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研究
脳主幹動脈を巻き込んだ頭蓋底部髄膜腫の治療
著者: 佐藤光夫1 松本正人1 児玉南海雄1
所属機関: 1福島県立医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.239 - P.245
文献購入ページに移動髄膜腫は,通常発育が緩徐な良性腫瘍であるため,発症から診断までの期間が比較的長く,診断時にはすでに巨大な腫瘍に成長していることがしばしば経験される9).特に頭蓋底部の大きな髄膜腫は,周囲の脳神経や脳主幹動脈を単に圧排するだけでなく,時にこれらを巻き込むため,摘出術は困難であり,亜全摘に終わらざるを得ないことが多い.従来,髄膜腫によって脳血管が巻き込まれているか否かについては,CTや脳血管撮影所見からはなかなか判断が困難な場合もあったが,magnetic resonance imaging(MRI)の導入以降,脳血管がどの部位でどの程度髄膜腫により巻き込まれているかを比較的正確に把握することが可能となった13,15).しかしながら,microsurgeryの発達した現在でさえもこれらの巻き込まれた脳血管を温存しながら髄膜腫を全摘出することはなお容易ではなく,治療上種々の問題点が指摘されている1,3,7,11,12).また,髄膜腫の外科治療の中でも脳主幹動脈を巻き込んだ症例の治療についてのまとまった報告は,文献上比較的少ない1,11).
今回著者らは,当科で経験した脳主幹動脈を巻き込んだ15例の頭蓋底部髄膜腫について,その臨床像や術中の問題点,および手術成績を中心に検討したので報告する.
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