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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科24巻9号

1996年09月発行

文献概要

解剖を中心とした脳神経手術手技

MST(軟膜下皮質多切術)

著者: 清水弘之1

所属機関: 1東京都立神経病院脳神経外科

ページ範囲:P.795 - P.800

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I.はじめに
 MST(multiple subpial transection,軟膜下皮質多切術)は,Morrellにより考案された方法で,運動野や言語野などの切除不可能なてんかん焦点に対する外科的治療を可能にした画期的方法である.Morrellは,いくつかの学会報告4-6)の後に,1989年に,それまでの20余年にわたる経験をまとめて,MSTの有効性と,その効果の継続性を報告した7).この論文では,32例に対する手術例の内,20例が5年から22年間の長期追跡がなされ,11例(55%)で完全な発作抑制が得られ,発作が再燃した残りの9例は,いずれもRasmussen脳炎や腫瘍などの背景の進行性病変に起因するもので,MSTを施行した部位からの発作はいずれの例にも見られなかったと報告している.また,32例の手術部位は,中心前回16例,中心後回6例,Brocaの言語野5例,Wernickeの言語野5例であったが,術後臨床上問題となる神経学的脱落症状は1例においても見られなかった.
 MSTはてんかん外科においてきわめて重大な意義を有する独創的手術法であるにもかかわらず,MSTを手術法の一つとして取り入れている世界のてんかんクリニックは未だ少ないのが現状である.しかし,最近になって,MSTの有効性を追認する報告が徐々に出現し始めており1,10-12,15,16),本法が近い将来てんかん外科の最も重要な手技の一つとして,市民権を獲得するであろうことは確実と思われる.筆者自身は,MSTの最初の報告以来,既に40例の症例で,MSTを単独または切除と組み合わせて施行し,その有効性と効果の継続性を確認してきた.本稿では,できるだけ具体的に,MSTの手術方法とその臨床応用について述べてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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