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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科26巻4号

1998年04月発行

文献概要

連載 脳神経外科と分子生物学

グリアを中心とした脳の分子生物学

著者: 池中一裕1 熊田竜郎1 南木浩二1

所属機関: 1岡崎国立共同研究機構,生理学研究所生体情報研究系神経情報部門

ページ範囲:P.297 - P.301

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I.はじめに
 哺乳類中枢神経系にはアストロサイト,オリゴデンドロサイトおよびミクログリアの3種類のグリア細胞が存在する,アストロサイトは脳血液関門を形成し,神経細胞へのエネルギー供給を行う他,脳損傷時には修復にも関与する.近年,神経伝達の調節にも重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた.オリゴデンドロサイトはミエリン(髄鞘)を形成して跳躍伝導の誘導に寄与している.ミクログリアは死細胞の除去の他,各種液性因子を放出して脳のホメオスタシスの維持にも関与している.
 グリア細胞は上述の機能の他に,難治性の遺伝性神経疾患の治療に際しても着目されている.既に米国を中心にパーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS),またはゴーシェ(Gauche)病やクラッベ(Krabbe)病などのリソゾーム病において遺伝子治療の申請がなされているが,ほとんどが,グリア細胞へのex vivoにおける遺伝子導入を基本としている.これは,グリア細胞の前駆体が成人脳にも存在し,in vitroで細胞増殖をさせ遺伝子導入をした後,脳内に戻すことができるからである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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