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研究
術中SEPモニタリングによる中心溝の同定:陽性電位P20とP25の鑑別の重要性と術中ビデオを利用した簡便な同定法
著者: 並木淳1 大平貴之2 石原雅行2 戸谷重雄2 中務正志1 村瀬活郎1
所属機関: 1済生会宇都宮病院脳神経外科 2慶應義塾大学脳神経外科
ページ範囲:P.123 - P.129
文献購入ページに移動大脳皮質感覚・運動野近傍の病変に対する開頭術では,中心溝の位置を同定する目的で正中神経刺激による体性感覚誘発電位(SEP)の術中皮質上記録が行われている4,5,7,8,10-12).潜時約20msecに出現するpostcentralnegativity(N20)とprecentral positivity(P20)の位相の逆転が認められた脳溝を中心溝と同定するが,この判定基準の電気生理学的根拠は,中心溝後壁の感覚野area3bに存在する水平双極子の活動により,中心溝をはさんでN20とP20が形成されるためと考えられている1,6,11).しかし,中心溝の近傍ではN20・P20にひきつづき垂直双極子起源とされる1-3,6,11)陽性電位P25(Desmedtら3),高橋ら11)のP22,園生ら9)のcP22)が現れてSEP波形を複雑にする結果,位相の逆転からだけでは中心溝の位置を誤って同定する危険があることが指摘されている12),中心溝近傍の病変に対する開頭手術において,術中SEPモニタリングによる中心溝同定の有用性は異論のないところであるが8),この中心溝の誤判定の危険性が解決されていないため,術中SEPモニタリングによる中心溝の同定は,どの施設でも簡便に施行できて,かつ信頼性のある術中モニタリングになり得ているとは言い難い.われわれは1988年以来施行してきた術中SEPモニタリングによる中心溝同定の経験から,現在では簡便な方法で信頼性の高い中心溝の同定を行うことが可能になった.本研究ではわれわれが行ってきた術中SEPモニタリングによる中心溝同定の経験を提示し,通常の術中モニタリングの1つとして現在われわれが一般病院で行っているSEPモニタリングの実際の手順,特にP20とP25の鑑別の要点と,術中ビデオ画面を利用した簡便な中心溝の同定方法を報告する.
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