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研究
頭蓋内原発悪性リンパ腫(CNS-NHL)21症例の臨床病理学的検討
著者: 新田泰三1 春日千夏1 安本幸正2 屋田修3 工藤純夫4 佐藤潔1
所属機関: 1順天堂大学医学大学部脳神経外科 2松村総合病院脳神経外科 3済生会川口総合病院脳神経外科 4日立総合病院脳神経外科
ページ範囲:P.827 - P.832
文献購入ページに移動悪性リンパ腫は代表的な造血器悪性腫瘍であるが,免疫,遺伝学の急速な進歩と相俟って診断上形態学的分類法から免疫分子生物学的分類法へと移行しつつある.頭蓋内原発悪性リンパ腫(CNS-NHL;central ner—vous-system-non-Hodgkin's lymphoma)はかつては稀な疾患として十分な検索がなされていなかった.しかしNational Cancer Institute(NCI)の統計Surveillance,Epidemiology and End Results(SEER;1973-1984)に依ると1973-1975では人口1000万人当たり2.7人であるが1982-1984では7.5人と急激に増加している3).しかもこれらの統計ば“high-risk patients”つまりAIDS,“never-married man”を除外した数字であることから,免疫不全症の増加に伴った現象と簡単にかたづけることはできない.このCNS-NHLの予後は極めて不良であり外科治療のみでは2カ月以内に死亡する.また80%の症例が放射線感受性を示すも約半数が1年に死亡し,いかなる治療を行っても3年以上生存する症例は5%以下と報告されており,グリオブラストーマに匹敵するかそれ以上の悪性脳腫瘍である6).このCNS-NHLの病態解明ひいては有効な治療の進歩の妨げとなっているのは,1)発生頻度が低いこと,2)大脳深部に局在することが多いため組織診断が困難であること,さらに3)悪性リンパ腫は放射線感受性が高く且つステロイドにより一過性に腫瘍容積が減少することより画像診断のみで治療が行われてきたためである(blind radiation)21,22).しかし近年抗癌剤の進歩によって長期生存例も散見されるようになりCNS-NHLを正確に分類,診断し且つ治療法を確立することが必要であると考えられる.現在本邦においては,CNS-NHLの分類としてはLSG(lymphoma study group)分類が汎用されている19).LSG分類はリンパ腫を構成する細胞群の大きさに基づいたもので極めて簡便である反面,予後との関連性に欠ける.つまりCNS-NHLの殆どが大細胞型(large cell)に分類され,NCIのWF(working formulation)分類に於ける中間分化型に属する大細胞型(DL; diffuse large)と低分化型の免疫芽球タイプ(IBL; immunoblastic)とが混在し予後をみる上で極めて不適当と考えられるからである14).そこで今回私たちはCNS-NHLの自験21例を臨床的に解析するとともに病理学的にWF分類に基づいて分類し予後との相関を検討した.
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