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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科25巻12号

1997年12月発行

文献概要

報告記

ヴェトナムでの脳神経外科分野短期技術協力—Part.2第1回脳神経外科セミナーの開催

著者: 原徹男1 羽井佐利彦1 近藤達也1 秋山稔2 朝日茂樹2

所属機関: 1国立国際医療センター脳神経外科 2国立国際医療センター国際医療協力局

ページ範囲:P.1147 - P.1149

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 日本より空路約7時間(香港経由),インドシナ半島東部に位置するヴェトナムに,本年2月,国際協力事業団(JICA)により,手術用顕微鏡が無償供与された.これに伴い,われわれは,JICAの要請をうけ,脳神経外科領域における技術協力短期専門家として,2月14日から3月21日までの5週間にわたり,ホーチミン市(旧サイゴン)に滞在した.ホーチミン市には,ヴェトナム随一の総合病院であるチョーライ病院があり,ここに手術用顕微鏡が初めて導入されたのである.この点に関して多くのことは,Part 1に詳述されているので,そちらにゆずるが,現在経済をはじめとして,多くの分野でめざましい発展をとげているヴェトナムに,microsurgeryが導入されたことは,ヴェトナムの脳神経外科史上特筆すべきことであった.われわれは,その技術指導という,外科医としては誠に栄誉ある役目を仰せつかったわけで,渡越前より身の引き締まる思いであった.昨年の秋頃より,日常の臨床の傍ら,手術ビデオや手術器具,そして英文の教科書などを少しずつ整え,不安と期待の交錯する気持ちで日本を出発したのである.
 実際の手術場でのヴェトナム人脳神経外科医の様子は,Part 1に述べられているように(macroではあるが)“極めて器用”の一言につきる.症例数もあり,毎日のように手術しているわけで,器械出しのナースを含め,実によく訓練されている.ただ,現在の彼らには,手術時問の短い術者が,腕の良い外科医という認識があり,このままでは,じっくりと腰を落ちつけて丁寧な手術をめざすというmicrosurgeryの目的とは大きくかけ離れてしまう.当施設にも留学経験のあるNho先生と,髄芽腫や蝶形骨縁の髄膜腫などの手術をする機会に恵まれたが,やはり,その点がなかなか理解してもらえず,この地にmicrosurgeryが根付くのには,もう少し時間が必要であろうと痛感した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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