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研究
低酸素脳症に対する早期脊髄電気刺激療法の試み
著者: 藤井正美1 定光大海2 前川剛志2 上杉政司1 尾崎聡1 小泉博靖1 上塚晋平1 坂元健一1 山下哲男3 伊藤治英1
所属機関: 1山口大学脳神経外科 2山口大学救急医学 3山口県立中央病院脳神経外科
ページ範囲:P.315 - P.321
文献購入ページに移動蘇生術の進歩により,多くの急性呼吸循環不全患者が救命され,生存率は向上している.しかし蘇生後生存しえても全脳虚血に伴う意識障害が長期に持続する症例も多い.そして全脳虚血によりもたらされた意識障害を中心とする神経学的所見の異常は低酸素脳症とされ,全脳虚血の程度により差はあれ,予後は一般に不良である1,5,8,18).その予後不良の一因は,急性期を過ぎると低酸素脳症に対する有効な治療法がないことがあげられる.また一方,近年頭部外傷などによる遷延性意識障害に対し脊髄硬膜外電気刺激(SCS)療法が行われ有効例が報告されている6,9,15,19,20).そして発症3カ月以降の慢性期の低酸素脳症に対してもSCS療法が行われているが,その効果は満足する結果とは言えない9).しかし,SCS療法の実験的有効性,および種々の疾患による慢性期意識障害症例での有効性が報告されていることから,低酸素脳症例においても,有効な治療法のない亜急性期にSCS療法を行えば,より良い効果が得られることが期待される.そこで今回われわれは発症1カ月目の亜急性期にSCS療法を開始し,その効果と限界につき検討し報告する.
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