文献詳細
文献概要
総説
超低体温循環停止法を応用した脳動脈瘤の手術
著者: 長尾省吾1
所属機関: 1香川医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.507 - P.515
文献購入ページに移動I.はじめに
顕微鏡下のマイクロサージェリーによって,脳動脈瘤の大部分は安全かつ確実に根治手術ができるようになった.しかし脳深部に存在する巨大血栓化動脈瘤や流入・流出動脈を確保できないもの,瘤処置に際して,血流遮断が長時間におよぶと予想されるような動脈瘤では,通常の手術手技では根治術は困難である.このような脳動脈瘤に対して,超低体温,バルビツレートで脳保護をはかり,循環停止により無血的に手術を行う方法が報告されている.われわれも最近,右後大脳動脈血栓化動脈瘤に本法を応用して良好な結果を得た(Fig.1)33).
この方法は約35年前に脳神経外科の手術に導入された,決して新しいものではないが,現在の治療成績1,3,54,56,57)を得るまでに多くの紆余曲折があった.本稿では超低体温循環止(Profound Hypothermia and Cir—culatory Arrest,以下PHCA法)の開発の歴史,PHCA法応用の理論的根拠,本法の実際,利点・欠点,現時点における本法に対する考え方,今後の問題などを中心に述べ,明日からの臨床応用を期待したい.
顕微鏡下のマイクロサージェリーによって,脳動脈瘤の大部分は安全かつ確実に根治手術ができるようになった.しかし脳深部に存在する巨大血栓化動脈瘤や流入・流出動脈を確保できないもの,瘤処置に際して,血流遮断が長時間におよぶと予想されるような動脈瘤では,通常の手術手技では根治術は困難である.このような脳動脈瘤に対して,超低体温,バルビツレートで脳保護をはかり,循環停止により無血的に手術を行う方法が報告されている.われわれも最近,右後大脳動脈血栓化動脈瘤に本法を応用して良好な結果を得た(Fig.1)33).
この方法は約35年前に脳神経外科の手術に導入された,決して新しいものではないが,現在の治療成績1,3,54,56,57)を得るまでに多くの紆余曲折があった.本稿では超低体温循環止(Profound Hypothermia and Cir—culatory Arrest,以下PHCA法)の開発の歴史,PHCA法応用の理論的根拠,本法の実際,利点・欠点,現時点における本法に対する考え方,今後の問題などを中心に述べ,明日からの臨床応用を期待したい.
掲載誌情報