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解剖を中心とした脳神経手術手技
椎骨,脳底動脈正中部動脈瘤に対するTranscondylar ApproachとRetroauricular Transpetrosal Transtentorial Approach
著者: 山本茂1 白馬明2
所属機関: 1馬場記念病院脳神経外科 2大阪市立大学脳神経外科
ページ範囲:P.705 - P.713
文献購入ページに移動椎骨脳底動脈合流部や脳底動脈下半の動脈瘤など後頭蓋窩正中部の動脈瘤は最も到達が難しいもののひとつで,これまでsubtemporal transtentorial approach,late—ral suboccipita approachあるいはtransoral transclival approachでの成功例の報告が散見される.しかし,通常のlateral suboccipital approachでは術野が深く,一般に脳幹部の過度の圧排なしに必要な術野を得ることは困難である.また,transoral transclival approachには術後の髄液瘻や髄膜炎の問題があり,さらに術野は最大でも約15mmの幅で,ことに両側方の視野が得にくくpremature ruptureの際に対処が難しい.subtemporaltranstentorial approachもpremature ruptureなどの際のproximal contorolが難しいと思われる.われわれは,脳幹部の圧排なしに充分な術野を確保し,また親血管の中枢側を確保するため,この部の動脈瘤のうち頸静脈結節jugular tubercleより上位のものにはretroauricu-lar transpetrosal transtentorial approach(Fig.1 A)で,またjugular tubercleより下位のものではtranscondylar approach(Fig.1 B)を用い良好な成績を得ている.
retroauricular transpetrosal transtentorial approachは,頭蓋底腫瘍,特に斜台髄膜腫の手術のため開発された術式であるが3),従来の方法では到達し難かった脳底動脈本幹basilar trunkや椎骨脳底動脈合流部vertebro-basilar unionの動脈瘤の手術にもきわめて有用である8).本法では,まず錐体骨の切除,すなわち乳様突起を切除しTrautmannの三角を開放する.次に上錐体洞superior petrosal sinusを切断した上で,小脳テントをその遊離縁まで切開する.最後に小脳外側部およびS状洞sigmoid sinusを軽く後方に牽引し,その前方より側方から後頭蓋窩正中領域に侵入するのであるが,以上の操作により,最小限の脳圧排にて広い術野が得られ,併せて多方向からのapproachが可能となる.
一方,transcondylar approachの概念はSeegerによる記載(dorsolateral approach with resection of theCondylus occipitalis and Tuberculum jugulare)が最初と思われ13),その後も同様のアプローチの報告が続き,その有用性が指摘されている1,7,10,12,15−17)すなわち通常の一側後頭下開頭により脳幹部の前面に到達しようとすると,大後頭孔外側部の骨,後頭穎occipitan condyleの後内側部分,そしてjugular tubercleが術野を遮ることになる.そこで,これらを切除した上で,より外側下方よりアプローチすると脳幹部の最小限の圧排にて大後頭孔前部から斜台下半にかけての広い術野を得ることが出来る.そして本法では対側の椎骨動脈の確保も可能であり,上方では椎骨脳底動脈合流部を越えるレベルまでの広い術野が得られる.
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