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研究
痙性斜頸に対する選択的末梢神経遮断術の定量的評価
著者: 平孝臣1 河村弘庸1 谷川達也1 伊関洋1 今村強1 厚地正子1 川島明次1 高倉公朋1
所属機関: 1東京女子医科大学脳神経センター脳神経外科
ページ範囲:P.927 - P.932
文献購入ページに移動痙性斜頸の多くは主として副神経に支配される胸鎖乳突筋の異常収縮だけでなく,第1頸神経(C1)から第6頸神経(C6)によって支配されている後頸部の板状筋,半棘筋などの多数の筋肉の異常収縮が複雑に組合わさって症状を呈してくる16).これが痙性斜頸の治療を複雑にしている要因の一つと考えられる.痙性斜頸の中には自然寛解する例も知られているが,患者の精神的負担などを考慮した場合,積極的な治療が必要となることが多い.しかし保存的治療の多くは無効であり,古くから定位脳手術や脊髄硬膜外刺激などの外科的治療が試みられてきた10,17).しかし現在でもこれらの外科治療の効果は一定しているとは言えない17,19).一方最近では,神経筋接合部に作用するボツリヌス毒素の微量局所注射(BTX)が注目されているが,効果の持続期間,耐性,深部筋への治療の限界などの問題が残されているのが現実である12,15).
筆者らは痙性斜頸の外科的治療のひとつとして,異常収縮をおこしている筋肉への運動神経を末梢で選択的に遮断する選択的末梢神経遮断術(Selective Peripheral Denervation,SPD)2-4)を行っている20,21).今回その効果を定量的な方法で評価した結果を報告するとともに,文献的にもこの手術が効果や副作用,効果の持続性などの点で優れた方法であり,たとえボツリヌス毒素が一般的に入手可能となっても,今後さらに普及すべき外科的治療法であることを強調したい.
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