文献詳細
文献概要
症例
乳児頭蓋内Primitive Neuroectodermal Tumorの1例
著者: 吉里公夫1 吉岡進1 玉井友治2 辻浩一3 西尾俊嗣4
所属機関: 1大分県立病院脳神経外科 2大分県立病院小児科 3大分県立病院病理 4九州大学脳神経外科
ページ範囲:P.243 - P.248
文献購入ページに移動Primitive neuroectodermal tumor(PNET)は1973年にHartとEarlにより若年者の大脳に発生した未分化な神経外胚葉細胞からなる腫瘍に対してはじめて使用された用語である11).1983年にRorkeはこの“PNET”という用語をテント上腫瘍のみでなく,その局在や部分的な腫瘍細胞の分化方向などに関係なく未分化な腫瘍細胞からなる種種の腫瘍すべてに対して使用することを提唱した26).さらに1986年,Dehnerは“central”と“pe-ripheral”PNETという概念を提唱しているが4),後者のperipheral PNETには後腹膜などに発生するneuroblastomaやEwing肉腫などが含まれている.このように“PNET”という用語は中枢神経系のみでなく末梢神経系の腫瘍などをも含む包括的な概念となり,小児腫瘍を診断し分類する上で混乱を招く用語となった.1993年のWHO分類や1995年の日本における脳腫瘍取扱い規約では,PNETを小脳以外に発生した組織学的に髄芽腫と類似した腫瘍と規定しているが,いずれのsmall-cell embryonal tumorも臨床的には多少の違いはあるが悪性の経過をとることが多く,小児腫瘍の中では重要な位置を占めるものである.ここでは頭蓋内に主座をおく“PNET”の乳児例を報告し,その臨床上および組織学的な問題点につき考察する.
掲載誌情報