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研究
松果体部腫瘍の水頭症管理
著者: 宮城航一1 六川二郎1 銘刈晋1 小川和彦2
所属機関: 1琉球大学脳神経外科 2琉球大学放射線科
ページ範囲:P.817 - P.822
文献購入ページに移動本邦では欧米諸国に比べ松果体部腫瘍が多い.これはgerm cell tumorの頻度が多いことに起因している.一方,放射線感受性の高いgerminomaが松果体部腫瘍に占める割合も高く欧米の36.1%に対して54.7%である6).このような統計的事実から松果体部腫瘍の治療方針も本邦と欧米では異なって当然と考える.すなわち欧米では手術を優先し得られた病理診断によりその後の治療方針を決定するのが一般的である.これに対して本邦では外科技術の向上により欧米における治療方針をとる施設が増えてきたが,依然diagnostic radiation the—rapy5)が一般的である.わが施設もdiagnostic radiation therapyの立場をとって治療してきた.
松果体部腫瘍による水頭症に対し脳室腹腔短絡術,脳室ドレナージ術,脳室access device設置術等が行われているが,Rutkaは松果体部germinoma症例の87%が髄液短絡術を必要としたと報告している10).germinomaは放射線感受性が強く,腫瘍はすみやかに縮小し水頭症もこれと平行して正常化するので外科的水頭症管理は必要ないのではと考えた.われわれは脳室access device設置術(Pudenz-Schulte Medicaのventricular access de-vice:Ommaya systemに類するシステム)で対応した症例にdevice tapが不要なことを経験し,最近の7例については外科的水頭症管理なしで放射線療法を行ったが脳室腹腔短絡術を必要とした症例はなかった.本報告では水頭症管理の適応を明かにする目的で,われわれの施設で経験した松果体部腫瘍24例中MRIまたはCT scanを行ったgerminomaおよびgerminoma with syncytiotrophoblastic giant cell(STGC)の症例について,①放射線治療前の腫瘍容積が放射線治療によってどう速やかに縮小したか,②外科的水頭症管理を受けなかった症例では放射線治療による腫瘍容積縮小の結果どう速やかに水頭症が改善したか,また③外科的水頭症管理を行った症例の経過はどうだったか検討したので報告する.
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