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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科26巻9号

1998年09月発行

文献概要

研究

5-fluoro-2’-deoxyuridine(FdUrd)の髄腔内治療への応用に関する研究—髄腔内投与の可能性に関してin vitroでの検討

著者: 中川秀光1 山田正信1 福島正和2 清水恵司3 池中一裕4

所属機関: 1大阪府立成人病センター脳神経外科 2大鵬薬品株式会社,創薬センター,第二癌研究所 3大阪大学脳神経外科 4国立岡崎共同研究機構,生理学研究所

ページ範囲:P.787 - P.794

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I.はじめに
 5-fluoro-2’-deoxyuridine(FdUrd)は,5-fluo-rouracil(5-FU)の活性化経路の中間体で,大腸,直腸癌あるいは腎癌の肝臓転移例に対して主として動注にて使用される抗癌剤である.本薬剤は5-FUと同様,thymidylate synthaseを不活化し,DNA合成を阻害することにより強力な細胞増殖抑制作用を発揮する4,8).その作用はin vitroで5-FUの10-100倍(molar basis)といわれている2,11,17,28).FdUrdは投与後thymidine kinase(TK)により速やかにFdUMPとなり,メチレンテトラヒドロ葉酸と共にthymidylate synthaseとtightなternary complexを形成することによりthymidylate synthaseを不活化し,DNA合成のみを特異的に障害する26).しかし,FdUrdをinvivoで全身的に投与すると,肝臓に主として存在するthymidine phosphorylase(TPase)により急速に5-FUに変換され1),抗腫瘍効果は5-FUと同程度まで減弱すると共に,RNA障害が出現したり26),神経毒性を有するF-β-alanineが生成されるため,高度な副作用の可能性が生じ16,23),その投与は極めて制限されることになる(Fig.1).しかし,一方,FdUrdは,ある濃度範囲内で神経培養系において増殖細胞のみを抑制し,神経細胞に障害を及ぼさないことが知られている.こうした事実より,われわれは,FdUrdを髄腔内投与で使用することにより,神経毒性のない有効な抗悪性脳腫瘍治療薬となりうるか否かをinvitroで検討したので報告する.なおFdUrdに関する一連の研究(ヒト胎児脳の使用を含めて)は大阪府立成人病センター倫理委員会の許諾を得て行われた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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