴えに耳を傾けるうちに,それぞれ軽重の差こそあれ極めて似通った後遺症状を残していることに気付いた.それは重症では明白であるが軽症では訴えが少なく見過ごされやすい9)ものであった.また,幾つかの症状はこれまで“いわゆる狭義の頭部外傷後遺症”とされていた症状群5,11,12)に含まれているものであった.そこで後遺症状を呈した症例を集め,われわれの分類を提案するとともに,狭義の頭部外傷後遺症との異同についても論ずる.

Medos圧可変式バルブシャントシステムの使用経験

著者: 泉原昭文 ,   織田哲至 ,   鶴谷徹 ,   梶原浩司

ページ範囲:P.731 - P.735

I.はじめに
 経皮的に設定圧の変更が可能であるSophyシステムの臨床的有用性に関する報告が見られる一方1,3-6,8,9),圧可変式バルブ自体の構造上の欠点5,6,8-11,13)や微妙な圧変化を必要とする水頭症には対応できないなどの問題点2)が最近報告されている.Medos圧可変式バルブシャントシステムは,経皮的に18段階の設定圧の変更が可能である.今回われわれは種々の病態の水頭症およびクモ膜嚢胞に対して使用する機会があったので,その有用性と問題点について報告する.

MEG-MRI統合システムによる中心溝同定

著者: 川村強 ,   中里信和 ,   関薫 ,   清水宏明 ,   藤原悟 ,   吉本高志

ページ範囲:P.737 - P.741

I.はじめに
 体性感覚誘発電位somatosensory evoked potential(SEP)における短潜時成分は一次知覚野に信号源を有するとされ1,8),開頭術の際には脳表記録により中心溝の同定に利用されている2,6).最近,脳磁図magnetoence—phalography(MEG)により頭蓋外測定で非侵襲的に中心溝を同定する試みがなされるようになった4,10))が,従来の方法ではチャンネル数が少ないため測定に時間を要した.今回われわれは,ヘルメット型脳磁計を用い,体性感覚誘発反応の頭皮上全体の磁界分布を同時計測して信号源推定を行い,これをMR画像上に表示するシステムを開発したので報告する.

Dysembryoplastic Neuroepithelial Tumor(DNT)の画像所見,病理所見の特徴—自験例4例の分析から

著者: 橋詰清隆 ,   田中達也 ,   代田剛 ,   米増祐吉 ,   宮本昌枝 ,   三代川斉之 ,   若井周治 ,   福島裕

ページ範囲:P.743 - P.748

I.はじめに
 若年者の難治性てんかんで,CT上cystic cystic lesionを思わせるlow density areaを認めた症例のうち,特徴的な病理組織学的所見を呈するものを,Daumas-Duportら(1988年)は,dysembryoplastic neuroepithelial tumor(DNT)と命名した1).以後,同様の症例の報告が散見される.われわれも最近,DNTと思われる4例を経験し,その臨床像及び病理学的所見について検討したので報告する.

頭部回転に伴う環椎軸椎関節部における椎骨動脈の変化—脳血管撮影による検討

著者: 高橋功 ,   金子貞男 ,   浅岡克行 ,   原田達男

ページ範囲:P.749 - P.753

I.はじめに
 椎骨脳底動脈領域の虚血症状を来す原因の多くは,動脈硬化性病変による血管の狭窄や閉塞などである.しかし,頻度は少ないが,椎骨動脈の解剖学的特徴から,頭蓋外で,様々な原因によって,機械的な圧迫を受けて椎骨脳底動脈循環不全を起こすことが知られている14)
 椎骨動脈各部の圧迫の原因として,first segmentでは,長頸筋,前斜角筋,頸部交感神経,甲状頸動脈幹,fascial bandなどによる圧迫,second segmentでは,頸部脊椎症の骨棘による圧迫,third-fourth segmentでは頭部回転に伴う環椎軸椎関節(atlantoaxial joint:AAJ)部での生理的な圧迫,環椎軸椎脱臼による圧迫などが報告されている9).この中で,頭部回転によって,AAJ部で,反対側の椎骨動脈が狭窄あるいは閉塞して,椎骨脳底動脈領域の虚血症状が出現することが知られており,bow hunter's strokeと呼ばれている27).この頭部回転に伴うAAJ部の椎骨動脈の狭窄や閉塞はcadaversでの実験的検討から,日常生活における頭部運動でも容易に起こりうる生理的現象であると考えられている4).実祭,日常生活内の通常の頭部運動よって,AAJ部で椎骨動脈が狭窄あるいは閉塞し,脳虚血が起こるかどうかは,極めて重要な問題と考えられ,この点に関して多くの実験的,臨床的報告が見られる1-5,7-29,31,32)

症例

Plurihormonal Adenomaの1例

著者: 畑山徹 ,   岩渕隆 ,   石井正三 ,   尾田宣仁 ,   石井敦子

ページ範囲:P.755 - P.760

I.はじめに
 2種類以上のホルモンを産生するplurihormonal ade—nomaは,外科的に切除されたpituitary adenomaの約14%を占めるとされる6).その中では,acromegalyにおけるプロラクチン(PRL)産生の合併が大部分を占めるが,一方で様々なホルモンの組み合わせも報告されている6,8,16).今回われわれは,臨床的にhyper-prolactin—emiaの症状を呈しながら,成長ホルモン(GH)産生を合併したplurihormonal adenomaを経験したので報告する.

多発性脳動静脈奇形—症例報告

著者: 姉川繁敬 ,   林隆士 ,   鳥越隆一郎 ,   原田克彦 ,   栄俊雅

ページ範囲:P.761 - P.767

I.はじめに
 脳動静脈奇形(AVM)が,頭蓋内に複数存在することは稀であるとされており,症例報告が主であった.一方,大きなseriesにおける出現頻度は画像診断の進歩により次第に多くなってきつつある11,22,24).われわれが最近経験した症例においては,plexiform typeとarte—rio-venous fistula(AVF)の2つの形をとるAVMを脳内4ヵ所に認め,各々の間には介在する脳組織を認めた.この症例に対してstaged operationを施行して,完治せしめたので,若干の文献的考察とともにその臨床経過を報告する.

側頭葉内巨大類上皮腫の1例—特に実質内発生に関して

著者: 小林英一 ,   芹沢徹 ,   三橋広光

ページ範囲:P.769 - P.773

I.はじめに
 類上皮腫の発生部位については,既に数々の報告があるが,その一つとして大脳半球実質内も挙げられている.一般に類上皮腫は炎症作用が強く,周囲組織を溶解,破壊しながら増大することがあり,巨大化したものでは最初の原発巣の特定が困難なことも少なくない.今回われわれの経験した症例も側頭葉内に主座をおくものであったが,同時に小脳橋角部にも交通しており,大脳半球実質内発生に関して一つの示唆を与えたので,若干の文献的考察を交え報告する.

舌下神経鞘腫の1例

著者: 藤田晃司 ,   野崎和彦 ,   永田泉 ,   菊池晴彦

ページ範囲:P.775 - P.779

I.はじめに
 舌下神経鞘腫は稀な良性腫瘍で,舌の萎縮や麻痺に気付かれず長期間放置されることが多いが,近年の画像診断,顕微鏡手術の進歩により治療成績は向上している.今回われわれは,舌下神経管周囲の骨を著明に破壊し頭蓋内外に進展した巨大なdumbbell-shapedの舌下神経鞘腫の1例を経験したので報告する.

特異な画像所見を呈した松果体部奇形腫の1例

著者: 中島進 ,   増岡淳 ,   辻武寿 ,   田淵和雄

ページ範囲:P.781 - P.784

I.はじめに
 頭蓋内奇形腫のMRI所見は,脂肪,骨等の混在により一般に不均一な信号を呈すると言われている2,11).しかし,今回われわれが経験した症例は,当初嚢胞性病変で発症したため,四丘体部のクモ膜嚢胞と診断され,嚢胞開放術が施行された.その後2年7カ月の経過で,奇形腫と判明し,再手術を行った.特に本症例の神経放射線学特徴について,文献的考察を加え報告する.

巨大な皮下腫瘤として発症したMalignant Parasagittal Meningioma—症例報告と文献的考察

著者: 橋本浩 ,   平林秀裕 ,   平松謙一郎 ,   森本哲也 ,   角田茂 ,   榊寿右

ページ範囲:P.785 - P.788

I.はじめに
 Meningiomaはときに皮下腫瘤として発症することがあるが,その大部分はhyperostosisによるhard massでありsoft tissue massとして発症するものは少ない2,10,13).今回われわれは,皮下に巨大なsoft tissue massを形成し,しかも頭蓋骨に肉眼的骨欠損を示さなかったmalg—nant meningiomaを経験したので,文献的考察を加えて報告する.

Radiosurgery後に腫瘍出血を生じた転移性脳腫瘍の1例

著者: 本崎孝彦 ,   伴貞彦 ,   山本豊城 ,   浜崎昌丈

ページ範囲:P.789 - P.793

I.はじめに
 最近,わが国においても脳腫瘍や脳動静脈奇形に対してradiosurgeryが数多く実施されている.脳腫瘍に対しては当初は主に良性腫瘍が治療の対象となっていたが,転移性脳腫瘍に対しての報告2-7)もしだいに増加し,その治療効果も認められつつある.
 しかし,radiosurgeryの合併症については,治療後の脳浮腫の増強による神経症状の増悪や遅発性の放射線壊死による新たな神経症状の出現等が報告2,3)されているが,radiosurgeryに関連した腫瘍出血の報告は見当たらない.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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