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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科26巻5号

1998年05月発行

文献概要

連載 脳神経外科と分子生物学

神経細胞を中心とした脳の分子生物学

著者: 影山龍一郎1

所属機関: 1京都大学ウイルス研究所増殖制御部門

ページ範囲:P.385 - P.390

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I.はじめに
 神経細胞の分子生物学というのは非常に幅広い分野を含み,限られた誌面および筆者の限られた知識ではとても網羅しきれない.読者の多くは脳の再建ということに興味を持たれていることと思うので,ここでは主として神経細胞はどのようなメカニズムで生まれてくるのか,すなわち神経細胞の分化過程の分子機構を中心に概説したい.
 脊椎動物の神経初期発生では,外胚葉から分化した神経板の両側が盛り上がり(神経ひだ),神経管の形成がおこる.この神経管はやがて中枢神経系へと分化する.一方,神経ひだの先端にある神経堤細胞からは末梢神経系が形成されていく.初期の神経系は比較的均一な神経前駆細胞からなっているが,前後(頭尾)軸や背腹軸に沿って異なった性格を獲得し,やがて多様性に富んだニューロンへと分化していく.すなわち,神経発生過程は,外胚葉から神経板・神経管ができる過程,前後軸や背腹軸に沿って異なった性質を獲得する過程,さらに神経前駆細胞からニューロンやグリア細胞へ分化する過程に大きく分類することができる.最近,これらの過程が分子のレベルで徐々に解き明かされてきた.脊椎動物で明らかになった分子機構について述べてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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