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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科24巻5号

1996年05月発行

雑誌目次

車椅子について

著者: 藤井清孝

ページ範囲:P.407 - P.408

 最近テレビで身体障害者が使用している車椅子に関する報道番組を見た.番組では健康な出演者が車椅子に乗って通常の道路を通行し,如何に現在の道路施設が障害者にとって障害物が多く,不便かつ危険なものであるかを示していた.障害者にみんなでもっと励ましと暖かい配慮を差し伸べよう,そして道路をはじめ社会公共施設をもっともっと安全で配慮の行き届いたものにしようという主張であった.同感でありわれわれは今後もっともっと歩道を広く段差のないものにすることや車椅子で移動できる乗物の充実など公共施設,交通機関の整備を主張し,弱者に優しい施策,教育を押し進める必要があると思う.
 それとともにこの番組をみてふと考えたことがあった.それは現在使用されている車椅子のほとんどは病院などの平坦な屋内で使用する目的でしか作られていないことである.そのような車椅子で外出しようとすればあたかも室内履きで野外歩きをしようとしているような無理がでてくるのは当然である.それなら発想を転換して屋外用車椅子を製作すれば現在の道路事情でもより安全かつ行動範囲を拡げることができるのではないかと考えた.現在屋外用の車椅子としては身障者車椅子レース用としてスピードのでる車椅子があるが特殊なもので段差の多い街中で使えるものではない.電動式車椅子はすでに市販されているが今の所少し値段が高いようである.

連載 Functional Mappingの臨床応用—現状と展望・4

近赤外線による非侵襲的脳機能マッピング

著者: 渡辺英寿

ページ範囲:P.409 - P.414

I.はじめに
 PETを始めとして,頭蓋外から非観血的に脳が機能している様子を観察する方法は,非侵襲機能マッピング法として,1980年代から急速な発展をとげ,1980年代にはPETが,1990年代にはfMRIが注目されるようになって来た.このような手段によって,従来は動物実験でしか行えなかった生理的な研究を,ヒトに対して行うことが出来るようになり,ことに高次脳機能の研究や,臨床面での応用が,期待されている.しかし,PETやfMRIは装置が大型でかつ高額で操作も複雑であり,ベッドサイドでの応用に制約があった.PETやfMRIは,いずれも神経活動に伴う血流の変化を指標にして計測を行っている.一方,血流を計測する方法として近赤外線を頭蓋外から照射してその吸収を計測する方法がある.この方法は,従来は脳の広い部分を計測して,もっぱら脳全体の血流を計測するために用いられていたが2),神経活動に応じた局所の信号変化が得られることが報告されるようになり1,5,9,14),機能マッピングへの応用が検討されはじめた.われわれは頭皮上の多数の点から照射と計測を行い,脳表面の血流マッピングを行うことを試みている7,18).本稿では,われわれの実験結果をもとに,本法の実際を概説する.

解剖を中心とした脳神経手術手技

腰椎椎間板ヘルニアの手術:解剖と手術手技

著者: 小野博久

ページ範囲:P.415 - P.429

I.はじめに
 最近の内視鏡や吸引切除器具の発達で腰椎椎間板ヘルニアの手術は多種多様となり(Table 1),手術治療全般に対する社会的要求から局麻下経皮的手術が次第にその数を増してきた.しかし現時点では未だ後方及び後外方アプローチによる髄核切除術が主体をなしているので,解剖学的事項を中心に,現在の手術適応,術前術後処置,手術手技等について述べ若干の考察を加える.

研究

聴性脳幹反応の「術中判定基準」について:蝸牛神経の手術侵襲に対する「耐性」の観点から

著者: 関谷徹治 ,   嶋村則人 ,   畑山徹 ,   鈴木重晴

ページ範囲:P.431 - P.436

I.はじめに
 聴性脳幹反応(brainstem auditory evoked potentials,以下BAEPと略す)による術中モニタリングが聴力温存を目的として広く行われている4,10,12,14,23,29,34,52,54,55).しかし,「BAEPのどのような変化をもって,術者に警告を発するべきか?」という最も基本的な問いに対する明確な解答が得られていない.
 BAEPが臨床応用されてからほぼ10年が経過し,この間にBAEPによる術中モニタリングに関して,250編を越える報告が集積された14).ここでは,これらの論文を,正常(microvascular decompression,以下MVD,の場合)および異常蝸牛神経(聴神経鞘腫,以下AT,の場合)の手術侵襲に対する耐性の相違という観点から分析し,BAEPの術中判定基準はいかにあるべきかにつき検討した.

くも膜下出血が否定されたthunderclap headacheに対する脳動脈瘤検索の必要性:手術で小出血を認めた8例の検討

著者: 竹内東太郎 ,   笠原英司 ,   岩崎光芳 ,   小島精一

ページ範囲:P.437 - P.441

I.はじめに
 著者らは,突然の頭痛発作(thunderclap headache:TH)で発症しCT所見や腰椎穿刺での髄液色状でくも膜下出血が否定された患者における脳動脈瘤検索の必要性についてこれまで報告してきた16).今回はこれらTHを訴える患者で精査にて脳動脈瘤が発見され,手術所見で小出血を認めた症例に関して,その臨床症状と手術所見の特徴を中心に検討を加えたので報告する.

非出血発症椎骨動脈解離性動脈瘤の経時的血管撮影による検討

著者: 秋山義典 ,   伊藤毅 ,   熊井潤一郎 ,   岩室康司 ,   三宅英則 ,   西川方夫

ページ範囲:P.443 - P.449

I.はじめに
 従来,椎骨動脈解離性動脈瘤は,稀な疾患とされてきたが,近年わが国を中心に多くの報告がなされるようになってきた1-10,12,14-16).椎骨動脈解離性動脈瘤は,発症形式により,くも膜下出血をきたす出血発症例と,非出血発症例とに分けられる.それぞれの頻度,予後,治療などについて多くの報告がなされているが,未だ一定の見解は得られておらず多くの問題点が残されている.特に,非出血例に対しては,出血例に比べ報告例も少なく詳しい検討がなされていないように思われる.今回われわれは,7例の椎骨動脈解離性動脈瘤を経験したが,うち6例は非出血発症例であった.これら6症例に対して経時的に血管撮影を施行し経過観察したので,症例を提示すると共に,非出血発症の椎骨動脈解離性動脈瘤の頻度,診断,治療,予後,自然経過等につき,文献的考察を加え報告する.

症例

外傷性環椎後頭骨脱臼の1生存例

著者: 白川靖 ,   岩永充人 ,   馬場啓至 ,   米倉正大 ,   寺本成美 ,   岩本邦憲

ページ範囲:P.451 - P.454

I.はじめに
 外傷性環椎後頭骨脱臼(atlanto-occipital disloca—tion:AOD)は一般に脳幹部圧迫を伴うため致死的となることが多かったが,近年救急医療体制の充実に伴い生存例も報告されてきている.最近われわれはその1生存例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

進行性の小脳半球静脈還流障害を呈した後頭蓋窩硬膜動静脈瘻の1例

著者: 仁木陽一 ,   田中祥弘 ,   橋本浩 ,   鎌田喜太郎 ,   森本哲也 ,   榊寿右

ページ範囲:P.455 - P.458

I.はじめに
 硬膜動静脈瘻(以下d-AVF)は,横—S状静脈洞と海綿静脈洞部に好発し,高率に静脈洞閉塞を合併することが知られている.今回われわれは進行性の小脳半球静脈還流障害を呈したtransverse-sigmoid sinus閉塞を合併した後頭蓋窩硬膜動静脈瘻を経験したのでここに報告する.

Sof'wire Cable systemにて良好な固定が得られたJefferson骨折の1手術例

著者: 澤村淳 ,   佐古和廣 ,   関俊隆 ,   藤田力 ,   橋本政明 ,   米増祐吉

ページ範囲:P.459 - P.462

I.はじめに
 Jefferson fractureとは,atlasに長軸方向の外力が加わったとき,前弓・後弓の両側の骨折に伴い,lateral massが左右に転位したものである.1920年Jefferson10)がこのタイプの骨折の受傷機転を力学的に解析したため,以降Jefferson fractureとされるに至った.Jeffer—son骨折は稀な疾患であり頸椎骨折の2-13%,また全脊椎骨折の1.3%にすぎない15),今回われわれは交通事故にて受傷した患者にSof'wire Cable systemと腸骨を使用して後方固定術を施行し良好な結果を得たので報告する.

脳血栓で発症し,脳動脈瘤の形成およびくも膜下出血をきたしたchoriocarcinomaの1例

著者: 古明地孝宏 ,   五十嵐幸治 ,   滝上真良 ,   斉藤孝次 ,   井須豊彦 ,   板本孝治 ,   斎藤知文 ,   今泉俊雄

ページ範囲:P.463 - P.467

I.はじめに
 Choriocarcinomaはその特異な血管親和性により容易に血行性転移を起こす極めて悪性な腫瘍である.脳神経外科領域では脳転移に伴い頭蓋内出血を高頻度に起こすことで知られている.今回われわれは,脳血栓で発症後,閉塞部位に脳動脈瘤が形成され,さらに破裂によるくも膜下出血をきたしたchoriocarcinomaの症例を経験したので文献的考察を含めて報告する.

脳室内出血で発症した後下小脳動脈末梢部新生動脈瘤の1例

著者: 小嶋篤浩 ,   中村恒夫 ,   高山秀一 ,   原田俊一 ,   高宮至昭

ページ範囲:P.469 - P.473

I.はじめに
 後下小脳動脈末梢に生じる動脈瘤はきわめて稀で,全頭蓋内動脈瘤の0.99%と言われている4),今回,著者らは脳室内出血で発症し,新生動脈瘤の可能性が示唆された後下小脳動脈末梢部動脈瘤を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

血管造影を契機として,pituitary apoplexyを発症した下垂体腺腫の1例

著者: 須賀俊博 ,   香川茂樹 ,   後藤英雄 ,   吉岡邦浩 ,   細矢貴亮

ページ範囲:P.475 - P.479

I.はじめに
 下垂体卒中は,一般に下垂体腫瘍の出血により,突然,激しい頭痛,視力・視野障害,髄膜刺激症状,眼球運動障害を起こし,時には死に至る疾患である4,6,9,12).この急性発症型の他に,数日から数週間にわたり亜急性に卒中症状を呈するsubacute pituitary apoplexy(sub—acute PAと略す)が報告されている5,8).このような卒中症状を呈するsymptomatic pituitary apoplexy(symptomatic PAと略す)に対して,卒中症状を欠きながら,MRIや手術所見により腺腫内出血が確認された例も知られるようになり,subclinical pituitary apo—plexy(subclinical PAと略す)と呼ばれている3,6).少量の腫瘍内出血はしばしば観察されるものであり,また,卒中症状のない例に,卒中を意味する“apoplexy”の用語を用いることに議論がある1).そのため,われわれは,腫瘍内出血が,MRIや術中所見などにて,きわめて広汎に認められるにもかかわらず,卒中症状のない場合に限り,subclinical PAと呼称している.
 われわれは,卒中症状を欠きながら,MRI上広汎な腫瘍内出血,すなわちsubclinical PAを呈していた巨大下垂体腺腫例で,血管造影を契機として,subacute PAへ移行した1例を経験した.MRIの進歩に併い,sub-clinical PAの診断が容易となった近年,symptomatic PAへの移行を観察しえた例は稀ではないと思われるが,詳細な報告はまだ見当たらない.文献的考察も含め,報告する.

Neoadjuvant therapyとしてbrachytherapyが有用であったpineoblastomaの1例

著者: 多田英二 ,   松本健五 ,   富田享 ,   古田知久 ,   大本堯史

ページ範囲:P.481 - P.485

I.はじめに
 Pineocytomaおよびpineoblastomaは松果体実質細胞由来で,両者合わせても全脳腫瘍の0.3%と極めて稀な腫瘍である14).一般に,pineocytomaは高分化型で予後も比較的良好であるのに対し,pineoblastomaは低分化型で浸潤傾向が強く,治療抵抗性で高率に局所再発や髄腔内播種を来たし,極めて予後不良であるとされている7,14).最近,放射線治療様式の改善や化学療法の併用でpineoblastomaの長期生存例も報告されているが6,9,10,16,22),両者の組織型の混在するものが存在すること,症例数が少ないことなどの理由から,その予後や治療効果については議論が多く,一定の治療方針は確立されていない.
 われわれは1987年より悪性脳腫瘍に対し密封小線源療法(brachytherapy)を施行してきたが12,13),今回,brachytherapyおよび化学療法により著明に縮小はしたものの消失には至らなかったため,9カ月後に手術を行い容易に全摘出し得たpineoblastomaの1例を経験した.この症例は術後経過も良好で,松果体実質細胞腫瘍の治療方針の確立に一石を投ずるものと考えたので,治療経過を報告し,neoadjuvant therapyとしてのbrachy—therapyの役割について考察を加える.

慢性被膜化脳内血腫の1例

著者: 須山嘉雄 ,   梶川博 ,   山村邦夫 ,   住岡真也 ,   梶川咸子 ,   辻修一 ,   ,   大浜栄作

ページ範囲:P.487 - P.491

I.はじめに
 脳腫瘍類似の画像所見を呈した慢性被膜化脳内血腫の1例を報告し,本血腫の臨床像,病因や病態に関して若干の考察を加えた.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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