文献詳細
文献概要
研究
脳動静脈奇形の血行動態モデル解析:血管壁応力の変化とNPPB予知の可能性
著者: 長澤史朗1 川西昌浩1 山口和伸1 多田裕一1 梶本佐知子1 梶本宜永1 田中英夫1 太田富雄1
所属機関: 1大阪医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.897 - P.903
文献購入ページに移動顕微鏡手術・血管内手術・γナイフなどの発達,さらに段階的手術や集学的治療の工夫により,脳動静脈奇形(以下AVMと略す)の治療は著しく向上した1,8,11,22,23,25).しかし巨大・高血流量AVMの成績は良好とは言えないのが現状である.この種のAVMでは周囲の脳血管が長期間低潅流状態にさらされたために脆弱になり圧・流量自動調節能(pressure autoregulation,以下ARと略す)が破綻していると推定されている.このためAVMの治療の進行に伴う潅流圧の増加に対処できず,hyper—perfusionや脳浮腫,出血など,normal perfusion pres—sure breakthrough(NPPBと略す)とよばれる現象が起こり,これが治療成績の向上を妨げる主要な原因となっている7-9,21,23).
著者らはAVM周囲脳のARに何らかの破綻が存在し,AVM閉塞術時に同部に異常な血流増加が起こることがNPPBに至る必要条件の一つであるという立場に立ち,周辺脳にhyperperfusionが出現する条件を検討してきた14,15).その結果,著しいhyperperfusionの出現のためにはARの下限閾値の低下が必要であること,hyperperfusionないしはNPPBに至る血行力学的過程は一つとは限らないことが示唆された.そこで同様のモデルを用いてAVM周囲脳の細動脈壁の応力値を分析し,AVM閉塞術時に予想される血管壁の力学的変化が,hyperperfusionやNPPBに至る過程にどのように関与するのかを検討した.
掲載誌情報