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研究
脳神経外科領域におけるMRSA感染予防:患者環境からの検討
著者: 藤井正美1 安原新子1 大本芳範1 杉山修一1 長次良雄1 加藤祥一1 山下哲男1 伊藤治英1 尾家重治2 神谷晃2
所属機関: 1山口大学脳神経外科 2山口大学薬剤部
ページ範囲:P.241 - P.245
文献購入ページに移動MRSA感染症とは,ペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌用ペニシリンとして開発されたメチシリンに耐性を示す黄色ブドウ球菌methicilln-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)に起因する感染症を称する.本菌はメチシリンのみならず多剤に高度耐性を示すため,事態をさらに深刻なものにしている.MRSA感染症は1960年代に欧米を中心に問題となり2),わが国では1970年代より報告され7),その院内流行は1980年代より急速に増加し,1990年代にはすべての病院で問題となっている12,13,15,16).なかでも脳神経外科領域では意識障害患者を扱う機会が多く,これらの患者の大部分は全身状態が不良で抵抗力が弱くMRSAに容易に感染するという特徴を持っている.また一度感染するとMRSAに対し十分な抗菌力をもつ薬剤がほとんどないため9),意識障害患者は完全治癒するのが大変困難であり,さらに長期間の保菌により,他の患者への感染源となっている.このような場合に,MRSAに対し感染を防止する目的で種種の消毒剤を個々の特性や副作用などを熟知せず不適切に使用することは,殺菌消毒どころか,菌の伝播を広め,MRSA汚染の原因ともなりかねない.そこで今回われわれは,脳神経外科領域におけるMRSA院内感染予防という観点より,MRSAに感染した患者の周辺環境における菌数の測定を行い,どの場所が汚染されやすいかを調査し,さらにMRSAの伝播防止にどのような消毒剤が有効なのかを検討したので,若干の文献的考察を加え報告する.
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