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総説
遺伝子治療と脳神経外科
著者: 吉田純1
所属機関: 1名古屋大学脳神経外科
ページ範囲:P.495 - P.502
文献購入ページに移動I.はじめに
今世紀後半は生命科学の時代といわれているように,1953年ワトソンとクリークがDNAの二重らせん構造を明かにし,1962年ニレンバーグがDNAの遺伝子暗号を解読した後,革命的な進歩をとげた分子生物学と遺伝子工学の新しい技術を駆使し,生命現象の本態が次々と明かにされてきた.一方疾病の原因ならび病態も分子レベルおよび遺伝子レベルで解明されるにつれ,病気を遺伝子で直す遺伝子治療への期待が高まった.その後レトロウイルスベクターをはじめとする各種の遺伝子導入法の開発が進められ,その効果と安全性が確立されるにいたり,遺伝子治療は科学的にも社会的にも究極の医療として注目を集めてきた.そして1990年には米国において社会的・倫理的合意の下で先天的遺伝病であるADA遺伝子欠損症に対し臨床応用が開始された.脳神経外科領域に於いても,各種の難治性脳神経外科疾患に対し,その病因病態が遺伝子レベルで解明されるとともに,まずは悪性脳腫瘍を対象に遺伝子治療の開発が進められ,1992年には米国NIHでHSV-TK/GCVを用いる自殺遺伝子治療が試みられている.ここではこうした新しい脳神経外科医療としての遺伝子治療について,これまでの開発経過と現時点での成果,そして将来の展望について述べる.
今世紀後半は生命科学の時代といわれているように,1953年ワトソンとクリークがDNAの二重らせん構造を明かにし,1962年ニレンバーグがDNAの遺伝子暗号を解読した後,革命的な進歩をとげた分子生物学と遺伝子工学の新しい技術を駆使し,生命現象の本態が次々と明かにされてきた.一方疾病の原因ならび病態も分子レベルおよび遺伝子レベルで解明されるにつれ,病気を遺伝子で直す遺伝子治療への期待が高まった.その後レトロウイルスベクターをはじめとする各種の遺伝子導入法の開発が進められ,その効果と安全性が確立されるにいたり,遺伝子治療は科学的にも社会的にも究極の医療として注目を集めてきた.そして1990年には米国において社会的・倫理的合意の下で先天的遺伝病であるADA遺伝子欠損症に対し臨床応用が開始された.脳神経外科領域に於いても,各種の難治性脳神経外科疾患に対し,その病因病態が遺伝子レベルで解明されるとともに,まずは悪性脳腫瘍を対象に遺伝子治療の開発が進められ,1992年には米国NIHでHSV-TK/GCVを用いる自殺遺伝子治療が試みられている.ここではこうした新しい脳神経外科医療としての遺伝子治療について,これまでの開発経過と現時点での成果,そして将来の展望について述べる.
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