icon fsr

文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科26巻12号

1998年12月発行

文献概要

歴史探訪

自己血輸血の歴史と脳神経外科

著者: 永井政勝1

所属機関: 1栃木県赤十字血液センター

ページ範囲:P.1117 - P.1122

文献購入ページに移動
I.はじめに
 近年,輸血医療の変貌は著しく,また血液事業をめぐる行政の動きも激しい.前者は医療技術の長足の進歩と疾病構造の変化によるものであり,後者は薬害エイズ事件を発端とする安全性の問題と,少子高齢社会にともなう献血人口の減少をめぐる問題が主体をなす.このための対応の中,輸血用血液の使用量を減少させる方策として,適正使用基準7)の確立と自己血輸血の応用がある.とくに1997年4月より輸血医療に対するインフォームド・コンセントが保健医療上義務付けられて以来,多くの医療機関で自己血輸血の施行頻度が高まって来た.さらに1997年5月に発生した輸血用血液によるHIV感染第1号の報告が,これに拍車をかけた傾向がうかがえる11)
 筆者は自己血輸血の歴史をたどる時,その発端が脳神経外科手術と深い関連を持つことを知り興味を覚えた.現在の自己血輸血の主体は貯血式と呼ばれるものであり,回収式と希釈式が補助的な役割を果たしているが,貯血式自己血輸血の第一例が脳神経外科手術におけるものであり,また回収式の第一例もHarvey Cushingのもとで行われた手術であることを知り,驚きであった.ここにその歴史を紹介し,現在の輸血医療問題との関連についても検討を行いたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?