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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科26巻3号

1998年03月発行

文献概要

連載 脳神経外科と分子生物学・1【新連載】

序文

著者: 吉田純1

所属機関: 1名古屋大学脳神経外科

ページ範囲:P.199 - P.199

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 今世紀後半は生命科学において革命的な展開があった.その中心的存在が分子生物学である.遺伝子の分子構造とその複製メカニズムが解明され,全ての生物が営む生命現象はもとはDNAという物質に刻み込まれた生命情報にあることが明らかになった.すなわち分子生物学は物質世界と生命世界がつながった世界であることを示し,自然科学に大きな変革をもたらした.そしてその後もDNAの組換え技術をはじめとする新しい遺伝子工学技術が続々と開発され,DNAのクローニングやそのDNAの塩基配列が次々と解析されている.また現在30億塩基対からなるヒトゲノムの全塩基配列を決定するヒトゲノム計画が地球レベルで推進され,これも2005年までには,すべてのヒト遺伝子が決定されることになっている.一方こうした分子生物学や遺伝子工学の革命は脳の研究にも向けられ,500億個よりなる人間の脳細胞の構造としくみを分子レベルで解析し,感覚や記憶などの脳の高次機能やその発達のメカニズムが次々と解明されてきている.時期を同じくして脳神経外科領域ではコンピューター工学の進歩に伴い発展してきた3D-CT,MRI,MRAあるいはPET,MEG,functional MRI等の画像診断法や機能診断法の導入の上に,分子生物学や遺伝子工学の導入によってもたらされる新しい脳神経外科学Molecular Neurosurgeryに大きな期待が寄せられている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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