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総説
脳動脈瘤手術における血流一時遮断—特にその許容時間に関する考察
著者: 溝井和夫1
所属機関: 1秋田大学脳神経外科
ページ範囲:P.477 - P.489
文献購入ページに移動脳動脈瘤手術に血流一時遮断をルーチンに用いたのはPool71)が最初とされている.わが国では鈴木が動脈瘤の安全な手術のためには血流一時遮断が必須の手技であると主張し,精力的な発表を行ってきた94,95,97,98).現在,脳動脈瘤の手術において血流一時遮断を意図的に使用(elective use)する術者が増えて来たが,虚血障害や血管損傷の合併を恐れて極力使用をさける方針の術者も多い.このように血流一時遮断の使用頻度は術者のポリシーによって異るが,巨大動脈瘤など手術困難な動脈瘤に対しては必須の手技と思われる.脳の虚血耐性は側副血行路,脳血流の自動調節機能,血液レオロジー,脳の圧排などの症例毎に異る因子のために大きな個人差がみられる.したがって,多くの場合,血流一時遮断の許容時間を術前に予知することは困難である.本稿では血流一時遮断の最大の問題点である許容時間に関してこれまでどのような研究,報告がなされてきたか,自験データも含めて概括するとともに,今後の検討課題を整理したい.
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