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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科25巻3号

1997年03月発行

文献概要

読者からの手紙

回転性眩暈のみの症例にどこまで画像診断が必要か:末梢前庭障害や神経症状を伴わない回転性眩暈症例のMRI

著者: 坂口新1 中岡勤1

所属機関: 1春日部秀和病院脳神経外科

ページ範囲:P.289 - P.289

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 回転性眩暈の多くは激しい悪心・嘔吐を伴い,患者に大きな苦痛や不安を与える.しかし,一般外来臨床では対症療法が漫然と施行されるのみで,あまり明確な説明がされないために不安が解消しないと不満を抱く患者は多い.確かに回転性眩暈のみで他に神経症状が無い場合(=isolated vertigo)大多数は末梢前庭性と考えられ,放置しても予後良好である.しかし一部にはisolated ver—tigoでもvertebrobasilar ischemiaによるもので,結果的には予後不良であった例の報告もある.Isolated ver—tigo症例にどこまで画像診断が必要か明かではない.そのためわれわれは以下の検討を行った.
 対象は93年10月から96年4月までに経験した回転性眩量を主訴とし,下記の条件を満たした症例である.(1)意識障害,long tract sign,眼振以外の脳神経症状,激しい頭痛を伴わないもの,(2)明かな内耳疾患や末梢前庭性眼振の特徴や蝸牛症状を欠くもの,(3)頭位眩暈を除き,(4)検査の目的を理解し同意したもので,計112例(男49例女63例,年齢は22-85歳,平均54歳)である.これらの症例に脳幹・小脳に焦点を当てた5mm sliceで,冠状断・矢状断のT1及びT2強調画像,頭蓋内と頸部のMRA(TOF法)を施行した.機種は東芝Flexart 0.5T.MRAでは椎骨・脳底動脈系にのみ注目し,椎骨動脈の一側性の欠損やsegmentalな狭窄はanomalyやartifactとの鑑別が困難なので,陽性所見としなかった.MRIでは一例の解離性椎骨動脈瘤の他,陽性所見は無く,意外にも脳幹・小脳に陳旧性梗塞巣は認められなかった.MRAでは(1)脳底動脈の完全閉塞2例,(2)脳底動脈の著明な狭窄2例,(3)MRIでも認めた解離性椎骨動脈瘤1例であった.また前下小脳動脈の描出の有無は撮像能の点から検討は困難であった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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