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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科26巻11号

1998年11月発行

文献概要

研究

悪性脳腫瘍の髄腔内播種に対する5-fluoro-2'-deoxyuridine(FdUrd)による髄腔内治療—臨床応用とその効果

著者: 中川秀光1 山田正信1 前田暢彦1 岩月幸一1 都築貴1 平山東1 山本弘志1 池中一裕2

所属機関: 1大阪府立成人病センター脳神経外科 2国立岡崎共同研究機構,生理学研究所

ページ範囲:P.969 - P.977

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I.はじめに
 癌性髄膜炎の予後は悪く,現在一般に行われている治療として,脳室内に留置したtubeとそれに連結したOmmaya reservoirを皮下に設置して,それを経皮的に穿刺してmethotrexate(MTX)単独9,22,30,32,33)あるいはcytosine arabino-side(Ara-C)8,17,28)やthio-TEPA31)31との併用で髄腔内に投与され治療される.また放射線治療も併用されることが多い.そのMTXによる髄腔内治療の副作用は時に投与時の不快感や痙攣などの早期副作用から遅発性神経毒性が報告されている.さらにOmmaya reservoirからのMTX等の注入治療の場合,亜急性の神経毒性のために癌性髄膜炎は抑制されてもperformance statusは悪化してベッドでの臥床を余儀なくされることがあり,また慢性毒性のためにCTやMRI上で高度の脳萎縮を認めるような状況をよく経験する23).このMTXの神経毒性を防ぎかつより効果的な方法を求めてMTX 1mgの少量を12時間ごとに反復投与する方法25),あるいは筆者らの脳室-腰部髄腔内潅流化学療法が試みられている18).また,MTXは耐性を獲得し易いことや,もともとMTX抵抗性の腫瘍も存在することより,新しい神経毒性が低く,かつ強い抗腫瘍効果を持つ抗癌剤が出現することが切に望まれている.我々は,5-fluorouracil(5-FU)誘導体である5-fluoro-2'-deoxyuridine(FdUrd)が神経毒性が極めて低く,抗腫瘍効果が強いことをin vitroおよびin vivoで報告するとともにFdUrdの代謝と異化を司るthymidine kinase(TK)とthymidine phosphory-lase(TPase)の両key enzymeの活性バランスを腫瘍と正常組織で検討し,悪性腫瘍の髄腔内播種例に対して有効な治療薬となりうる可能性を得た19,20,35).ここではそれらの基礎研究の結果より倫理委員会の許諾を得て施行した臨床結果について報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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