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脳神経外科医の数
著者: 堀智勝1
所属機関: 1鳥取大学脳神経外科
ページ範囲:P.657 - P.658
文献購入ページに移動最近Neurosurgeonsに菊池晴彦教授が書かれているが,ある試算では平均すると一人の専門医の年間の手術件数は19.3件,腫瘍2.8件,血管3.3件とのことである.外科である脳神経外科で手術件数がこのように少なくては,自分の技量を向上させることはおろか,維持させることも不可能である.私が駒込病院にいたときはすでに約15年前になるが,その時術者が5人でmajor手術が年間約100件で一人20件程の手術を手掛けていた.振り返ってみるとその当時自分の手術技量がその手術件数で向上していたとは思えない.現在東京で1年間の破裂動脈瘤数を専門医の数で割ると1という数字がはじき出されるという話を聞いたことがある.手術件数の点でも私の現在の立場はluckyと言わざるを得ない.しかし自分さえ良ければ良いというわけにもいかない.専門医の試験をしてみるとすぐわかるが,専門医受験までにほとんど手術をしていないあるいはさせてもらっていない受験生がかなりいることがわかる.最近機会があってアメリカのレジデントの生活を知る機会があった.非常に大きい大学でも毎年せいぜい二人のレジデントを入れるのみである.人数制限をする代わりに,レジデントには手術を年限に応じて難易度に応じてかなりの部分まで任せている.それこそ家に帰る暇はほとんどないような生活ではあるが,レジデントになれば修業年限内にたくさんの臨床経験を積むことになる.動脈瘤に触ったこともないような専門医が出現することはありえない.しかもboardをとればprivateであれacademicであれ収入は跳ね上がる.もちろん手術が下手であればmalpracticeが多くなり脳外科医として看板をはるのも難しいことになるだろう.またレジデントになる前にPh.Dになっている人も多くレジデント期間にも一定の研究期間が与えられそれなりの研究ができ,忙しい臨床の合間をぬって夜研究室に来ることも多いと聞いている.学会で立派な研究発表をやっているyoungたちはそのような背景をもっている人が大半であるらしい.そのような人達は一旦staffになれば,忙しい臨床の合間にうまく人を使ってoriginalityのある研究を発表している.日本では脳外科医がneuroradiologyもin-tensive careもやらねばならないので現在でも人が足りないのは事実である.しかし,日本の脳外科(手術)医がoverflowしていることも確かである.
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