文献詳細
文献概要
研究
Supratentorial Astrocytoma Grade IIの治療成績
著者: 松本健五1 安倍友康1 寺田欣矢1 田渕章1 足立吉陽1 水松真一郎1 小野恭裕1 田宮隆1 大本堯史1 古田知久2
所属機関: 1岡山大学脳神経外科 2岡山大学医学部付属病院中央手術部
ページ範囲:P.139 - P.145
文献購入ページに移動星細胞腫(astrocytoma)は形態学的によく分化し異型性に乏しいため,組織学的には良性グリオーマとして位置づけられている.しかし,いかによく分化し増殖速度が緩やかであっても,多くは脳実質を浸潤性に発育するため手術による全摘出が困難であり,経過中にしばしば悪性転化を来たすことなどから,臨床的には良性とは言い難い場合も多い6,12).また,発症年齢,発生部位が広範で,その生物学的性状も症例により大きく異なることなどから,治療に関しては統一された見解がないのが現状である13,17).その要因として,星細胞腫は全体としては脳腫瘍の中で比較的高頻度を占めるにも関わらず,臨床上の諸因子,組織診断などにより母集団を均一化すると,なかなか評価するに足る十分な症例数が得られないことなどが考えられる7,16).
従来行われてきた治療は,経過観察から手術・放射線・化学療法の集学的治療まで,報告により様々であり3,6),その予後決定因子として,年齢,手術摘出度,術前performance statusがいずれの報告でもあげられている5,17,19,26).総じてWHO分類のgrade Iの場合は手術のみで経過観察,grade IIの場合,全摘出例は経過観察,残存例は放射線を追加というのが最も一般的のようであるが1,21),放射線治療の有効性に関しては,いまだ意見は大きく分かれている12,13,26).
掲載誌情報