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総説
新WHO脳腫瘍分類の改良点と問題点
著者: 久保田紀彦1
所属機関: 1福井医科大学腦神経外科
ページ範囲:P.97 - P.110
文献購入ページに移動Ⅰ.はじめに
脳腫瘍の組織学的診断の歴史は古いが,今なお診断困難な腫瘍が多数ある.脳腫瘍は,全身の腫瘍のなかでも最も多種類の発生母地を有する腫瘍のひとつであり,これが組織診断を困難にする大きな要因であろう.反対に,脳腫瘍は多種類の腫瘍が発生するからこそ,組織診断の研究において興味が尽きないという側面がある.
1993年に新WHO分類が刊行され28),脳腫瘍の組織分類が一新された.当然のことながら,脳神経外科医が脳腫瘍の論文を作成する際に組織診断の知識を深く知ることは論文の質の高さにつながることである.また,組織診断の知識無しに画像診断はおろか,満足な治療など望むべくもない.脳神経外科医であるからこそ,ひとつの腫瘍の診断や手術を含めた治療,子後をすべて観察できる有利な立場にある.その意味で脳外科医は最も脳腫瘍の組織を良く理解できるはずである.私は教室員に,『自分が手術で採取した組織を見ない者は手術をする資格がない』と,常々言っている.今回,総説を執筆するにあたり,新WHO分類の主な改正点と問題点を拾い上げてみた.
脳腫瘍の組織学的診断の歴史は古いが,今なお診断困難な腫瘍が多数ある.脳腫瘍は,全身の腫瘍のなかでも最も多種類の発生母地を有する腫瘍のひとつであり,これが組織診断を困難にする大きな要因であろう.反対に,脳腫瘍は多種類の腫瘍が発生するからこそ,組織診断の研究において興味が尽きないという側面がある.
1993年に新WHO分類が刊行され28),脳腫瘍の組織分類が一新された.当然のことながら,脳神経外科医が脳腫瘍の論文を作成する際に組織診断の知識を深く知ることは論文の質の高さにつながることである.また,組織診断の知識無しに画像診断はおろか,満足な治療など望むべくもない.脳神経外科医であるからこそ,ひとつの腫瘍の診断や手術を含めた治療,子後をすべて観察できる有利な立場にある.その意味で脳外科医は最も脳腫瘍の組織を良く理解できるはずである.私は教室員に,『自分が手術で採取した組織を見ない者は手術をする資格がない』と,常々言っている.今回,総説を執筆するにあたり,新WHO分類の主な改正点と問題点を拾い上げてみた.
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