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症例
浅側頭動脈-中大脳動脈血管吻合術の手術適応決定におけるPositron Emission Tomographyの有用性
著者: 玉野吉範1 臼田頼仁1 氏家弘1 井澤正博1 石井賢二2 高倉公朋1
所属機関: 1東京女子医科大学附属脳神経センター脳神経外科 2東京都老人総合研究所
ページ範囲:P.532 - P.538
文献購入ページに移動脳虚血に対する代表的な血行再建術には頸動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)と浅側頭動脈-中大脳動脈血管吻合術(superior tempo-ral artery-middle cerebral artery:STA-MCAanastomosis)とがあるが,国際的なrandomizedstudyによって内科的治療群に対する有効性は,前者3,12)では肯定されたが後者18,19)では否定された.
CEAとSTA-MCA anastomosisの大きな相違は,後者では吻合経が細く供給される血流量が少ないことそしてembolic sourceを摘出しないことであるが,この相違が国際共同研究の結果の差を招いたと考えられる.しかし,CEAが脳虚血に対して予防効果を持つという結果は,虚血領域が十分小さい範囲であれば,STA-MCA anasto-mosisによって脳虚血の予防が期待できるということを保証している.もし虚血領域が言語野や運動野という小さな範囲に限局して発生した場合,理論上STA-MCA anastomosisによる血行再建術は有効であると考えられる.このようなcriticalareaに限局した脳虚血は稀であるが,側頭葉などの比較的神経脱落症状を呈さない脳梗塞に合併して不完全脳虚血がcritical areaに発生することは時々経験する.われわれは,このような完成脳梗塞に伴ったcritical areaの不完全脳虚血例に対してSTA-MCA anastomosisを施行し臨床症状の改善を認めたので報告する.
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